10a 躑躅・皐月・石楠花
 
○キリシマツツジ
 別名サタツツジ,鹿児島県大隅半島,薩摩半島の日当たりのよい山地に自生します。
原産地では2m以上の低木ですが,普通は1m前後,密に分枝し,横張りで常緑又は半落
葉性です。4月に開花,1〜3花を枝先につけますが,多花性ですので木を覆います。
花は鮮赤色,緋色からピンクまで多彩で,径2.5pの漏斗ロウト状です。葉は長楕円形か倒
卵状長楕円形で,表面に光沢があります。
 江戸時代から久留米地方において改良されていますクルメツツジは,キリシマツツジ
が母種となって育種されたものとされています。このことは,江戸時代から園芸化され
た江戸キリシマも同様であり,両系統の間には大差はありません。1920年,ウィルソン
はクルメツツジの中から50種を選び,アメリカに持ち帰りました。そして,吾妻鏡(二
重咲き,ピンク)をピンク・パール,日の出霧嶋(一重,ルビー赤色)をレッド・フザ
ー,花遊び(一重,小輪,紫紅色)をサルタンなどと英名を付け直して,クルメアザレ
アの名で,その華麗な花の品種を欧米に広めました。しかし,渋さを好む日本では,公
園や遊園地などを除き,一般の普及率は低いです。
 クルメツツジの園芸品種にはこのほか,諸笑窪モロエクボ(淡紅白色系),春の曙(帯紅
白色系),雛鶴(ピンク系),末摘花スエツムハナ(鮮紅色系),養老(白色系),歓喜(鮮
紅色系),桜小町(淡朱色系),稚児の舞(淡紫紅白色系),今猩々イマショウジョウ(濃朱色
系),昭和の譽(白地に淡紅色系の覆輪),福寿(濃紅色系)などがあります。
 栽培:日当たりがよく,水はけのよい土ですと極めて丈夫に育ち,花つきが良いです。
庭植えは刈り込みが効くので,形を作りやすいです。鉢作りでは苗は素焼鉢を用い,成
木には丸形で深めの専用鉢を使います。樹形は自然作りのほかに,傘作りや見台作りと
します。栽培管理はサツキに準じます。繁殖は新しい枝を鹿沼土に挿して下さい。さく
果を採って播種ハシュするときは,ミズゴケ上に播いて下さい。
 
○ミヤマキリシマ
 九州の山地に分布,日当たりのよい草原や礫レキの多い傾斜地に自生し,よくしまった
木に可憐な花をつけます。山頂近くで露出しているところでは50pまでの半落葉小低木
で,枝を密につけ横に広がる性質を持ちます。春葉は倒卵形から楕円形で,長さ2p,
秋葉は匙サジ形で小さいです。葉の両面に剛毛があります。花は5月頃枝先に2〜6花を
つけ,径2pで開いた漏斗ロウト状,色は普通紅紫色です。さく果は長さ5oの卵形です。
70以上の品種が知られていますが,その殆どが野生種から選抜されたものです。
 栽培:繁殖は実生,挿し木によります。固定品種のときは挿し木にして下さい。平地
では夏の高温にやや弱いです。ロックガーデン,庭植えでは通気性,排水性のよい土に
植えます。鉢植えは素焼鉢で育て,玉作りや自然作りにします。
 
○ウンゼンツツジ
 本州中部以西,四国,九州に分布,山地の岩が多い日陰の樹林中に自生し,小さな葉
に見合う小花が愛らしい。高さ2mまでの半常緑小低木,枝は先端部のところで分枝しま
す。春葉は長さ1pの長楕円形で先が円いです。秋葉は小型で冬には一部が残ります。
花は4〜5月に咲き,径1.5p,上弁に濃紅色の斑点を持つ白色か淡紅色花で,枝先の芽
に1〜2個つきます。雄蘂,雌蘂が花弁より突出します。さく果は長さ5oです。地域
的にコメツツジとの混同があります。
 栽培:繁殖は実生,挿し木によります。腐植質の多い排水のよい壌土で庭植え,保水
と排水のよい用土で鉢植え,盆栽とします。
 
○レンゲツツジ
 北海道西南部から本州,四国,九州までの山地や丘,高原に分布,日当たりのよいや
や湿度のあるところに自生します。2m位までの落葉低木でよく分枝し,葉は長楕円形か
倒披針トウヒシン形で,表面はゴツゴツしています。5月頃枝先に6〜10花の花房をつけま
す。花は径7.5p,漏斗ロウト状五弁で,普通朱橙色ですが濃紅色から黄色まで幅がありま
す。黄色のものをキレンゲツツジと呼び,庭植えとします。さく果は長さ2p,実生し
て4〜5年で開花します。キレンゲツツジを蒔きますと,黄色以外にオレンジ色のもの
が分離します。
 栽培:根が乾燥しますと弱りやすいので,半日陰の庭植えか大鉢で作ります。繁殖は
ミズゴケ上への実生,鹿沼土への挿し木にして下さい。
 
○アザレア
 和名セイヨウツツジ,別名オランダツツジ,中国,日本の原種を基に,イギリス,フ
ランス,ベルギー,オランダにおいて改良され,明治25年頃に渡来,主に温室植物とし
て育成されたものです。花が大きく豊かで見事です。常緑低木で,葉は長さ2〜5pの
楕円状披針形,株立ちしてよく分枝します。花は5月に開花し,径7pで白色,桃色,
淡紅色,赤色,また覆輪,八重などと変化が多いです。促成栽培して秋から春までの鉢
物として多く利用されます。最近はこれにクルメツツジの血を入れた耐寒性のあるアメ
リカ系アザレアもあります。
 栽培:固定品種の繁殖は挿し木をし,伸びた緑の枝先を用います。腐植質に砂質壌土
を混ぜ,鉢植え,庭植えにします。
 
○エクスバリー・アザレア
 1870年代からイギリスのナップヒル園芸場を中心に,中国産,アメリカ産,日本産の
レンゲツツジなどの落葉性ツツジを交雑したナップ・ヒル・アザレアが作出されました。
この品種を導入して,エクスバリー園芸場のロスチャイルドが精力的に更に改良,普及
を進めたのでエクスバリー・アザレアと名付けられました。花がツツジ形で,花房がシ
ャクナゲに近いです。
 栽培:レンゲツツジと同様でよく,名称付きの繁殖はすべて挿し木によります。
 
○ミツバツツジ
 千葉県から関西東部までの本州中部に分布,低い山地や丘に自生し,華麗に一面に花
をつけます。高さ2mで芽は粘質,枝は車輪状に出ます。葉は枝先に3枚ずつ生じ,広い
菱形又は広卵形で先が尖り,基部は円いです。上面に褐色の毛があり,下面には網状脈
が著しい。花は4月,枝先に2〜3個生じ,径3〜4pで淡紅紫色,雄蘂の5本が特徴
的です。上弁に斑点のないものが多く,さく果は長さ1pでやや曲がります。
 栽培:繁殖は実生,根伏せとし,挿し木は難しいです。早春に花を開き庭を飾ります
が,植栽ものは少ないようです。日当たりが強すぎますと葉焼けを起こしやすいです。
乾燥には強いですが,腐植質を混ぜた排水の良い用土で庭植えにします。
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