22 牡丹・芍薬
牡丹ボタン・芍薬シャクヤク
参考:世界文化社発行「世界文化生物大図鑑」
[ボタン]
ボタン(牡丹)は中国原産の落葉低木で,高さ1m程度,枝打ちは粗く,幹は粗剛で折
れやすいです。葉は互生し,大型で2回羽状複葉,小葉は2〜3裂し,全縁で鋭頭です。
4〜5月,新梢の先端に大輪花を開きます。根の皮の干したものを薬用とします。ボタ
ン栽培の歴史は古く,中国では花王,花神などと呼ばれ,2000年前から薬用とされてい
ました。花木としての栽培や品種改良は唐代に始まり,現在も盛んです。日本へは奈良
時代に薬用として渡来したらしいですが,次第に観賞用としての栽培が盛んになり,江
戸時代には品種の数は数百種に及び,今日に至っています。今世紀に入りますとフラン
ス,アメリカにおいても,新しい品種が作出されています。
ボタンには他に19世紀末にフランス人デラベー神父により,中国雲南省において発見
された黄金色の自生種ペオニア・ルテア,濃赤色のペオニア・デラベイなどがあり,黄
色系のものはペオニア・ルテアの種間雑種です。デラベイの種間雑種にはアメリカで作
出されたサンダース・ボルトなどがあります。
ボタンの園芸品種の分類には系統だった分け方はありませんが,一般には花色別に拠
る分類が行われています。代表的品種としては次のようなものがあります。
紅色系:太陽,日暮ヒグラシ,日照ニッショウ,宣秋門センシュウモンなど
桃色系:八重桜,八千代椿など
紫色系:鎌田藤カマタフジ,麟鳳リンポウ,島シマ大臣など
黒色系:初烏ハツガラス(烏羽玉ウバタマ),黒龍錦コクリュウニシキなど
白色系:五大州ゴダイシュウ,白神ハクシン,乙女の舞など
黄色系:金晃キンコウ,金至鳥キンシ,金閣,ハイヌーン
ほかに冬に開花するカンボタンが30種程あります。主な品種に栗皮紅クリカワベニ(紅褐
色,八重咲き,大輪),大正紅タイショウベニ(鮮紅色,半八重,大輪),雪重ユキガサネ(白色,
半八重,大輪)などがあります。
栽培:排水がよく,あまり乾燥せず,西日,強風の当たらないところを選んで植えま
す。新根は20℃以下になりますと発育を始めますので,9月上旬から下旬に植え付けて
下さい。苗はシャクヤクの根に接いだ2年苗を用いますと,翌春に花が見られます。植
え穴は大きく掘り,元肥には堆肥,鶏糞,骨粉などの有機質肥料と少量の化成肥料,苦
土クド石灰などを入れて植え付けます。株間は1m以上とします。鉢植えに7〜8号鉢を
用い,接ぎ目が隠れる深さに植えます。植え付け後の手入れは,花殻摘み,芽摘み,剪
定,施肥,病害虫駆除があります。施肥は9〜10月,堆肥,鶏糞などを2〜3g,化成
肥料1〜2掴みとします。鉢植えは花後と秋に油粕の置き肥をします。病害虫駆除はシ
ャクヤクに準じます。
カンボタンは,春の花は蕾ツボミのうちに除いて咲かせず,6月の芽摘みもせず,先端
の花芽を充実させます。
「ボタンの育て方」
○植え場所
よい花を沢山咲かせるには,日当たりのよい砂質壌土で,有機質肥料を十分に与えて
栽培するとよいでしょう。ただし,適度の湿気を好みますので,あまり乾燥するところ
や,夏の西日の当たるところは避けます。また,水はけの悪いところでは,根腐れ防止
のために植え床に盛り土が必要です。なお,ボタンは移植を嫌いますので,将来を見越
して株間は1m前後に広くとって植えて下さい。○苗の植え付け
適期は9月上旬〜10月中旬ですが,ボタンの新根は,秋の地温が20℃に低下する頃発
育を始めますので,なるべく9月中に済ませて下さい。
深さ40p位の植え穴の底に,堆肥や油粕,鶏糞,骨粉,草木灰を予め混合し,よく熟
成させた肥料を鋤き込んで,根が直接肥料に触れないよう10p程度間土アイツチをしてから
植え込んで下さい。普通ボタンの苗は,シャクヤクの根に接いでありますので,なるべ
く早く自根を出させるよう,接ぎ口より5p程深めに植え付けます。
○植え付けの後の管理
新芽が伸びて,4月の中程になりますと蕾ツボミも大きくなってきますので,細い篠竹
シノダケなどの支柱を枝に添えて立て,誘引します。支柱は始めは長めにしておき,開花直
前に花首の下で切ります。また,支柱は深く挿しますと根を傷つけることがありますの
で注意し,枝と組み合わせるなど結束して支えるようにします。
花後,葉を多く残すように,花柄カヘイを切り取ります。6月頃,その年に伸びた開花枝
の側芽のうち,下部の2〜3芽を残し,他の芽を掻き取ります。花の咲かなかった枝は
そのまま伸ばします。
ただし,カンボタンは春先に蕾が豆粒程に生長した時点で摘み取り,6月は芽摘みを
しません。秋に出た新梢の先の蕾を養成して冬に咲かせます。
○剪定
冬の剪定は,落葉後にします。春から伸びた枝を,花芽の上で切り戻します。また,
ボタンは本来株立ちする性質がありますので,春先に根際からひこばえが出ますので,
多くても5本立て位とし,余分なひこばえは早めに取り除いて下さい。
○施肥
1〜2月に寒肥として油粕か鶏糞に骨粉を混ぜたものを施します。花の終わった直後
と,涼しくなって根が動き始める直前の9月上旬には,化成肥料や配合肥料を少量ずつ
与えます。
○病害虫
主な病気には灰色かび病や葉枯れ病,さび病,炭疸病などがあります。防除には,マ
ンネブダイセンや銅水和剤が有効です。害虫としてはカイガラムシやチャミノガ,ハナ
アザミウマ,ネダニ,ネマトーダ(線虫)などがいます。カイガラムシは冬期の石灰硫
黄合剤やカルホス,スプラサイドの散布,チャミノガはカルホス,ハナアザミウマとネ
ダニは浸透移行性殺虫剤によって防除できます。ネマトーダの汚染地では,予め植え場
所の土壌を殺線虫剤で消毒するか,株間にマリーゴールドを植えておきましょう。
○鉢植え
鉢は8号以上で,用土は赤玉土に3〜4割の完熟腐葉土と少量の苦土クド石灰を混ぜた
ものを用います。元肥はマグアンプKを一掴み用土に混ぜるか,鉢底に骨粉を敷いて植
え付けます。追肥は春秋の彼岸頃と花後,油粕と骨粉の置き肥をします。鉢は西日の当
たらないところに置き,花時は軒下に入れて雨や風を防ぎます。2〜3年しましたら大
きな鉢に植え替えて下さい。他の手入れは地植え場合と同様にして下さい。
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