24 木蓮類
 
                木蓮モクレン類
 
                  参考:世界文化社発行「世界文化生物大図鑑」
 
[モクレン(木蓮)類]
○ユリノキ
 ユリノキ(百合樹)は別名ハンテンボク,チューリップツリーといい,原産地は北ア
メリカ東部で肥沃な谷間に多く,明治初年頃に渡来しました。変わった葉と美しい花を
つける落葉高木で,街路樹として親しまれています。幹は直立し,高さ20〜35m,径0.5
〜1m,葉は長さ,幅とも6〜18pで,浅く羽裂し,半纏ハンテンのように形をしており,落
葉前に美しい黄色葉となります。長さ3〜20pの葉柄ヨウヘイがあります。花は5〜6月に
咲き,径5〜10pのチューリップ形で,花弁は6枚あり,淡黄緑色で,基部は橙色,果
実は10〜11月に成熟し,一部が長く枝先に残ります。街路樹,公園樹,庭園樹として世
界各地で植栽されています。
 栽培:極端な乾燥地と日陰地は避け,繁殖は実生ミショウによります。
 
○オオヤマレンゲ
 オオヤマレンゲ(大山蓮華)は別名ミヤマレンゲ(深山蓮華)といい,中国(安徽省,
広西省),日本(本州,四国,九州)に分布し,深山の林間に稀産します。落葉低木で
高さ2〜4m,白い花が俯ウツムき加減に咲く優美な花木です。葉は倒卵形又は広倒卵形で,
長さ7〜15p,幅5〜10p,裏面は白緑色です。花は5〜7月に枝先に点頭し,径5〜
10pで細長い柄があります。萼片ガクヘンは3枚で花弁よりやや小さく,花弁は6枚でとき
に7〜9枚あり,長さ2〜3.5p,雄蘂はほぼ白色で僅かに桃色を帯びます。果実は秋に
熟します。名前のオオヤマは自生地の大峰山のことです。一般に本種の名で栽培されて
いるものは朝鮮半島産のオオバオオヤマレンゲ(大葉大山蓮華)で,雄蘂が紫褐色です。
 栽培:性質は弱く,栽培は困難です。
 
○ホオノキ
 ホオノキ(朴木)は別名ホオガシワといい,ほぼ日本全土の温帯,暖帯に広く分布し,
中国中部にも産します。古くから葉や材が利用されている有用樹です。落葉高木で,幹
は直立し寝高さ20m,径1mに達します。葉は大型で,枝先に輪生状について開出し,倒
卵形から倒卵状長楕円チョウダエン形で,長さ20〜40p,幅10〜25p,裏面は粉白色を帯びま
す。花は帯黄白色で5〜6月に咲き,径15pで芳香があります。萼片は3枚で花弁より
やや小さく,花弁は倒卵形で6〜9枚です。果実は秋に熟し,長さ10〜15p,径5〜6
pの楕円体です。葉は古来より食物を包むものに用い,材は柔らかく木目キメが細かいの
で下駄の歯や刀の鞘サヤ,版木などに利用されました。変種に九州産のナガバホオノキが
あります。
 栽培:繁殖は実生,湿潤で肥沃な砂質壌土を好みます。
 
○コブシ
 コブシ(拳・辛夷)は原産地は日本(四国を除く),朝鮮半島で,谷間又は暖かい傾
斜地の適潤地に多いです。同属のタムシバとともに,野山に春の訪れを告げる美しい花
木で,落葉中高木,高さ5〜10m,径20〜30pです。葉は長さ3〜16p,幅3〜8pの倒
卵形又は楕円形です。花は3〜4月に葉に先立って咲き,基部に小さな葉をつけます。
萼片ガクヘンは3枚で長さ2p前後,花弁は6枚でときに7〜9枚,長さ5〜7p,幅2〜
3.5p,白色で稀に基部を中心に淡紅色を帯び,芳香があります。果実は9〜10月頃に熟
します。
名前は蕾ツボミの形が拳に似ることに因ります。公園樹,庭園樹として広く植栽されてい
ます。
 栽培:日当たりのよい適潤地を好みます。
 
