04 花形と斑入り葉
 
               花形と斑入り葉
 
                  参考:世界文化社発行「世界文化生物大図鑑」
 
 ○花形
 園芸植物には,野生の植物にみられない花の咲き方や模様があります。この花の咲き
方や模様を花形ハナガタといい,サツキ,キク,シャクヤクなどの人気種には特に特有の形
と名前がありますが,ここでは一般的な花形を挙げてみましょう。
 (1)一重ヒトエ咲き
 一重咲きはシングルともいい,数枚の花弁ハナビラが一重に円く並んでいるものです。
 (2)八重ヤエ咲き
 八重咲きはダブルともいい,花弁が本来のものより増えたものです。一般に雄蘂オシベ
や雌蘂メシベが弁化しているもので,受精力がありません。このため八重咲きの植物は,
普通は挿し木や株分けで増殖しますが,ストックなどで試みられているように,一重或
いは半八重同士から八重咲きができる組合せを選択します。
 花弁の増え方によって,半八重(セミダブル)咲き,千重センエ咲き,万重マンエ咲きなど
と言います。
 (3)カクタス咲き
 カクタス咲きは八重咲きの一種でして,剣弁が重なり合って咲くクジャクサボテンな
どの咲き方を想わせるので,カクタス咲きの名が当てられており,大輪の花に多いです。
例えば,ダリアなどでよく知られております。
 (4)ポンポン咲き
 ポンポン咲きは八重咲きの一種でして,円い小さな花弁が密に重なり合います。中輪
や小輪が多く,ダリアやヒャクニチソウが代表的です。
 (5)丁字チョウジ咲き
 丁字咲きは,花筒は細い管状で花弁があり,横方向から見ますと丁字状に見えますで
すので,その名が付いています。チョウジザクラのように一輪でもチョウジの名が付い
ていますが,キク科などでは花弁が塊って丁字状になることがあります。
 (6)管クダ咲き
 管咲きとは,花の中・下部が細い管状をなした花をいいます。丁字咲きに似ています
が,花弁は上向きで,展開しません。キクの「管物」が代表的です。
 (7)アネモネ咲き
 アネモネ咲きは,外側の花弁が数列並び,中心部の筒状花が長くなく,先が展開しな
いものです。
 (8)二重ニジュウ咲き
 二重咲きは二重フタエ咲きともいいます。萼ガクが花弁のようになっていて,花の中から
花が咲き,花が重なって咲くように見えます。
 (9)魚子ナナコ
 魚子とは,花弁が小さく,雄蘂,雌蘂が目立つように咲くものをいいます。キク,フ
クジュソウなどが代表的です。
 (10)剣弁ケンベン
 剣弁とは,花弁が細く,先端が尖っているものです。
 (11)丸弁マルベン
 丸弁とは,花弁の先端が円いものをいいます。
 (12)覆輪フクリン
 覆輪とは,花弁の縁沿いに帯状の模様が入るものをいいます。
 (13)底白ソコシロ
 底白とは,花の中央の筒状の部分が白いものをいいます。
 (14)蛇の目ジャノメ
 蛇の目とは,円形の斑フが重なって,蛇の目模様になったものです。
 (15)絞シボり
 絞りとは,花弁に不規則な筋状の色が混ざり合ったものをいいます。サツキなどでは
これを更に細かく分けて,鹿の子カノコ絞り,荒アラ絞り,伊達ダテ絞りなどといいます。
 (16)ブロッチ
 ブロッチとは,パンジーやシクラメンなどの花弁上の,特に色の濃い,大きめの斑点
ハンテンのあるものをいいます。
 (17)斑点ハンテン
 斑点とは,ツツジやヤマユリなどの,花の内側の色の濃い点をいいます。
 
