10b 躑躅・皐月・石楠花
 
○サツキ
 関東南部から九州までの各地,屋久島に分布,河川に沿った岩の上や岸壁に自生し,
濃い緑と花が落ち着いた風情を持ちます。高さ1mの常緑低木で,枝が多く,横に広がり
丸い姿になります。若枝は褐色の剛毛を持ち,春葉は線状披針形で,両端が尖り,剛毛
があります。秋葉は倒披針形です。花は5月,枝の先に単生し五裂,広い漏斗ロウト形で紅
紫色,さく果は長さ6oです。
 サツキの園芸化は,江戸時代中期に始まり,現在までに数多くの園芸品種が作出され
ています。近年はマルバサツキ,ツツジ類,アザレア(ベルジアン・アザレア)などと
の交配も行われ,花や樹性などに極めて幅広い変化がみられます。
 花の咲いた形での変化でみますと,一重咲きのものに,並弁(晃明コウメイ),剣弁(光
の司),車咲き(源氏車),光琳咲き(好月コウゲツ),波打ち咲き(華宝カホウ),百合咲
き(大星光ダイセイコウ)などがあります。萼弁ガクベンの変化したものには二重咲き(若山
),袴咲き(獅子牡丹)などがあり,蕊シベが弁化したものには八重咲き(紅万重コウマンエ
),丁字咲き(紫竜シリュウの舞)などがあります。花弁の変化したものには糸咲き(金采
キンサイ),切れ咲き(幸サチの華ハナ),花弁が完全に退化した蕊咲き(唐糸カライト)などがあ
ります。
 花の大きさで分けますと,小輪(5p以下,晃山コウザンの月),中輪(5〜7p,一生
の春),大輪(7〜10p,朝日),巨大輪(10p以上,万華バンカ)に区分できます。
 葉の特徴で分けますと,並葉(晃山コウザン),斑入り葉(真如シンニョの月),細葉(長寿
宝チョウジュホウ),丸葉(十六夜イザヨイ),巻葉(雪中セッチュウの松),角葉(鹿山カザン),覆
輪(紫富士)などがあります。
 重要な観賞のポイントである花は,特に「芸」という花柄があり,無地,底白,覆輪,
絞りの基本が組み合わさって千変万化の花柄になり,多いものでは1本の木に7種以上
の芸をみます。花柄で分けてみますと,赤無地(大正錦),白無地(博多白),紫無地
(夜桜),トキ色無地(晃山),爪紅(青晃セイコウの月),爪白(高嶺の雪),覆輪(如
峰山ニョホウザン),覆輪絞り(好月),底白(秋月シュウゲツ),絞り底白(麗光レイコウ),大絞
り(寿姫),小絞り(護美錦ゴビニシキ),半染め(松鏡),玉斑(八咫ヤタの鏡),地合(
日光),地合絞り(山の光),暈ボカし(貴公子),微塵絞り(上カミの山麒麟),竪絞り
(千代の月),伊達絞り(松波),吹き上げ(白富士),蛇の目絞り(楠玉クスダマ),吹
掛け絞り(旭の香),底白半染(愛国),覆輪底白(浮雲の月),玉斑絞り(玉鏡)な
どがあります。
 庭木向きのものとしては,大盃オオサカズキ(紫紅色),紫竜の舞(紫紅色,八重咲き),
博多白(白無地)などが多く用いられています。
 栽培:繁殖は実生,挿し木,固定品種は挿し木によります。腐植質を混ぜた壌土で庭
植え,腐葉土に鹿沼土か川砂を混ぜた用土で鉢植えにして育てて下さい。
 
「ツツジ・サツキの育て方」
○性質
 ツツジ類は浅根性で土の湿度を好みますが,停滞水は好みません。土質として肥沃な
軽い土がよく,弱酸性土に適します。普通日当たりを好みますが,サツキなど比較的耐
陰性に富む種類もあります。
○苗の植え付け
 植え付けは,落葉性ツツジは萌芽ボウガ前の3月から花の直後にかけてが適期,常緑性
ツツジも同様ですが,ほぼ周年扱うことができます。
○用途と仕立て方
 常緑性ツツジの多くは,単植,又は列植して刈り込み仕立てにします。クルメツツジ
など丈の低いものは,通路との境栽(ボーダー)としても多用されています。一方,落
葉性ツツジは萌芽力があまり強くなく,また枝打ちも粗いため,刈り込むことはできま
せんので,自然な樹形で花を楽しむ趣味の花木ということになります。
○管理と手入れ
 常緑性ツツジの整枝の時期は花の直後がよく,それより遅く刈り込みますと花芽をも
失います。また,梅雨明けの頃,根元に藁やピートモスでマルチングをし,乾燥を防い
で下さい。ことに枝が疎らで根際に日が差しやすい落葉性ツツジには効果的です。
○施肥
 1〜2月に寒肥として鶏糞,又は油粕を根元の周りに,2〜3握り程を散播いて下さ
い。
○病害虫
 新芽や蕾ツボミを食害する芯食い虫(ベニモンアオリンガの幼虫),チャハマキムシ,
葉裏から汁液を吸うツツジグンバイムシなどにはスミチオン乳剤を,夏の乾燥期に発生
しやすいアカダニにはマラソン乳剤や各種の殺ダニ剤を散布します。また,病原菌に対
しては,春から秋の間,ダイセンやボルドー水和剤などの殺菌剤を,月一度程散布しま
す。
○苗の殖やし方
 常緑性ツツジは7月頃鹿沼土の挿し床に新梢シンショウ挿しをすれば,容易く発根して苗が
得られます。落葉性ツツジもミストハウスを使えばよく活着しますが,常緑性ツツジほ
どではありません。
○鉢植えサツキの手入れと管理
 ツツジ類の中でもサツキは特に,古くから園芸化されて親しまれてきました。庭園樹
としてもよく利用されていますが,サツキ園芸の主体は盆栽や鉢栽培と言ってよいでし
ょう。
 用土としては微塵ミジン土を取り除いた鹿沼土が最上とされます。鉢替えは10年以内の
若木では毎年,それ以上の成木では2〜3年に一度,3月又は花後に行います。
 剪定は花後速やかに行い,遅くとも6月末までには済ませましょう。
 1年を通じてよく日に当てて管理し,水は鉢土が八分どおり乾いてきたときに,十分
与えます。施肥は花時を避け3月から9月にかけて,油粕に骨粉を加えた置き肥を月1
回の割で与えます。秋も遅くまで肥料が効いていますと,品種によっては幹割れなどの
寒害を受ける原因になりますので注意して下さい。寒さには強いですが,終日鉢土が凍
り続けるようなところでの管理は避けて下さい。
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