08 朝顔
 
                朝顔
 
                  参考:世界文化社発行「世界文化生物大図鑑」
 
                   ※植物の蔓ツルの巻き方の左右は,上から眺め
                   たときの見方をいいます(なお,ネジや動物
                   などの巻き方は進行方向(下から見る)によ
                   ります)。
 
 アサガオ(朝顔/ヒルガオ科の蔓性一年草)は,古名を牽牛子ケゴシといい,東南アジ
ア原産といわれ,奈良時代末期に種子が薬用として中国から渡来しました。江戸時代に
入り,観賞用としての改良が飛躍的に進められました。
 蔓は左巻きで,花は7〜10月,早朝に開いて午前中には凋シボみます。今日一般的に栽
培されているのは主に大輪アサガオの系統でして,花径10〜25p,花色は多彩で変化に
富んでいます。葉の形には雁葉カリバ,千鳥葉チドリバ,蝉葉セミバなどがあり,葉色には青
葉,黄葉,斑フ入り葉があります。品種には,スカーレット・オハラを始め,矮性ワイセイ系
のサンスマイル(斑入り葉各色),キャロル(青葉各色),小葉小輪のつばめ朝顔,早
生ワセ種のアーリー・コールなどがあります。
 仕立て方には行燈アンドン作り,螺旋ラセン作り,切り込み作り,盆養切り込み作り,数咲
き作り,肥後アサガオの小鉢作りなどがあります。
 
○栽培の概要
 アサガオ類の播種ハシュは5月です。種子は大きくて艶があり,充実したものを選び,水
を吸わせてから播いて下さい。種皮の一部に軽く傷をつけてから播きますと発芽が揃い
ます。早朝から夕方までよく日が当たり,しかも風通しのよいところを好みます。鉢栽
培においては,常に鉢内の土を乾かし気味にするのがコツです。
 
○変化アサガオ
 変化アサガオは,江戸時代に改良発達した花や茎葉に著しい変化のある特殊なアサガ
オの一群でして,日本独特の珍しい園芸植物です。桔梗キキョウ咲き,采サイ咲き,台咲き,
車咲き,獅子咲き,牡丹ボタン咲き,木立コダち,帯化茎タイカケイなど,とてもアサガオとは
思えないものがあります。複雑な変化をみせる牡丹咲きの系統や獅子咲きは,雄蘂オシベ,
雌蘂メシベが退化又は弁化して種子ができません。これらは変化咲きの遺伝因子を持つ親
株の種を蒔いて,その出現を待ちますので,品種の維持継続は,ある程度の栽培面積と
非常な根気と情熱,及び鋭い観察眼がなければできません。変化アサガオの栽培は,文
化・文政期を頂点に,以後各地で流行したこともありますが,今日においてはごく一部
の愛好家と,研究家がその系統を保存しているにすぎません。
 
○アサガオの育て方
 アサガオの鉢栽培には行燈アンドン作り,螺旋ラセン作り,切り込み作り,盆養切り込み作
り,数咲き作り,肥後アサガオの小鉢作りなどの仕立て方がありますが,一般的に行わ
れるのは行燈作りです。
 どの仕立て方でも言えることですが,特に行燈作りは小さな葉,細い蔓,大きな花が
理想でして,そのために,人によってはいろいろなやり方があります。ここでは誰でも
できる易しい行燈作りの仕立て方を紹介します。
(1)播種ハシュと苗の育て方
 品種は青斑入り蝉葉の中から選ぶとよいでしょう。アサガオの発芽適温は25℃前後と
高いので,種子を入手しましたら,東京周辺でしたら5月5〜10日頃に蒔きましょう。
 発芽を揃え,発芽を早くするため芽切りをして下さい。これは種子のへそ(胚ハイ)の
部分を避けて,種皮の一部にサンドペーパーか鑢ヤスリ,小刀などで軽く傷をつけます。芽
切りした種子は水を入れた皿に一晩並べて置きます。翌日,水を吸って膨らんだ種子を
径9pのポリポットに1粒ずつ蒔きます。高級な品種は発芽率はよくありませんので,
これらの作業は必ず行って下さい。
 用土は赤玉土3,腐葉土2,川砂2の割合で作り,種子の胚の部分を上にして蒔き,
少し覆土して下さい。蒔いたら静かに潅水し,発芽するまで用土が乾かないようにしま
す。
 4〜5日で発芽しますので,日当たりと風通しの良いところに置きます。なお,ポリ
ポットの用土を乾燥気味に保ちますと徒長しません。発芽後,肥料として油粕をポット
の縁に置き,ごく薄い液肥(ハイポネックスなど)を与えます。
(2)鉢植え後の手入れ
 本葉が3〜4枚開き,根が廻ってきましたら,7号の丹波鉢か,駄温鉢に植え替えま
す。用土は赤土(又は荒木田土)2,腐葉土3,粗めの川砂1の割合で混ぜ,微塵を抜
いて,有機質に富み排水のよいものを用います。又は市販のファミリーソイル(又はバ
ーミキュライト)4,バーク堆肥4,粗目砂2の割合で配合したものや,キク栽培に用
いた培養土でもよいでしょう。
 肥料は油粕2,骨粉1を混ぜたものを小匙1杯ずつ2ケ所に置き,10日毎に与えます。
元肥として,緩効性の化学肥料を小匙1〜2杯を用土に混ぜて置いてもよいでしょう。
 梅雨が明けましたら,ごく薄い液肥を毎日1回夕方,潅水代わりに与えますと蕾ツボミ
が肥ります。蕾ができてから約3週間で開花しますので,液肥は開花前5〜6日までと
し,あとは水やりだけにします。
 潅水は,梅雨明けまでは朝1回,梅雨明け後の高温時や開花期には朝夕又は1日数回
行い,萎らせないようにして下さい。鉢は,日当たりと風通しの良いところに棚を作っ
て置き,その上で管理します。
(3)摘芯と誘引
 本葉が8〜9枚になったら,5〜7を残して摘芯して下さい。摘芯後に出る子蔓は3
本だけ残して,掻き取ります。子蔓の葉が4〜5になったら,蕾のある良い蔓を選び,
他は切り取ります。残した1本は急に伸び始めるので,市販の行燈作り用支柱を立てて
左巻きに絡ませます。下段に2/3,中段に2/3巻き,上段に達したら芯を止めます。下段,
中段とも1/3を空けるるのは,葉が密生したとき見苦しくなるからです。
(4)病害虫
 病害虫は割に少ないですが,予防としてダイセン,ベンレートなどを散布し,アブラ
ムシ,ハダニの防除にはエカチン,オルトラン粒剤を用いて下さい。

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