18 桃
 
                 桃
 
                  参考:世界文化社発行「世界文化生物大図鑑」
 
[モモ]
 モモ(桃)は原産地は中国で,高さ4mになる落葉樹です。葉は広披針コウヒシン形又は長
円披針形で,葉縁の鋸歯が粗いです。花は暖地で3月,寒地では5月に咲き,桃紅色で,
ウメと同じく葉が出る前に開花します。花を観賞する花桃と,果実を食用にする食用桃
とに大別されます。
○花桃
 殆ど結実しません。系統としては次のようなものがあります。
 立ち性:主に切り花向きで,花は紅,白,絞りなど,葉が紅色をした品種や花弁が細
くなった菊咲き種などがあります(菊桃・矢口・細矢口・寒緋カンヒ・源平・寒白カンパク・
京更紗キョウサラサなど)。
 枝垂れ性:枝が垂れ,花は一重咲き,八重咲き,紅白があります。品種としては白花
八重咲きの残雪枝垂,1株に紅白の花をつける源平枝垂(ほかに羽衣枝垂)などがあり
ます。
 一歳物:実生1年で開花しますが,樹齢は10年位です。
 矮性ワイセイ:高さ1〜2m,節間が短く,花が節々につきます。カラモモ,寿星桃ジュセイ
トウなどと呼ばれ,一重,八重,紅白などがあります。
 その他:樹形が箒を立てたようにみえるホウキモモ(箒桃)もあります。
○食用桃
 江戸時代の書物には30数品種記述されていますが,果実は小さく,長い毛が密集し,
果肉が硬く,甘味も少なく品質はよくありませんでした。明治になって,中国,欧米か
ら20数品種が導入され普及しました。その後,日本の気候風土に合う品種改良がなされ,
世界に誇る品種群が育成されました。
 モモは,他の果樹と違って木の寿命が15〜20年と短いので,品種の移り変わりが激し
いです。現在では砂子早生スナゴワセ,布目ヌノメ早生などの早生種,白鳳ハクホウなどの中生種,
白桃ハクトウなどの晩生オクテ種が栽培されています。
 栽培:(以下,スモモに準じます)日当たりがよく,排水のよい土壌に植え,乾燥の
し過ぎに注意します。施肥は,有機質の配合肥料(果樹用),堆肥を用います。ハダニ,
アブラムシが発生しやすいので,ダニ剤としてエイカロール乳剤,ケルセン乳剤など
1000倍,アブラムシには,エストックス乳剤などの有機リン酸を1000〜2000倍で用いま
す。繁殖は接ぎ木,品種により挿し木も可能です。
 
「モモの育て方」
○栽培の適地
 まず,日当たりのよいところを選ぶことが第一です。温度に対しての適応性は可成り
ありますので,北海道でも栽培可能です。耕土の深い,排水のよい肥沃な土壌に植えま
す。
○苗木の植え付け
 モモは自家結実性ですので,花粉のない品種以外は1本だけでも結実し,食用モモが
栽培できます。秋の落葉の後か春直前が植えどきです。植え土はよく耕し,堆肥や腐葉
土を多く混ぜます。植え穴は直径,深さとも60p位が必要です。接ぎ木苗は接いだ部分
が地上に出る位に浅く植え,覆土してたっぷり水をやっておきます。
○整枝と剪定
 食用モモは開心自然形に作るのが普通ですが,樹高を低くできる杯状形も家庭栽培に
は向いています。花モモは主幹を育て,整枝は適当に間引きます。ホウキモモや枝垂性
のモモは,主幹を特に上に伸ばすように育て,枝垂れの場合は支柱を立てて誘引します。
 剪定は,徒長枝,内向枝,下向枝,樹形を乱す交差枝や平行枝を除去するのが基本で
す。冬から早春にかけてが主な剪定の時期ですので,枝が混んできたときには,夏にか
けても不要な枝は切り落とします。
○果実の管理
 開花後1カ月位で不受精果が落果しますので,それが終わりましたら,つき過ぎた果
実を摘果します。一部の品種は6月にも落果することがありますので,摘果し過ぎない
に注意して下さい。果実1個当たりの葉数25〜30枚が標準です。病害虫や鳥害を防ぐた
め袋掛けをします。
○施肥
 油粕などの有機質肥料,化成肥料を中心に,10月頃溝を掘って埋め込みます。追肥と
しては液肥を用います。モモは肥料を好む方ですが,窒素肥料を施し過ぎないよう注意
して下さい。
○病害虫
 コスカシバが樹皮下に食入しますと,樹脂が流れ出します。樹脂の出ている穴を穿っ
てマラソンを注入します。アブラムシによる被害も大きいので殺虫剤で駆除します。枝
の股にクモの巣状のものを作って多数の毛虫が入っているものは,オビカレハの幼虫で
す。巣に火をつけて焼き殺すのが手っとり早いです。
 葉が縮れて変形する縮葉病には,発芽前にダコニール水和剤を散布しておくのも効果
的です。花や熟期の果実につく灰星ハイボシ病には,ベンレートなどの殺菌剤を用いるとよ
いでしょう。

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