21b 椿・山茶花
 
○日本のツバキ
(1)ワビスケ系
 古くから茶花として親しまれていますワビスケ(侘助)の仲間は,雄蘂が退化し花粉
がなく,子房に僅かに毛があるなどの点で,他のツバキと区別されます。近年,侘助咲
きと称されますヤブツバキ系の一子イチコ侘助,天輪寺月光テンリンジガッコウなどの品種があり
ますが,これは花形の類似をいいますので,ワビスケの仲間には属しません。
 侘助:別名胡蝶侘助といい,花は一重,径3pの小輪,紅地に白斑,花期は冬から春
です。木は立ち性,生育は遅く,挿し木の発根は悪い。
 白侘助:花は一重,径3p,白色で香りがあり,花期は晩秋から冬です。木は立ち性,
生育は遅く,挿し木は容易です。枝変わりに雛侘助,覆輪雛侘助などがあります。
 西王母セイオウボ:花は一重,径4〜5pの筒咲き,淡桃色が花期は9月中旬から冬です。
木は立ち性で生育旺盛,花粉は正常でよく結実します。ツバキの品種中では最も早咲き
です。
(2)肥後ツバキ系
 江戸時代に細川藩の城下で発展し,現在に至る一重咲き梅芯バイシンの品種群で,盆栽向
きのツバキとして珍重され,また海外においても花の派手さ故に人気が高いです。
 匂吹雪ニオイフブキ:花は一重,平開咲き,径10p,白地に紅の縦絞りで香りがあり,花期
は春です。木は立ち性,強健でよく伸びます。本種の実生に同じく香りのある珠錨タマイカリ
があります。
 肥後紅葉狩:花は一重,平開咲き,径9〜12p,緋紅色で花糸が赤味を帯び,花期は
春です。木は立ち性で強健です。派手な肥後ツバキの中でも特に派手な品種です。
 以上のほか,白花の肥後白雪,白花で紅覆輪の王冠など70余品種があります。
(3)ユキツバキ系
 ユキツバキは戦後,品種の発掘が進み,現在150余品種が知られていますが,古くから
の園芸品種の中にもユキツバキの血を引いたものが少なくありません。
 雪小国ユキオグニ:花は八重,牡丹咲き,径10p,淡いサーモンピンク,花期は早春から
春です。木は横張り性でこんもりと育ちます。ユキツバキの代表品種です。より濃色花
に花かんざし,初恋があります。
 一楽イチラク:花は一重,筒咲き,白色,径3〜4p,花期は春です。木は立ち性で育て
やすく,非常に品のある小輪花で茶花向きです。類似の小輪花に淡桃色の雪化粧,紅色
の万代バンダイがあります。
(4)ヤブツバキ系
 日本の園芸品種の大半はこの系統に属し,育てやすく,花形や生育形態も様々で,最
も親しまれている品種群です。
 玉の浦:花は一重のラッパ咲き,紅色白覆輪,径4〜5p,花期は早春から春です。
木は立ち性で枝は細く長く伸び,葉もやや細いです。当代の人気品種です。
 春の台:花は八重,蓮華咲き,径7〜8p,白色から淡桃色地に紅色の不連続な絞り
が入ります。木は立ち性で生育は遅いです。非常に品のよい花で,銘花の一つに挙げら
れます。
 岩根絞り:花は八重,抱え咲きから平開咲き,濃紅色に白地の雲状斑,径8〜10p,
花期は早春から春です。木は横張り性で丸くこんもりと育ち,枝の伸びは良くないです。
葉は大型で色が濃く,冬はより濃色となり紫色がかります。
 加茂本阿弥カモホンナミ:別名窓の月といい,花は一重,抱え咲きから椀咲き,白色,径5
〜7pで特に太い雄蘂筒ユウズイトウに特徴があります。木は立ち性で強健です。
 卜伴ボクハン:別名月光ガッコウといい,唐子咲きです。花弁は濃紅色,唐子は白色で幾分
紅色がかり,径3〜5p,花期は春です。木は立ち性で枝が細いです。
 孔雀椿:花は八重の蓮華咲き,濃紅地に白斑入り,径4〜5p,花期は春です。木は
立ち性で枝は枝垂れ,花は下向きに咲き,葉は細く波打ちます。似た品種に百合椿があ
ります。
(5)その他雑種起源の品種
 数多い園芸品種の中には系統や由来の不明確なものも多く,種間雑種に起源するとい
われる品種もあります。
 炉開ロビラき:花は一重,平開咲き,径4p,淡桃色,花弁の大きさが不揃いで不整形
の花となり,花期は9月上旬から春です。木は立ち性で葉は細長いです。ユキツバキと
チャの自然雑種といわれ,類似品種にハルサザンカとチャの雑種とみられる花合ハナアワせ
があります。
 
