13 藤
 
                 藤
 
                  参考:世界文化社発行「世界文化生物大図鑑」
 
[フジ類]
○ヤマフジ
 ヤマフジ(山藤)は本州西部,四国,九州の山地に自生し,長さ20m以上の蔓性木本
で,庭木として棚作りや鉢植えにします。フジと異なる点は蔓が左巻き,小葉は6〜13
枚は少ないが大きいです。葉の裏面に最後まで毛が残ります。花期は5〜6月,フジよ
り少し早く咲きます。頂生の総状花序は長さ10〜20pとやや短く,殆ど一斉に咲きます。
花色は紫,蝶形花チョウケイカで大きく,2〜3p,芳香があります。莢サヤは長さ20pほどで
5〜6個の種子が入っています。本種は園芸的にカピタン,又はダルマフジとも呼ばれ,
紫の栽培品種をムラサキカピタン,白花のシラフジをシロカピタンといいます。アケボ
ノカピタンは花が薄ピンク,ヤエヤマフジは八重咲きで藤紫色の栽培品種です。これら
の品種は特に鉢作りや庭木,棚作りとして楽しまれています。
 栽培:フジに準じます。
 
○シナフジ
 シナフジ(支那藤)は中国東北部の原産で,昭和10年頃渡来,林の木に巻き付いて上
り,長さ20mにもなる蔓性木本,庭木や棚作りにします。蔓は左巻き,葉は互生で奇数羽
状複葉,小葉は9〜13枚,卵円形で鋭尖頭エイセントウ,長さ5〜7p,若い葉は裏に毛があ
り,生長しますと無くなります。側枝の先から長さ15〜30pの総状花序を垂らします。
花は長さ2.5p,芳香があり,花色は青紫又は紫,莢は長さ10〜15p,ビロード状の細毛
で覆われ,種子は2〜3個入ります。日本のフジが美しいためか,日本ではあまり栽培
されません。変種にシロバナシナフジ,シロバナヤエシナフジ,ウスベニシナフジなど
があります。
 栽培:フジに準じます。
 
○フジ
 フジ(藤)は別名ノダフジ,原産地は日で本,本州,四国,九州に自生し,林内の木
などに絡まり上る落葉蔓性木本で,花が美しいので庭木,鉢植え,棚作りにします。蔓
は右巻きで丈夫な繊維質,葉は奇数羽状複葉で,小葉は11〜19枚,ヤマフジより小さく
波を打ちます。花期は5〜6月,1花は1.2〜2pで良い香りがします。普通淡紫色で側
枝の先から長さ20〜60p,品種によっては1m以上の総状花序となり,多数の花をつけ,
垂れ下がります。代表的に品種には次のようなものがあります。
 アケボノフジ:蕾のときはピンクで,開くと淡いピンクを残し白くなります。
 シロバナフジ:花は白く花穂カスイが長く,四国,九州には自生種もあります。
 アカバナフジ:花色が淡紅で花穂は長さ30〜50pです。
 ノダナガフジ:花穂が長く50〜60pになります。
 ヤエフジ:八重咲きで花色もやや紫が濃く,花穂に長さ20〜40pとやや短く,花数も
少ないです。
 ニシキフジ:カワリフジとも,葉に淡黄色の斑フが入り,樹勢は弱いです。樹が小さく
て開花します。
 その他:赤花の本紅藤,口紅藤,八重咲きの八重黒竜コクリュウ,花穂が分岐する八房藤な
どの園芸品種があります。
 栽培:フジの繁殖は取り木,接ぎ木,挿し木によります。実生もできますが開花まで
の期間が長く実用的ではありません。土は選びませんが,乾燥するところはよくありま
せん。春に剪定し,花芽分化期(6月下旬〜7月)迄に十分枝葉をつけるようにします
と,花がつきやすいです。特に鉢作りにおいては,なるべく大鉢を用いて,花後は直ぐ
に花芽分化しますので種子をつけないようにします。施肥は秋から冬にします。植え土
は堆肥や腐葉土と砂質壌土を混ぜます。花芽は,春に伸びた枝の基から2〜3芽につき
ますので,伸び過ぎた蔓は先端を摘んで下さい。主な病害虫対策は,こぶ病は削り取っ
てクレオソートを塗り,予防に銅マイシン剤を散布,マメコガネは成虫が葉を食べるの
で,叩き落として抹殺して下さい。
 
「フジの育て方」
○性質
 湿潤地を好み,土質は肥沃ヒヨクな粘質土が適します。樹勢は極めて強く,半日陰地でも
生育しますが,日当たりのよいところの方が花つきが良いです。
○苗の植え付け
 落葉期間中ですと何時でも植え付けられます。ポット仕立ての苗も,根巻きをした苗
も,根先を切らずに植え込むことが大切です。植え穴の底には,元肥として堆肥や腐葉
土を多めに敷き込みます。
○仕立て方
 「棚仕立て」にするには,一〜二年生の高接ぎ苗(1.8mほどの高さで接いだ苗木)を
用いるとよいでしょう。植え付けた当初は,蔓の伸び方も旺盛で,2〜3年は花よりも
枝の誘引を主として育てて下さい。樹勢が落ち着くにつれて蔓の伸びも押さえられ,花
芽がつくようになります。「切り込み仕立て」は,丈を伸ばさないで,毎年長い枝を切
り詰めながらコンパクトな樹形を保つもので,池の端などの植栽に向きます。これには
低い位置で接いだ元接ぎ苗を用います。
 このほか,洋風の庭でしたら,ポール仕立てやフェンス仕立ても面白いでしょう。
○開花までの手入れ
 フジは春から夏にかけて勢いよく蔓が伸びますが,その都度短く切り詰めてしまいま
すと,花芽がつきにくいです。どうしても蔓の伸長が気になるようでしたら,6〜7月
頃に長い蔓の先端を軽く摘んで芯止めしておきましょう。落葉する晩秋には,今年伸び
た枝の基部にふっくらとした花芽がついているのが分かります。花芽は長く伸びた枝と,
殆ど伸びなかった短枝の両方につきます。短枝の花芽はそのままにして,長枝は基部の
花芽を2〜3芽を残して切り戻して下さい。
 フジは成株を植えても,庭の環境に馴染んで開花するまでに3〜4年は要しますが,
それでも咲かないようでしたら,太枝のところどころに環状剥皮ハクヒを施してみて下さ
い。
○フジ棚の整枝
 完全に落葉した11〜2月に整枝します。花芽を確認しながら伸び過ぎた枝を切り詰め,
込んでいる部位は小枝を間引いて,採光と通風を図ります。枝の誘引はシュロ縄で結束
しますが,長期間に亘って結わえ続けますと枝が太って,そこで括れてしまいますので,
一旦古いシュロ縄を外し,結わえ直して下さい。
○施肥
 12〜2月,寒肥として堆肥,鶏糞,骨粉などを根の周囲に埋めてやりましょう。
○鉢栽培
 フジは窒素過多にしますと開花しなくなります。また,水切れしますと花芽をつけに
くくなりますので,生育期間中(殊に7〜9月)は受け皿に水を溜め,腰水の状態で管
理して下さい。鉢替えは3〜4年に一度行います。この際古土は落としても,根先は切
り詰めないで下さい。
○病害虫
 殆ど心配はありませんが,通風の悪いところでは,カイガラムシ類が発生することが
あります。冬期に石灰硫黄合剤を散布して防除します。枝に出たコブは,病気ですので
必ず除去して下さい。

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