10 躑躅・皐月・石楠花
 
             躑躅・皐月・石楠花シャクナゲ
 
                  参考:世界文化社発行「世界文化生物大図鑑」
 
[ヒメシャクナゲ]
 北半球の寒地又は高山帯に自生,ミズゴケなどの生えた湿地に株立ちして群落を作る
常緑小低木で,花が可憐で美しい。地下茎から枝を直立し,高さ15p,葉は縁が裏側に
巻き込み,線形で互生,長さ1.5〜3.5pで裏面は白色です。低地では4月中旬から開花
し,枝先から数個,径6oの壷型で紅色を帯びた白花が垂れて下向きに咲きます。さく
果は球形で径3〜4pです。
 栽培:繁殖は花後に枝先を採り,新鮮なミズゴケに挿し木する。日光によく当て,通
風をよくし,また秋には十分に肥培し,冬は乾いた寒風を避けて下さい。鉢植えのとき
も,新鮮なミズゴケだけを用い,腐葉などは混ぜないで下さい。
 
[ドウダン類]
○ドウダンツツジ
 本州中部から九州に分布し,日当たりのよい山地,明るい樹林中に自生,秋の紅葉が
美しい。高さ3mまでの落葉低木で,幹は滑らかでよく分枝し,枝の先に数葉が密に互生
し輪状につきます。葉は倒卵形で基部は楔クサビ形,花は5〜6月,白色で3〜10個が房
になって枝先より下垂,形は壷状,花後,上向きにさく果をつけます。葉の広い変種を
ヒロハドウダンツツジといいますが区別は困難です。生け垣作りや,玉作りにして並べ,
庭の縁ヘリに用います。
 栽培:繁殖は実生,挿し木によります。挿し木で活着しにくいときは,根伏せにしま
す。刈り込むとよく芽を吹きますので,目的に合わせた木の姿に仕立てられます。腐植
質の多い土壌で水はけよく,また小株は鉢植え,大株は庭植えにします。
 
○サラサドウダン
 北海道から関西までに分布し,湿気のある日当たりのよい山地に自生し,美しい更紗
サラサ模様の花をつけます。高さ4〜6mの落葉低木で,幹は滑らかな灰色で密に枝を出し
ます。葉は楕円形で枝先に輪状につき,葉先は尖ります。花は6〜7頃,前年枝の先に
つきます。短い鐘形で長さ5〜10o,淡黄色に紅の筋が入り,枝先から8〜15花が群が
って下垂します。株によって花の色は濃淡の差があります。さく果の中の種子は淡黄白
色で棒状,変種にベニサラサドウダン,カイナンサラサドウダンがあり,白花品種はシ
ロバナフウリンツツジといいます。
 栽培:繁殖は実生ミショウ,挿し木,取り木によります。日当たりのよい,適当な湿度の
あるところを好みます。別段土を選びませんが,腐植質の多い壌土で庭植えにします。
腐植質に川砂を混ぜ排水よく作って下さい。
 
[アセビ]
 別名アセボ,本州(宮城県,山形県以西),四国,九州に分布し,山地の斜面,日当
たりのよい草地などに自生します。庭園木として栽培され,木の姿がよく,花が可憐で
す。高さ1〜3m余の常緑低木で,葉は倒披針トウヒシン形で密に互生し,上面は濃緑色,滑
らかで光沢を持ちます。早春,壷形で白色の小花を枝先から10〜15pの穂状スイジョウに下
垂します。有毒植物。赤花のベニバナアセビ,葉の非常に美しいヒマヤラアセビなど,
品種ではクリスマス・チアー,バンド・チャンドラーなどがあります。
 栽培:繁殖は実生,取り木,挿し木によります。実生では年月を要しますので,普通
春に挿し木します。湿気のある半日陰が適当,また日当たりのよいところでも湿気があ
ればよいでしょう。特別な管理は不要,強い剪定が可能です。腐植質の多い壌土で庭植
え,鉢植えにして育てて下さい。
 
[ツツジ類]
○オオムラサキ
 本州東京以西から九州の庭園に多く栽培されている園芸品種で,鮮やかな彩りで庭を
飾ります。高さ2mの常緑低木で,横に多く広がる性質があります。枝は下部からもよく
出て枝分かれし,若枝には褐色の剛毛を持ちます。葉は互生し,長い楕円形で両端が尖
り,長さ6〜9p,初め両面に短い剛毛がありますが,上面は後に消え,裏面の主脈上
に長短毛が残ります。花は5月に咲き,径6〜7pで五弁に切れ込み紅紫色,雄蘂は10
本,さく果は長さ1pです。極めて生長がよく,丈夫で管理がしやすいです。
 栽培:繁殖は実生,挿し木によります。発根が容易で春挿したものが秋には鉢に採れ
ます。腐植質の多い壌土で庭植えにします。
 
○リュウキュウツツジ
 別名シロリュウキュウツツジ,普通,人家に栽培されていますが,原産地は不明です。
高さ1〜2mの半落葉低木で,花が清楚で美しい。若枝には剛毛があり,春葉は倒披針
トウヒシン形で両端が尖ります。両面に軟毛がありますが,上面のものは後に落ちます。秋葉
は春のものより細く,先は尖りません。冬に秋葉が残り,裏に巻いて直立します。花は
5月,枝先に2〜3個つき,五裂,純白色で径5〜6p,さく果は長さ1pで長卵形で
す。
 栽培:繁殖は実生,挿し木によります。挿し木は6月頃に枝を10〜15pに切り,5p
位を鹿沼土に挿しますとよく発根します。極めて丈夫で作りやすく,腐植質の多い壌土
で庭植えにします。
 
○ヒラドツツジ
 長崎県平戸市を中心に栽培されている園芸品種の総称で,昭和26年以降農林水産省園
芸試験場と地元関係者により優良個体の選択と命名がなされ,約300種が知られます。オ
オムラサキ,リュウキュウツツジ,シナノサツキ,ケラマツツジ,モチツツジなどの複
雑な交配から作出されたらしい。常緑低木で,葉は披針ヒシン形で光沢があり厚い。花は4
〜5月に咲き,径6〜12p,花色は白,桃,朱,淡紫,紫のほか中間色の段階がありま
す。花後にさく果をつけます。耐寒性はやや乏しく,暖地では樹性が強く,排気ガスに
強いとされています。
 園芸品種に舞姿(濃い桃色系),曙(淡紅色で底が桃色)などがあります。
 栽培:繁殖は挿し木によります。腐植質の多い壌土で庭植えにします。
 
○モチツツジ
 山梨県,静岡県から岡山県までの本州,四国に分布,酸性で粘土質の崖や傾斜地に自
生し,野生味のある花が美しい。高さ3mまでの半落葉低木,枝の伸びやすく,軟毛を密
生します。春葉は広楕円コウダエン形,秋葉は倒披針形,冬は枝先に残った葉が裏面に巻い
て線形となります。花は5月に咲き,径6pで淡紅紫色,上弁には紅色の斑点を持ちま
す。萼ガクは長さ3pで粘液の腺毛センモウを密生,さく果も毛を帯びます。
 園芸品種にセイガイツツジ,胡蝶揃コチョウゾロイ(淡黄緑色),駿河万重スルガマンエ,花車(
紫色)などがあります。
 栽培:繁殖は実生,挿し木によります。挿し木は6月頃枝が伸びきったものを挿して
下さい。用土は選びませんが,腐植質の多いもので庭植えとし,排水の良い土で鉢植え
します。
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