16 桜
 
                 桜
 
                  参考:世界文化社発行「世界文化生物大図鑑」
 
[サクラ類]
 サクラは,バラ科サクラ属サクラ亜属に分類される多数の種,変種,品種の総称です。
世界に約200種,主に温帯,アジア東部に多く,インド,マレーシア,アンデスにも分布
しています。
 サクラ亜属の野生種は,次ぎのような系統に分けられます。
 
 (T)ヤマザクラ群―――――――ヤマザクラ
                 オオヤマザクラ
                 カスミザクラ
                 オオシマザクラ
 
 (U)エドヒガン群―――――――エドヒガン
 
 (V)マメザクラ群―――――――マメザクラ
                 ミネザクラ
 
 (W)チョウジザクラ群―――――チョウジザクラ
 
 (X)ミヤマザクラ群――――――ミヤマザクラ
 
 (Y)カンヒザクラ群――――――カンヒザクラ
 
 一般にこれら野生のサクラに対して,園芸品種は植物分類学上,オオシマザクラの変
種が多く,サトザクラと総称されています。
 
○栽培の概要
 サクラの管理は,昔から「桜切るバカ,梅切らぬバカ」と言われますように,枝は切
らないのが正しいとされてきましたが,枯れ枝,病気,徒長枝など不要な枝は切り落と
した方が,樹勢の確保をする上において,大切な作業であることが認識されています。
切り落とした場合は,切り口から病気が入りやすいので,植物生長ホルモン入りの塗布
剤を塗ります。
 サクラの病気は,ソメイヨシノでは天狗巣テングス病が大敵で,オオシマザクラ系には穿
孔褐斑センコウカッパン病が最もよくみられます。害虫では,ケムシ類,アブラムシ,カイガラ
ムシ類,ハダニ類がよく発生します。これらの防除のため,早春に石灰硫黄合剤の7〜
8倍液かマシン油乳剤にベンレート水和剤を混ぜて散布します。ケムシ,アブラムシ,
ハダニなどは,発生の都度早期に駆除します。このほかにコスカシバが発生し,幹に孔
を穿け樹勢を弱らせるので注意をして下さい。
 サクラの樹勢維持には,なんといっても肥料を与えることです。繁殖は,接ぎ木,挿
し木,野生種は実生ミショウも容易です。
 
○ソメイヨシノ
 ソメイヨシノ(染井吉野)は,江戸末期から明治初期に東京染井村(現在の豊島区駒
込)の植木屋から売り出されました。古くはサクラといえばヤマザクラを指しましたが,
明治以降はソメイヨシノを指すことが多くなりました。本種はオオシマザクラとエドヒ
ガンとの自然雑種で,樹高10〜15m,径40〜50pですが,青森県弘前公園には径1mを超
える大木があります。枝は太く,横に広がりますが,斜垂することもあります。葉は広
卵形で質はやや厚く,先は尖り,長さ8〜10p,重鋸歯ジュウキョシがあります。花は暖地で
は3月末,東北以北では4〜5月中旬に咲き,花弁は5枚,径4〜4.5p,白色から淡紅
色です。果実は,ほかの品種と交配しなければつきません(自家不和合)。葉に先だっ
て木全体に花が咲くのが一般に受け入れられ,明治以後,全国に急速に普及しましたが,
病害虫や公害に弱く,手入れをしませんと極めて短命(50〜60年)です。園芸品種とし
てアメリカ(曙),昭和桜などが作出されています。
 
○ヤマザクラ
ヤマザクラ(山桜)は別名シロヤマザクラで,原産地は日本(本州太平洋側宮城県以南,
日本海側秋田県以南,四国,九州),朝鮮半島南部です。古来から日本人に賞美されて
きました。高さ15〜20(〜25)m,胸高径は2mにもなります。葉は長楕円形,卵形又は
倒卵状長楕円形で,長さ8〜12p,殆ど無毛,花と同時に出ます。花は4〜5月上旬に
咲き,白色又は淡紅色,五弁で径2〜3p,果実は核果で球形,径7〜10o,黒紫色に
熟します。本種はソメイヨシノ出現以前はサクラの代表でして,奈良県の吉野山は名所
です。観賞用としてだけでなく,材は家具類,樹皮は縫合用として用いられます。本種
はオオシマザクラとともにサトザクラの原種の一種で,佐野桜,菊枝垂キクシダレ,御信ゴ
シン桜など多数の品種が知られています。
 
