11 葡萄
 
                葡萄
 
                  参考:世界文化社発行「世界文化生物大図鑑」
 
 ブドウ(葡萄)は,ユーラシア原産のヨーロッパブドウと,北アメリカ東部原産のア
メリカブドウ,及びその他の2〜3の種との雑種が栽培されています。ヨーロッパブド
ウは,生長期間中の温暖,乾燥を好み,耐寒性(−15℃),耐病虫性,耐雨性(500o以
内)が弱いです。花は両性花で,前年枝の腋芽エキガに含まれ,5〜7月,新梢シンショウ上5
〜8節につきます。間絶巻き髭で,果実から良質の酒ができます。生食用品種は概ね大
粒で味が良いです。アメリカブドウは耐寒性(−25℃),耐病虫性,耐雨性(1000o内
外)が強く,葉の裏面に白色から褐色の面毛が多く,連続巻き髭が特徴です。果実の肉
質及び酒質は不良です。ヨーロッパブドウとアメリカブドウの雑種は,生長期間中,雨
の多い日本,アメリカ東部に適します。何れの系統の場合にも,品種には白,黒,赤の
果色と,円,卵,楕円,長楕円などの果形があります。また果実に種子の無い品種もあ
ります。
 主な品種には次のようなものがあります。
 
○ヨーロッパブドウの品種
 甲州:奈良時代に中国から導入,晩生オクテ,中粒,紫赤色で,生食醸造兼用,長梢剪定
に適し,山梨県に多い。
 ネオ・マスカット:大正14年,岡山県の広田盛正がマスカット・オブ・アレキサンド
リアに甲州三尺を交配して育成,中生ナカテ,中粒,黄緑色,生食用。
 甲斐路カイジ:昭和30年,山梨県の植原正蔵がフレームトーケー×ネオ・マスカットで
育成,晩生,大粒,楕円形,赤色,生食用。
 マスカット・オブ・アレキサンドリア:アラビア原産,晩生,大粒,倒卵形,黄緑色,
生食用。日本ではガラス室内で栽培され,岡山県に多い。
 
○アメリカブドウの品種
 コンコード:1843年,アメリカでバルが野生ラブルスカ種の実生ミショウから育成,中生,
黒色,中粒,ジャム・ジュース用
 
○ヨーロッパフドウとアメリカブドウの雑種による品種
 デラウェア:1850年頃アメリカにおいて発見された三原サンゲン雑種,日本には明治15年
に導入,早生,赤紫色,小粒,生食醸造兼用。
 キャンベル・アーリー:1892年アメリカでキャンベルが作出,早生,黒色,中大粒,
富産,生食用。
 巨峰:昭和11年,大井上康が石原早生×センテニアルにより育成した4倍体,早生,
巨大粒,赤紫色,生食用の絶品。
 マスカット・ベーリーA:昭和2年,川上善兵衛がベーリー×マスカット・ハンブル
グにより育成,中生,黒色,中粒,生食醸造用。
 
○栽培の概要
 礫質粘土から砂質壌土に適します。垣根仕立てや棚仕立てとし,1uにつき10芽程を
配置します。肥料は晩秋に油粕及び骨粉を1u当たり20gずつと,堆肥1s程を施しま
す。繁殖は接ぎ木,挿し木,ときに実生もします。
 
 「ブドウの育て方」
○品種の選択
 ヨーロッパ系のブドウは,夏に雨の多い日本では病害がでやすく,作りにくいです。
アメリカ系のブドウは日本の気候に合い,丈夫で作りやすいので,家庭栽培にはこの系
統のものが奨められます。デラウェア,マスカット・ベーリーA,巨峰などです。
○植え付け
 ブドウは簡単に挿し木できますので,自分で挿し木をして苗を作ってもよいですが,
根にフィロキセラの害が出やすいので,フィロキセラ抵抗性台木使用の接ぎ木苗の方が
安心です。水はけのよい砂質壌土や,石灰質を含む土地が適しています。植え付けの時
期は,秋の落葉直後か,春の芽出し前が最も良いでしょう。深さ,径とも50p位の植え
穴の底に鶏糞,堆肥などを入れ,間土アイツチしてから,根を広げて植え付けて下さい。接
ぎ木苗でしたら,接ぎ目の部分が地上に20p位出るような浅植えにします。苗木の蔓は
3〜4芽を残して,上は切り捨て,支柱を立てます。
○樹形作りと剪定
 芽が伸び出しましたら,当分の間は勢いの良い蔓1本だけを伸ばして育てれば,2〜
3年で垣根や棚に誘引できるようになります。
 花芽は前年伸びた枝の葉の付け根につき,これが越冬して翌春から夏にかけて新梢シン
ショウを伸ばして花穂をつけます。剪定は冬12〜1月に,極強勢枝は切り捨てるか,残す場
合は20〜30芽をつけて切ります。1m以内の枝は10芽内外に切り,予備枝を作る場合は2
〜3芽に切り詰めます(面積での目安は,1u当たり10芽程度)。剪定は,残す芽の一
つ先の芽のところを,芽にかけて切ることが大切で,これを犠牲芽剪定といいます。芽
と芽との中間で切りますと,近くの芽が発芽不良になる心配があります。また交差した
り重なり合う枝は取り除きます。
○果房の管理
 成り過ぎはブドウ栽培にとって一番の赤信号です。新梢が込み合っていたならば取り
除き,房や果実が多過ぎるときは,摘房,摘粒が必要です。大房種では1新梢に1房,
中小房種では2房位を標準にします。蔓が勢いよく伸び過ぎると花が咲いても実がつき
にくくなる「花ぶるい現象」がみられ,巨峰はこの花ぶるい現象が起きやすいです。こ
れは,開花直前に花房の長さの1/4〜1/5ほどの先端と両肩の部分を切り縮める「房作り
」で防ぎますが,根本的には徒長しやすい土質(火山灰土)や肥料の施し方(窒素過多
)が原因しています。
 肥料は秋の終わりに,1u当たり施肥1s,油粕,骨粉を20g与え,衰弱樹に更に春,
化成肥料を施します。また,着色期の前に消石灰やカリを追肥しますと,ブドウの味を
よくします。
 日本に多くみられますデラウェア種の,小粒で甘い種なしブドウを作るには,ジベレ
リン処理します。開花約2週間前と,開花10日くらい後の2回,房をジベレリンの1万
倍液に数病浸して下さい。
○病害虫
 黒痘コクトウ病を始め,晩腐オソグサレ病,べと病,褐斑カッパン病,つる割れ病,さび病,うど
んこ病などの病害が発生します。最も注意するのは枝先や若い実を冒す黒痘病で,芽出
し前にクロン500倍液で防除し,開花前後にも殺菌剤を散布します。混み合った枝を間引
きし,棚を明るくしておくことも大切です。果実の袋掛けも病気の発生を防ぐのに役立
ちます。
 害虫ではブドウスカシバ,ブドウトラカミキリの被害が大きいです。スミチオン,カ
ルホス乳剤などの殺虫剤を,スカシバには6〜7月,ブドウトラカミキリには8月末に
散布します。

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