17 梅
 
                 梅
 
                  参考:世界文化社発行「世界文化生物大図鑑」
 
[ウメ類]
○ユスラウメ
 ユスラウメ(梅桃)は別名ユスラ,ヤマユスラといい,原産地は中国,朝鮮半島で,
江戸時代の寛永初年以前に渡来したと考えられています。観賞用に庭木や,鉢植えにさ
れる高さ1〜2mの落葉低木で,分枝が多く,若枝には縮れた毛があります。葉は互生
し,倒卵形,鋭尖頭エイセントウ,細鋸歯サイキョシがあり,長さ5p,全体に毛があります。花は
4〜5月,葉が出る前か葉と同時に咲き,白色又は淡紅色で五弁,径1.5p,果実は6月
頃赤く熟し,径1pでほぼ球形,甘味があって生食できます。ニワウメによく似ていま
すが,葉に毛が多く厚みがあります。白実種もあります。
 栽培:繁殖は実生,株分け,接ぎ木とし,日当たりを好み,土壌はあまり選びません。
 
○ニワウメ
 ニワウメ(庭梅)は別名コウメ,リンショウバイ(林生梅)といい,原産地は中国で,
観賞用として庭に植えられますが,切り花にもされます。高さ1m余の落葉低木で,木は
株立ちし,全株無毛,葉は卵状披針ヒシン形,鋭尖頭,細かい重鋸歯があり,長さ5〜6p
です。果実は7月頃に径1p前後の,スモモを小さくしたような光沢のある淡紅色に熟
します。梅漬けとして売られています小梅は,本種ではなく実梅ミウメです。リンショウバ
イは花屋での名称です。
 変種にニワザクラ(庭桜)があり,ニワウメとよく似ていますが,葉は長楕円形状披
針形で,上面に粗い皺シワがあります。花弁は細長く八重咲き,淡紅色で,白色もありま
す。果実は成りません。ヒトエノニワザクラの八重咲きとする見解もあります。
 栽培:繁殖は挿し木,株分け,取り木とし,日当たりを好み,湿気のある土壌によく
育ちます。アブラムシが発生しやすいので初夏に防除して下さい。
 
○ウメ
 ウメ(梅)は,サクラ属のうちスモモ亜属アンズ節に分類され,アンズ節はアンズと
ウメに大別されます。日本での栽培の歴史は古く,そのため野生説もありますが,中国
から伝来したとする考えが一般的です。園芸的には平尾彦太郎が次のように分類し,こ
れが今日定着しています。
 野梅系 − 野梅性ヤバイショウ,紅筆性ベニフデショウ,難波性ナニワショウ,青軸性アオジクショウ
 紅梅系 − 紅梅性コウバイショウ,緋梅性ヒバイショウ,唐梅性トウバイショウ
 豊後系 − 豊後性ブンゴショウ,摩耶性マヤショウ(摩耶紅性)
 杏性 アンズショウ − アンズとの雑種
 このほかに,一般的には花色により白梅と紅梅,目的により花梅と実梅ミウメに,枝によ
って錦性ニシキショウ(若枝に雲状の斑フが入る),筋入性スジイリショウ(枝に縦筋が入る),枝垂
性シダレショウ(枝が垂れる)と呼ぶこともあります。
 ウメが日本の文献に初めて現れましたのは奈良時代の「懐風藻カイフウソウ」で,その後,
「万葉集」に110余首歌われています。この頃は白い花だけが歌われていますので,最初
に伝来したのは白い花と考えられています。紅い花は平安時代の「続ショク日本後期」に初
めて現れます。江戸時代には,その品種も多くなり,「花壇綱目カダンコウモク」(1681年刊
)に53品種が挙げられています。
 ウメは,元々薬用として中国から渡来したと考えられており,ウメの実の燻製クンセイを
薬用にしました。その後,食用としても用いられるようになりましたが,梅干しにした
のは鎌倉時代になってからと言われています。
 名所,名木は多数ありますが,なかでも水戸の偕楽園,太宰府の飛梅などが有名です。
(1)野梅系
 原種に近い強健な性質で,枝が細く,刺状の小枝を出します。葉は毛が無く小さくて,
果実も小さいです。挿し木により繁殖し,他の品種の台木として用いられます。
 野梅性:細い枝が多数出ますが,枝元から出る細枝は刺状になる場合もあります。花
は一重咲きと八重咲きがあり芳香も強く,変異に富み,枝垂れる品種もあります(見驚
ケンキョウ・香篆コウテン・野梅ヤバイ・花香美ハナコウミ・春日野・道知辺ミチシルベ・白加賀シロカガ・世界
の図・呉羽枝垂クレハシダレ・三吉野ミヨシノなど)。
 紅筆性:蕾ツボミが筆先のように尖っているもので,紅色になります(内裏など)。
 難波性:葉痕ヨウコンの部分が高くなったもので,葉は円いです(白難波シロナンバ・文殊な
ど)。
 青軸性:蕾が緑白色で,枝が常に緑色のもの(月の桂・月影枝垂など)。
(2)紅梅系
 花色ではなく,枝の断面が紅色を呈していることが特徴で,花の色は紅色が多いです
が白色もあります。
 紅梅性:花は明るい紅色で,枝はあまり濃く着色しません(紅千鳥・大盃など)。
 緋梅性:特に花の色の濃い系統で,枝や幹の断面は紅梅性より一層濃く黒褐色になり
ます(鹿児島紅・佐橋紅サバシコウ・緋梅ヒバイ・鴛鴦エンオウなど)。
 唐梅性:花色は濃いですが,花が終わる頃に花弁の周辺が白っぽくなり,花弁に赤い
脈が出ます(唐梅トウバイなど)。
 代表的な品種として紅鶴,緋梅,唐梅などがあり,盆栽にもされます。
(3)豊後系
 豊後性は,枝が太く,樹勢が強く,葉は大型の丸葉,表面に毛があります。果実は大
果系が多く,球形に近いです。花は大きく,淡桃色のものが多く,萼筒ガクトウがやや壷形
をしています。代表的なものとして実を採る豊後ブンゴがあまりにも有名ですが,ウメと
アンズの中間的な性質を持っています(薄色縮緬ウスイロチリメン・滄溟ソウメイの月・未開紅ミカイコウ
・藤牡丹枝垂・大和牡丹など)。
 豊後性の花梅としては,大湊オオミナト,武蔵野などがあり,盆栽にされる品種も多いで
す。
(4)杏性
 豊後性より枝や葉がやや細いです。ほかのウメと異なって葉に毛が無く,滑らかです
が中には葉面が多少ざらつき,秋になりますと,枝が葉柄ヨウヘイとともに紅色を帯びるも
のもあります。ウメというよりアンズに近いです。代表的な品種に記念,八朔ハッサク,一
の谷,桜梅サクラバイなどがあります(江南所無コウナンショム・記念など)。
○栽培の概要
 日当たりがよく,排水の良いところを好みます。半日陰でもよいですが,西日だけの
ところはできるだけ避けて下さい。湿気があった方がよいですが,水が溜まるところは
よくありません。土は,砂質土や粘土質でなければあまり選びません。施肥は,堆肥を
与えるのが望ましいですが,化成肥料か,油粕に骨粉を混ぜたものでもよいでしょう。
 春早く,前年の枝を3〜4芽残して切り,花後,新梢シンショウが伸び出し,あまり樹勢が
強いときは芯を止めます。
 アブラムシ,カイガラムシ,ケムシがよく発生しますので,開花前にマシン油乳剤か
石灰硫黄合剤を散布,虫が発生したら,カルホス乳剤などを散布します。
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