24a 木蓮類
 
○ニシキモクレン
 ニシキモクレン(錦木蓮,錦木蘭)は別名ソトベニモクレンといい,モクレン(シモ
クレン)とハクモクレンとの雑種で,19世紀にヨーロッパで作出されました。多くの美
しい園芸品種があり,公園樹,庭園樹として広く植栽されています。落葉小高木で高さ
3〜9mになります。葉は長さ10〜15p,幅5〜10pの倒卵形です。花は春に葉に先立っ
て咲き,ハクモクレンより少し遅いです。花は径10〜25pあり,花弁は6枚で大きく,
外面は赤紫色,内面は白色,萼片は花弁と同色でやや小型,果実はつきにくいです。園
芸品種のうちピクチュアは大輪で外面は桃色,内面は白色,レンネイは大輪のチューリ
ップ形,ルスティカ・ルブラはやや小輪で鮮赤色です。
 栽培:モクレンに準じます。
 
○マグノリア・ワダス・メモリー
 マグノリア・ワダス・メモリーはコブシとタムシバとの雑種で,和田弘一郎によって
作出された優れた園芸品種です。海外では高い評価を受けていますが,日本での栽培は
少ないです。小枝が非常に多く,非常に多花性で,花はコブシ,タムシバより大きく,
色は雪白色でコブシより白く,芳香があります。ほかにピクチュア,ワダス・スノー・
ホワイトがあります。
 栽培:モクレンに準じます。
 
○ガール・マグノリア
 ガール・マグノリアはアメリカ農務省によって作出され,1968年に発表された比較的
新しい園芸品種群で,モクレンとシデコブシとの交雑種です。花は中輪から大輪で,外
面は紫桃色,内面は多くは淡色になります。アンとベティは細弁で紫桃色,ジェーンは
外面は紫桃色で内面は淡色,ジュディとランディとスーザンは紫桃色,ピンキーとリッ
キーは外面は紫桃色で内面は乳白色となる,全部で8品種です。
 栽培:モクレンに準じます。
 
○マグノリア・アクミナータ
 マグノリア・アクミナータは北アメリカ原産,黄緑色の花が咲くマグノリアで,近年
日本でも栽培されるようになりました。落葉高木で高さ20〜30mに達し,樹形は円錐形と
なります。葉は長さ10〜25pの楕円形から卵形,ときには長楕円状倒卵形,先は短鋭尖
頭タンエイセントウで基部は円脚です。花は4〜6月に枝の先端に上向きに咲き,径10p,花被
片は9枚,外側の3枚は萼片で長さ2pの披針形,内側は6枚の花弁で長さ3〜9pの
披針形から楕円形です。果実は8〜9に成熟し,長さ7〜10pです。分布域が広く変異
に富みます。金寿キンジュという品種は中村文治郎によってアクミナータの実生苗から選別
されたもので,花は黄色で美しい。
 栽培:モクレンに準じます。
 
○カラタネオガタマ
 カラタネオガタマ(唐種小香玉)は別名トウオガタマといい,中国南部の原産地で,
バナナに似た甘く強い花の香りが素晴らしいです。常緑低木又は小高木で高さ3〜5mに
なりよく分枝します。葉は長楕円チョウダエン形で長さ5〜10p,幅2〜4p,葉柄ヨウヘイは短
く,若枝とともに褐色の毛が密生します。花は腋生エキセイで初夏に咲き,淡黄色で径2〜
3p,花被片は肉質で硬いです。果実は稀に結実し,秋に成熟します。香りを楽しむた
めによく植えられます。刈り込みもできますので生け垣にも利用されます。花を茶の香
料にします。品種に帯赤色花のポートワインがあります。
 栽培:耐寒力はやや弱く,関東以北での露地植えは難しく,繁殖は挿し木によります。
 
「モクレン類の育て方」
○性質
 モクレンやトウモクレン,ガール・マグノリアは叢状となり,背丈も3〜4mですの
で,小庭でも十分楽しめます。一方,ハクモクレンやサラサモクレンは高木性で5m以上
にもなりますので,広いところでの単植に適します。何れも日照を好み土質はあまり選
びません。
○苗の植え付け
 10月下旬〜11月,又は3月中旬〜4月中旬が適期で,植え穴には完熟堆肥や腐葉土を
十分に鋤き込み,やや高めに植え込んで支柱を添えて下さい。
○仕立て方
 モクレンはできるだけ自然樹形を楽しみたい樹種ですが,高木性のハクモクレンやサ
ラサモクレンなどは,一般家庭では放任しにくいため,4〜5年に一度は花後直ぐに太
い枝を切り詰め,小枝を吹かし直します。この仕立て方を枝吹き仕立てといいます。萌
芽力が強いので,秋までに不定芽が多数伸び出し,各枝先に花芽を持ちます。
 叢状となるモクレンやトウモクレンなどは,ときどき徒長枝や乱れ枝を抜き取る程度
としますが,根元から伸び出る枝幹の数だけは,ある程度整理し続ける必要があります。
○開花までの管理
 枝の伸びが少なく,がっちりと茂った株は花つきがいいですが,徒長枝状の枝ばかり
が伸び出るようですと開花数は少ないです。それに,日照不良地や極端な痩せ地に植わ
っている場合には,必要により適地に植え直してやって下さい。
 花芽は新梢シンショウの先端につき,殆どは5〜6月に形成されますので,枝先は5〜6月
以降は切り詰めないで下さい。また,モクレンは乾燥を嫌いますので,夏の乾燥時には
根の周囲に敷き藁を施し,ときどき十分潅水して下さい。
○施肥
 1〜2月に寒肥として堆肥や鶏糞を十分施し,9月上旬〜中旬の間に鶏糞又は油粕に
化成肥料を加えたものを適宜施す程度とします。
○移植
 モクレンやコブシの類は根が粗く,細根が少ないので,移植をあまり好みません。し
たがって半年から1年程前に根回しをして置くことが大切です。移植作業は,苗の植え
付けと同様に晩秋又は春の芽出し直前に行います。植え傷みを軽減するためにも,枝を
付け根からある程度間引いて移しますとよいでしょう。植え付け後はできるだけ,藁か
薦で幹巻きをして置きます。
○病害虫
 カミキリムシの幼虫の食入に対しては,食入孔を見付けて殺虫剤原液を注入して退治
します。カイガラムシは手で掻き落とすか,冬期に石灰硫黄合剤又はマシン油乳剤を数
回散布して退治します。

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