○オオヤマザクラ
 オオヤマザクラ(大山桜)は別名ベニヤマザクラ,エゾヤマザクラといい,原産地は
本州日本海側島根・広島県境の冠山,太平洋側岐阜県以北,北海道,サハリン,南千島,
朝鮮半島で,前種ヤマザクラより寒い地方に分布します。高さ12〜15(〜20)m,胸高径
90pに達します。葉は楕円形,卵状楕円形又は倒卵状楕円形で,長さ8〜14p,裏面は
僅かに粉白色を帯び無毛です。花は4〜5月,紅色から淡紅色で五弁,径3〜4pで,
葉と同時か少し早く咲きます。果実は球形で,径10〜13o,黒紫色に熟します。本種は
北海道産のものが花色が濃く,開花はソメイヨシノと同時か,やや早いです。近年街路
樹や公園樹としてされることが多くなりました。
 
○カスミザクラ
 カスミザクラ(霞桜)の原産地は日本(北海道〜九州),朝鮮半島,中国東北部です。
高さ15〜20(〜25)m,胸高径90pに達します。枝が伸びきりますと,先端部が幾分枝垂
れます。葉は倒卵形又は倒卵状楕円形で,先端は鋭く尖り,裏面は淡緑色で光沢があり,
毛が生じ,長さ8〜12pです。花は4〜5月,白色で五弁,径2.5〜3p,葉が出ると同
時に咲きます。果実は球形で黒紫色に熟します。ヤマザクラやオオヤマザクラが散る頃
から咲き始め,遠くから見てもある程度判別できます。変種や品種がありますが,奈良
八重桜は本種の八重咲きで,優美な花として有名です。北海道松前で作出したサトザク
ラにも本種が使われています。
 
○オオシマザクラ
 オオシマザクラ(大島桜)は,関東南部,伊豆半島に野生,高さ8〜10(〜25)m,胸
高径30〜40p,多くの枝を分岐して斜上します。葉は倒卵状長楕円形,長さ8〜13p,
腺点センテンは葉柄ヨウヘイの上部又は葉身の基部にあります。花は4月上旬,東北地方では4
月下旬〜5月上旬に咲き,白色,五弁,径3.5〜4pです。果実は球形で紫黒色に熟しま
す。老木になりますと枝が横に広がりますので,公園などの広いところに植栽されます。
野生の品種ではヤエオオシマ,ウスガサネオオシマ,シオカゼザクラがあります。本種
は,多くのサトザクラの原種の一種で,普賢象フゲンゾウ,天の川,鬱金ウコン,関山カンザン,
旭山アサヒヤマなど多数の園芸品種が知られています。
 
○エドヒガン
 エドヒガン(江戸彼岸)は別名アズマヒガン,ウバヒガンといい,原産地は日本(本
州,四国,九州),朝鮮半島,中国,台湾です。サクラの中でも樹齢が長く,大木とな
るものが多く,公園などに植栽されます。高さ15〜20m,胸高径60〜80p,天然記念物級
のものは周囲10m以上のものが各地に知られています。葉は長楕円形又は狭倒卵形で,長
さ6〜12pです。花は3月下旬〜5月上旬,葉が出る前に咲き,微紅色から白色,五弁
で径1.5〜3p,果実は球形,紫黒色に熟します。ソメイヨシノの母親であることが最近
判明しました。岐阜県の根尾谷ネオダニ淡墨桜ウスズミザクラ,山梨県の山高ヤマタカ神代ジンダイ桜
が有名,園芸品種にシダレザクラがあり,花色が紅色のものをベニシダレといいます。
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