09 桜草
桜草
参考:世界文化社発行「世界文化生物大図鑑」
サクラソウ属は世界に約500種あり,日本産原産のサクラソウやクリンソウと,西洋サ
クラソウと呼ばれる外国産のグループとに大別できます。その殆どが北半球に分布し,
特に多いのはヒマヤラから中国雲南にかけてです。この属の植物は多年草でして,根茎
で越冬します。葉は根出し,有柄又は無柄で,へら形,倒卵形,楕円形,円腎エンジン形な
どがあります。花期は低地では春,高山では初夏に根茎より花柄カヘイを出して散状又は頭
状の花序をつけます。この属は雄蘂オシベ,雌蘂メシベの位置によって受精作用が異なる異
型花柱花植物で,短柱花の雌蘂と低位置の雄蘂,又は長柱花の雌蘂と高位置の雄蘂は受
精しますが,異型間はうまく受精しない場合が多いです。
サクラソウ(桜草/サクラソウ科の多年草)は,日本では各地の低湿地に野生種があ
り,また古くから栽培され,多くの園芸品種が作り出されました。高さ20p,株に軟毛
があり,葉は根出し,卵状長楕円チョウダエン形で,長い柄があります。葉の表面に皺シワがあ
り,縁に浅い欠刻と不揃いの歯牙シガがあります。花期は4月,花茎を伸ばして5〜15花
を散形につけます。花は径2〜3pで,普通は淡紅色ですが濃色,淡色,白色,紅紫色
など変化に富みます。江戸時代の中頃より園芸草花として発達し,文化・文政の頃には
多くの品種が作られました。しかし長い年月の間に品種が混乱し,正確な数は不明です
が,約300品種と言われています。園芸品種の分類や同定には花形が特に重要でして,花
柱形,花弁の幅と形,花の咲き方,花色などで分けます。
園芸品種には次のようなものがあります。
漁火イサリビ:花柱形は短柱花,広いかがり弁の浅抱え咲きで横向きに咲く大輪種です。花
弁の裏側は桃色,表は曙白色,繁殖力は強いです。
獅子頭シシガシラ:花柱形は短柱花,重ね浅かがり弁で浅抱え咲きの大輪種,3倍体です。
花弁の裏側は紫色,表は紫色の底白,江戸時代後期に作出された。
十二単ジュウニヒトエ:花柱形は長柱花,広い浅かがり弁で,深抱え咲きの大輪種です。花弁
の裏側は紅色,表は曙白色,江戸時代後期に作出された。
北斗星:花柱形は短柱花,かがり弁の平咲きで受け咲きの小輪種です。花弁の裏側は桃
色,表は緋色で底紅色の小型が可愛いらしい花です。昭和10年頃に作出された。
目白台:花柱形は短柱花,質の厚い重ねかがり弁,平咲き受け咲きの大輪種です。花弁
の裏側は桃色の暈ボカし,表は白色,昭和2年頃に作出された。
その他の園芸品種に,玉光梅ギョッコウバイ,青葉の笛,絞竜田シボリタツタ,南京ナンキン小桜,田
島白タジマジロ,蛇の目傘,大江戸オオエド,神代カミヨの冠カンムリ,鹿島カシマ,夕陽紅ユウヒベニ,
紫雲竜シウンリュウ,三保ミホの古事コジなど
○栽培の概要
栽培は容易です。排水良好で保水力のある用土に植えます。花が終わった後,新しい
根茎が表面近くに出ますので増土をして下さい。11〜2月頃に植え替え,繁殖は芽分け
によります。
クリンソウ(九輪草)は,原産地は日本〜台湾,高さ40〜80p,山中の谷間に生えま
す。花が3〜6段に輪生しますので,この名が付きました。全株無毛,葉は膜質で倒卵
状長楕円形,葉縁に不整の鋸歯があります。
○栽培の概要
サクラソウに準じますが,クリンソウは葉が大型ですので水切れに注意して下さい。
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