○シデコブシ
 シデコブシ(幣拳)は日本固有植物ですが自生地が不明なため,長い間中国原産と考
えられていました。中部地方の一部に自生し,丘陵地の陽湿地に小さな群落が点在しま
す。原種のモクレン類の中においては,最も美しい花をつけます。落葉低木又は小高木
で,株立ちとなることもあります。葉は長さ5〜12p,幅2〜4pの倒披針トウヒシン形で
す。花は4月頃葉より早く開きます。萼片は通常3枚あり,長さ1.5p以下,花弁は9〜
25枚,ときに30枚以上あり,長さ4〜7p,白色から濃桃紫色で,芳香があります。果
実は9月頃に熟します。コブシとは葉が小さく,花弁が多いことで区別できます。
 栽培:適湿な陽地を好みます。
 
○タイサンボク
 タイサンボク(泰山木,大山木)は北アメリカ南部原産の常緑高木で,明治初年頃に
渡来し,芳香のある白い大きな花が見事ですので庭園樹としてよく植えられます。幹は
直立し,高さ20mに達します。葉は長楕円形で,長さ12〜23p,幅5〜10pあり,全縁で
厚い革質をなし,表面は暗緑色で光沢があり,裏面は鉄錆テツサビ色の短毛が密生します。
花は6月に枝先に上向きに開き,花径は12〜20p,萼片は3枚で花弁状,花弁は通常6
枚ときに9〜12枚あります。果実は長さ7〜10pの楕円体で短毛が密生します。世界各
地の公園,庭園に広く植えられています。園芸品種に葉に黄色の斑紋の入るフイリタイ
サンボクがあります。
 栽培:湿気のある肥沃な砂湿壌土を好み,繁殖は実生,接ぎ木によります。
 
○タムシバ
 タムシバ(噛柴,田虫葉)は別名ニオイコブシ,カムシバ,サトウシバといい,日本
原産で本州,四国,九州に分布し,日本海側に多いです。春に咲く白い花が美しい落葉
小高木で,山地の尾根や傾斜地に散生します。幹は直立し,高さ10m,径20pに達しま
す。葉は広披針コウヒシン形又は楕円形で,長さ6〜14p,幅2〜5p,裏面は白色を帯びま
す。葉は噛むと甘味があります。花は4〜5月に葉に先立って咲き,萼片は3枚で長さ
3p前後,花弁は通常6枚で長さ5〜9p,果実は8〜9月に熟します。コブシに似ま
すが,冬芽,若枝に毛がなく,花の下に葉をつけないことで区別できます。
 栽培:適湿な陽地を好みます。
 
○モクレン
 モクレン(木蓮,木蘭)は別名シモクレン,モクレンゲといい,中国原産の大型の落
葉低木で,古くから観賞用として庭に植えられています美しい花木です。幹は直立又は
株立ちとなり,高さ3〜4mです。葉は倒卵形で長さ8〜18p,幅4〜11p,先端は突出
します。花は4〜5月に開葉前又は開葉とほぼ同時に咲き,やや筒状の鐘形で紫色から
紫紅色,萼片は3枚で長さ2〜3p,幅7〜10oで反り返ります。花弁は6枚で長さ10
p,幅3〜4p,果実は秋に成熟します。各地の公園,庭園に植えられており,ときに
生け花材料にもされます。変種にはトウモクレンがありますが,全体に小型で,萼片の
幅は4o,花色もやや淡いです。
 栽培:繁殖は実生,挿し木,接ぎ木により,株立ちのものは株分けできます。排水の
良い日当たり地で,肥沃な砂湿壌土を好みます。
 
○ハクモクレン
 ハクモクレン(白木蓮,白木蘭)は中国中東部原産の落葉高木で,大型の白い花が見
事で,モクレン類としては最もよく知られているものの一つです。幹は直立して分枝し,
高さ4〜6mです。葉は広倒卵形で長さ10〜15p,幅6〜10p,先端は短凸頭です。花は
3〜4月に葉に先立って開き,径10〜15p,芳香があります。3枚の萼片は6枚の花弁
と同形同大で,9枚の花被片を構成します。花被片は狭倒卵形で長さ7〜8p,幅3〜
4p,果実は細長くて10p前後,秋に熟します。世界各地の公園,庭園に広く植えられ
ています。変種に花被片の外側が淡紅紫色を呈するサラサモクレンがあり,開花は基本
種よりやや遅いです。
 栽培:モクレンに準じます。
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