20 紫陽花
 
               紫陽花アジサイ
 
                  参考:世界文化社発行「世界文化生物大図鑑」
 
[アジサイ類]
○アジサイ
 アジサイ属は東アジア,インド,南北アメリカなどに分布し,日本には10数種が自生
しています。そのうち最も広く栽培されていますのは日本産のアジサイ(紫陽花)で,
万葉の頃から観賞用に栽培されていたと言われています。アジサイはガクアジサイの変
種と考えられますが,自生種なのか園芸種なのかはっきりしていません。高さ1.5〜2m
の落葉低木で,株立ちとなります。葉に光沢があり,6〜7月の梅雨期に開花します。
花序は大きな扁球状で,装飾花のみからなり,初め緑色で次第に白色に変わり,正開し
ますとコバルト色となり,更に暗緑色に変化します。
 栽培:半日陰であまり乾燥しないところに植えます。繁殖は株分け,挿し木,取り木
によります。株分けは春の萌芽前,挿し木は春先に枝を2〜3節に切って挿すか,梅雨
時によく充実した新梢シンショウを1節ずつ切って挿し,用土は赤玉土又は鹿沼土です。剪定
は花後軽く行います。アジサイ類の花色は,酸性土壌では青くなり,アルカリ性土壌で
は赤味を帯びます。
 
○ガクアジサイ
 ガクアジサイは相模,伊豆半島,伊豆諸島の原産で,海岸地帯に自生する高さ1.5〜2
mの落葉低木です。株立ちとなり,葉は光沢のある広楕円コウダエン形で先が尖り,基部は楔
クサビ形,縁に鈍い鋸歯があります。6〜7月頃枝先に径15p程に平らな散房花序をつけ,
周辺にだけ装飾花を,中央には多数の両性花を開きます。装飾花は普通青紫色又は淡紫
色で,白色や紅色を帯びたものもあり,花後残って青緑色となります。中央部の両性花
はよく結実し,種子がこぼれて殖えます。古くから庭園に植栽し,品種にフイリガクア
ジサイがあります。
 栽培:アジサイに準じます。
 
○ヤマアジサイ
 ヤマアジサイは別名サワアジサイ,コガクといい,日本原産で,北海道から九州に至
る各地の山間ヤマアイや渓谷などに自生する落葉低木で高さ1m,花はガクアジサイに似ます
が,装飾花は白色です。よく似たものにエゾアジサイがありますが,葉が大きく,装飾
花は通常鮮やかな青紫色です。また,茎がやや細く,葉に光沢はありませんが,紅色の
萼ガクを持つベニガクもヤマアジサイの系統で,装飾花は白色から紅色に変化します。萼
片には鋸歯があり,中心部の両性花は白色です。
 栽培:アジサイに準じますが,夏の乾燥に弱いですので,庭植えの場合もときどき潅
水して下さい。
 
○ヒメアジサイ
 ヒメアジサイは別名ニワアジサイといい,矮性ではなく,アジサイと比べて葉は光沢
が少なくて薄く,やや見映えに欠けます。花色は土壌の酸性度に応じて赤っぽくなりま
すが,一般には青色です。大部分が装飾花ですが,小型の両性花も混じります。本種は,
ヤマアジサイとアジサイの自然交雑種とも,エゾアジサイの花が全部装飾花になったも
のとも言われています。花が普通のアジサイより女性的で美しいので,この名が付けら
れました。
 栽培:アジサイに準じます。
 
○コアマチャ
 コアマチャ(小甘茶)は本州の山地に自生する,アジサイに似た落葉低木で,葉は長
楕円形で紫紅色を帯びます。7月に開花し,装飾花は初め青色で,後紅色となります。
萼片は先端が円く,僅かに凹ヘコみます。乾燥させた葉が甘いので昔から甘味料として用
いられ,4月8日の潅仏会カンブツエに用いる甘茶の原料とされ,また薬用として長野・奈
良・山口県などで栽培されています。初夏の茶花としても好まれます。甘茶の原料とし
て本種のほかに,アマチャ(別名オオアマチャ)や葉の細長いアマギアマチャがありま
す。
 栽培:薬用として栽培する場合は夏に枝を刈り,葉を発酵して乾燥させます。庭木と
する場合は,ほかのアジサイに準じた扱いでよいでしょう。日向ヒナタ,半日陰ともによく
育ちます。
 
○タマアジサイ
 タマアジサイは日本原産で,本州(北部,中部),四国の山地に自生する落葉低木で
す。高さ1.5mで,若い茎には毛があります。葉はアジサイに似ていますが,薄質で光沢
はなく,表裏とも硬い毛があり,鋸歯は細かく,先が剛毛状に尖ります。夏に枝先に散
房花序をつけ,淡紫色の花を開きます。蕾ツボミのうちは,花序全体が数個の広い総苞ソウ
ホウに包まれ,球状です。タマアジサイの名はこれから付けられました。総苞は開花のと
きに落ち,花序の周辺には数個の装飾花をつけ,中央に多数の両性花をつけます。品種
には,両性花だけのものや装飾花だけのものもあります。
 栽培:アジサイに準じます。湿気のある半日陰に育ちます。
 
○ノリウツギ
 ノリウツギ(糊空木)は日本,サハリンの原産で,北海道から九州に至る山地に自生
する落葉低木で,高さ2〜3mの株立ち状になります。葉は対生又は輪生し,楕円形で基
部は円く先が鋭く尖り,縁には低い鋸歯があります。7〜8月,枝先の円錐花序に白色
の装飾花と両性花を多数つけます。樹皮から製紙用の糊を採り,また根から作るサビタ
のパイプも有名です。庭木,生け花材料にも用いられます。
 野生品種のミナヅキは,母種のノリウツギに比べ,花序が大きく,装飾花のみをつけ
て美しいので,母種より多く用いられています。1864年にヨーロッパへ紹介されました
が,外国での改良種が逆輸入されています。
 栽培:アジサイに準じます。
 
○セイヨウアジサイ
 セイヨウアジサイは,日本産のアジサイ類が中国を経てヨーロッパに渡り,改良され
て昭和初年に逆輸入されたもので,ハイドランジアとも呼ばれます。母種は,ガクアジ
サイ,ヒメアジサイ,ヤマアジサイ,ベニガク,アマチャなどです。花序全部が装飾花
からなる球状の花序を持つアジサイ型のホルテンシア系が最も多いですが,ガクアジサ
イ型のレースキャップ系や,アマチャなどに由来するセラータ系などもあります。品種
が非常に多く,在来のアジサイに比べ花色も鮮明で豊富です。葉にはアジサイのような
光沢はありません。現在一般にみられますアジサイの殆どはセイヨウアジサイです。
 栽培:アジサイに準じますが,日の当たるところでもよく育ちます。
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