10c 躑躅・皐月・石楠花
 
[シャクナゲ類]
○ツクシシャクナゲ
 南畿の一部から中国,四国,九州の高地に分布,谷間タニアイ,山林中に自生します。高
さは最大で5mに達する常緑低木で,よく分枝します。花は5月,前年枝の先に12〜14花
で花房を作り,広い鐘状漏斗ロウト形で,花弁は七裂,花径は7.5pと大きく,咲き出しは
淡いピンクか紅色で,後に退色しますが極めて美しい。稀に白花もあります。葉は長楕
円形又は倒披針トウヒシン形で,長さ15p,裏面は厚い赤褐色の毛で覆われます。飛騨地方か
ら近畿,中国,四国に分布し,花弁が七裂で葉裏が無毛のホンシャクナゲと区別できま
す。九住山系のミマタシャクナゲは本種の矮性型です。さく果は長さ2pです。
 栽培:繁殖は実生,挿し木によります。
 
○ヤクシマシャクナゲ
 鹿児島県屋久島に限り,高山に分布,湿度の高い樹林中,岩場,草原に自生,ときに
樹上に着生します。高さ1mの常緑低木で,極めてよく分枝します。葉は互生し,密につ
いて木を覆い,長さ10p,幅2.5pで長楕円形,新葉は白毛に覆われ,後に落ちます。表
面は光沢があり,裏面に厚く褐色の軟毛を持ちます。花は5月,径4pの鐘形,咲き出
しは紅色で,開くと白色,前年枝の先にできた丸い蕾が開きますと,10花位の花房にな
ります。さく果は長さ1.5p,褐色の毛で覆われています。
 ヤクシマシャクナゲの交配種で,代表的な品種にタイテアン・ビューティー,ゴール
デン・トーチ,サリー・ヒースなどがあります。
 栽培:ホソバシャクナゲに準じます。
 
○ホソバシャクナゲ
 愛知県の鳳来寺山周辺にだけ分布,半日陰の樹林中に自生し,花が上品で美しい。高
さ2.5mまでの常緑低木で,枝をよく分枝します。葉は特徴的で,細く長く15pまで,幅
2p,縁が裏に巻き,新葉は白毛に覆われます。花は5月,初め濃い紅色で,開くと淡
色になります。径3.5pで五裂,上弁の基部に深紅色の斑点を持ちます。前年枝の先の蕾
が開きますと10花前後の花房となります。さく果は長さ1pで,褐色の毛があります。
水を掛け過ぎますと弱りやすく,冬の寒風に晒されると枝が枯れ込みます。
 栽培:繁殖は主に実生,又は挿し木,接ぎ木によります。腐葉土に赤玉土,川砂を混
ぜた用土で鉢植え,庭植えとし,半日陰で管理します。
 
○ヒカゲツツジ
 別名サワテラシ,メシャクナゲとも,関東以西の太平洋岸,四国,九州,屋久島に分
布,日陰の樹林中や崖の斜面などに自生し,淡い可憐な花が珍しい。高さ2mまでの常緑
低木,枝をよく分枝します。葉は披針形で密に互生し,枝先では輪状,両面に円形の鱗
弁リンベンを持ちます。花は4月,枝先から1〜4個出て,淡黄色,広い漏斗状で五裂し,
径3pです。さく果は長さ1p。2〜3の変種があります。
 栽培:繁殖は実生,挿し木によります。若い枝を鹿沼土に挿し,強い光線を避けた木
陰で管理するのが適当です。日に当てて作りますと,木も葉もしまった形となります。
腐葉土を少し混ぜ排水のよい用土で庭植え,鉢植えにして育てて下さい。
 
○洋種シャクナゲ
 1930年頃よりヨーロッパから輸入されてきたシャクナゲの原種,交配種を園芸上洋種
シャクナゲ又は西洋シャクナゲと呼んでいます。この場合,普通にはツツジと呼ぶアザ
レア類やレンゲツツジ系などは除外しています。
 ツツジ属はツツジ,シャクナゲと呼ばれる原種が世界に約700種あり,すべてが北半球
の山地,高地に自生します。これを大別して,葉の裏の鱗片の有無により,有鱗片類と
無鱗片類とに分けています。日本のシャクナゲは主として無鱗片類に入ります。有鱗片
類は改良種も含めて矮性ワイセイのものが多く,ロックガーデン,鉢作りに向きますが,耐
暑性の強いものは少ないです。園芸上の見地からは,圧倒的に無鱗片シャクナゲの価値
が高く,洋種シャクナゲとして日本に入っているものも例外ではありません。
 シャクナゲの園芸化は1810年代にイギリスにおいて始まり,19世紀後半にはドイツ,
フランス,ベルギー,オランダなどに渡り,序でアメリカ,ニュージーランドに及びま
した。過去からの改良種の数は数千種に達しますが,時と人と環境との厳しい選択を請
けて,優れたものが残され,一方で新しい改良種が続々と作出されています。
 栽培:ホソバシャクナゲに準じます。

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