22a 牡丹・芍薬
 
 [シャクヤク]
 シャクヤク(芍薬)は古名エビスグサ,エビスグスリといい,中国,朝鮮半島北部,
シベリア南部の原産で,高さ0.6〜1m,根茎は硬く肥大して,茎は株立ちとなり,冬は
枯れる耐寒性の多年草です。5月にボタンに似た大輪花を,やや遅れて開きます。中国
においてはボタン同様古くから,初めは薬用,序で観賞用に栽培され,日本へは平安時
代以前に渡来しました。以来,ボタンとともに愛好され,栽培が盛んになって,江戸時
代には非常に数多くの美しい品種が作られました。18〜19世紀には中国からヨーロッパ
に渡り,ヨーロッパでも多くの品種が作出されましたが,明治末期には日本へ輸入され,
在来の日本シャクヤク(和芍ワシャク)に対して洋シャクと呼ばれました。20世紀に入って
も,日本,イギリス,オランダ,アメリカなどで品種改良が進められ,次々と新品種が
発表されています。シャクヤクの品種は普通,花形によって分類されますが,次のよう
なものがあります。
 一重咲き:原種に近く,花弁数は8枚前後,完全な雄蘂を持ちます。
 金蕊咲き:一重咲きですが,雄蘂が太く大きく変化し,黄金色に固まって美しい。
 翁オキナ咲き:雄蘂の変化が進んで糸状となり,八重のアネモネの花に似ます。
 冠咲き:雄蘂の花弁化が更に進んで大型で幅広く,花全体が盛り上がって咲き,外側
の雄蘂は花弁化せずに残ります。
 手毬咲き:雄蘂全部が幅広く,大きく花弁化して立ち上がって咲きます。雌蘂は殆ど
ありません。
 半バラ咲き:内弁がよく発達した大きく,幅広く,外側の本来の花弁との区別がつき
にくいです。一部の雄蘂は残ります。
 バラ咲き:雄蘂の全部が外弁と同じ形に弁化し,雌蘂の全く無いものもあります。
 半八重咲き:冠咲きとは逆で,外側の雄蘂が花弁化し,中心部に完全な雄蘂が残りま
す。
 以上が基本形ですが,中間形など区別しにくいものもあります。何れの花形のものに
も品種があって,神奈川県農業試験場の宮沢文吾が作出したものに優れた品種が多いで
す。
 その他のシャクヤクとして,オランダシャクヤク,ペオニア・ペレグリナ,ホソバシ
ャクヤク,ペオニア・ウィットマニアナ,ヤマシャクヤク,ベニバナヤマシャクヤク,
ペオニア・ハイブリッドなどがあります。
 栽培:一度植えますと4〜5年は据え置きますので,植え付けはボタンに準じます。
株間は60〜80p,植え付け後の1年目は蕾ツボミを摘み取り,花を咲かせずに株の充実を
図り,2年目は芽数の半数位の花を咲かせます。開花後は結実させないよう,早めに花
殻を摘み取ります。通常1年に芽数が倍に増えていきますので,4〜5年で株は密生状
態になって花が咲かなくなりますので,掘り上げて1株に3〜4芽ずつつけて株分けし,
植え替えます。肥料は,秋は有機質肥料,春の出芽時には速効性の水肥を与えましょう。
注意すべき病害虫としては,灰色かび病(ボトリチス病),炭疸病が主で,予防にはベ
ンレート,ダイセン水和剤などを,葉の展開時,また開花前後に2回位散布します。白
絹病は,植え付けのとき株をベンレートで洗って下さい。ネコブセンチュウは,予め土
を消毒しておくか,株の周囲に丈の低いフレンチ・マリーゴールドを植えますと効果が
あります。そのほかにコウモリガ,ハマキムシなどがいますが,発生時に殺虫剤を散布
します。

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