○海外のツバキ
(1)ジャポニカ系
 日本と違ってツバキを非常に広範な目で捉えるアメリカ,オーストラリアなどのツバ
キ先進国では,積極的に種間雑種を作出し,香り,耐寒力,大きさ,色などの面で改良
を進めています。しかし,花色の豊富さ,育てやすさにおいて,未だヤブツバキやユキ
ツバキに由来するジャポニカ系の品種が群を抜いて多く,全体の約8割を占めています。
 エレガンス・シャンペン:花は大唐子咲き,径12〜14p,白色からクリーム白色。
 マーガレット・デービス:花は牡丹咲き,径10p,極淡いクリーム色の弁端に濃桃色
から紅色の覆輪が入り美しい。
 グランド・スラム:花は八重咲き,緋赤色,径14p。
 ショウ・タイム:花は八重から牡丹咲き,径12〜14p,明るいピンク。
(2)トウツバキ系
 ドクター・クリフォード・パークス:花は牡丹咲きから獅子咲き,径14〜15p,朱紅
色。
 フランシー・エル:花は八重,径13〜15p,濃いバラ色。
 フラワー・ガール:花は八重,径12〜14p,ラベンダーがかったバラ色。
 早牡丹(アーリー・ペオニー):花は牡丹咲き,径9〜12p,紫桃色。
 大瑪瑙(コーネリアン):花は牡丹咲き,径12〜13p,紅色地に大きな白斑が入りま
す。
 菊弁(クリサンセマム・ペタル):花は千重咲き,径7〜10p,桃色。
 紫袍(パープル・ガウン):花は八重から千重咲き,径11〜14p,濃赤色。
(3)トウツバキ系以外の交配種
 フラグラント・ピンク:花は牡丹咲き,径5.5p,濃いピンク。
 チューリップ・タイム:花は一重,樋状弁の筒咲き,透き通るような明るいピンク。
 
[サザンカの園芸品種]
 ツバキとの中間形態を示すハルサザンカ系,カンツバキ系品種を含めますと非常に変
異の幅が広く,美しい品種も多いです。特に近年の小型種指向でコンパクトな樹姿で花
つきのよいハルサザンカ系品種の人気が高いです。これらはサザンカ系の通例として花
が簡単に散りやすい欠点がありますが,その分花つきがよいです。
(1)サザンカ系
 名月:サザンカの代表種で,花は半八重,径8〜10p,白地に紅覆輪で香りがあり,
花期は10〜12月です。木は立ち性でよく伸びて強健です。ほかに大錦,旭鶴,東雲シノノメ,
雪山セツザンなどの有名品種があります。
(2)ハルサザンカ系
 笑顔:花は八重,平開咲き,径10p,桃色,花期は12〜3月です。暖地向きの品種で,
木は立ち性でよく伸び強健,花つきがよく,全株を覆うように咲き,見事です。変わり
ものに絞笑顔,笑顔紅があります。
 梅ケ香ウメガカ:花は八重,径4〜6p,淡いクリーム色の弁端に紅を刺し,香りがあ
り,花期は11〜3月です。木は横張り性で丈夫,花つきも非常によいです。
(3)カンツバキ系
 カンツバキ:花は八重,径5〜6p,紫紅色,花期は11〜2月です。木は横張り性で
枝を密に生じ,強健です。このため接ぎ木の台木に賞用されます。本種の血を引く昭和
の栄サカエ,乙女サザンカ,富士の峰はどれも花期が長く,豪華な花をつけますので広く普
及しています。
 ユーレタイド:花は一重,径4〜5p,濃緋赤色です。木は立ち性でコンパクトな樹
姿となります。花色の赤と雄蘂の黄色の対比が美しく,アメリカでのベストセラーです。
カンツバキの実生といわれています。
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