 ○斑入り葉フイリバ
 斑フ入り園芸植物は,日本の伝統園芸の大きな特徴の一つでして,江戸期からの品種も
少なくありません。斑入りを「柄ガラ」,斑入り植物を「柄もの」と呼んで珍重します。
 一般に斑入りとは,1枚の葉に2色以上の色があることをいい,同色の濃淡のものも
含まれます。カラジュームやハボタンなどの紫紅色の斑紋ハンモン,シクラメンやカンアオ
イ類の淡緑色から銀白色の斑紋も斑入りとして扱います。狭義で用いる場合は,葉の一
部の細胞に葉緑素が出来ないために現れる黄色から白色の斑紋をいいます。
 斑入りには,遺伝的な斑と,ウイルスによる病斑,更に栄養不足による斑とがありま
す。遺伝的な斑は境がはっきりしていて,斑が拡大することはありませんが,他の斑は
境がはっきりせず,時間の経過とともに境が変化します。
 遺伝的な斑は,遺伝子による斑と,細胞質に由来する斑とに大別できます。細胞質に
よる斑は,実生ミショウでは伝わりませんので,挿し木や株分けによって殖やします。
 (1)覆輪フクリン
 覆輪とは,葉縁に沿って斑の入るものをいいます。斑の幅によって深覆輪フカフクリン,糸
イト覆輪などに分けます。斑と地の境界が不明確なものを覆輪くずれといいます。斑が白
いものは白覆輪とか銀覆輪といい,黄色のものを黄覆輪又は黄金覆輪といいます。
 (2)爪斑ツメフ
 爪斑とは,葉の先端の両側にだけ斑のあるものをいい,爪白ツマジロともいいます。
 (3)中斑ナカフ
 中斑とは,覆輪の逆で,葉の中央部に大きな斑が入っているものをいいます。単子葉
植物においては,内斑ウチフといいます。
 (4)切斑キリフ
 切斑とは,葉の真ん中を境にして,半分が緑色,半分に斑が入るものをいいます。
 (5)ぼた斑
 ぼた斑とは,葉のところどころに不規則な斑が入ったものをいい,更紗サラサともいいま
す。斑の大きさによって,大きい斑のものからぼた斑,星斑,砂子スナゴ斑,霜シモ降りと
に分けますが,明確な基準はありません。
 (6)松島マツシマ斑
 松島斑とは,緑色の葉に濃緑色の斑が,松島の島のように点在します。
 (7)三色サンシキ斑
 三色斑とは,ミイロフともいい,緑地に白と濃緑色の斑が入って3色になっているも
のです。
 (8)胡麻ゴマ斑
 胡麻斑とは,白色から黄色の地に緑色の細かい点の入るものをいいます。霜降りや砂
子斑とは逆です。
 (9)掃ハけ込み斑
 掃け込み斑とは,双子葉植物の葉の中肋チュウロクから縁に向かって,刷毛で掃いたように
斑の入るものをいいます。
 (10)蹴ケ込み斑
 蹴ケ込み斑とは,葉の縁から中肋に向かって,刷毛で掃いたような斑が入りますが,中
肋には届かないものをいいます。
 (11)網アミ斑
 網アミ斑とは,双子葉植物の葉脈に沿って斑が入るものをいいます。
 (12)角カク斑
 角斑とは,単子葉植物の葉脈に沿って,不規則な長方形の斑が縦に(沢山)入るもの
をいいます。
 (13)縞シマ斑
 縞斑とは,縦タテ斑とか縦縞斑ともいい,単子葉植物の平行な葉脈に沿って縦筋の斑が
縞模様を作ります。斑が両縁にあるものを外斑(覆輪とも),中央に1本だけのものを
内斑,葉縁の一方だけに入るものを正宗マサムネといいます。
 (14)横ヨコ斑
 横斑とは,緑地に斑が横に入るものをいい,段ダン斑とか横縞ともいいます。
 (15)虎トラ斑
 虎斑とは,葉に不規則に入る横斑のことで,黄色の斑を虎斑,白色のものを鼈甲ベッコウ
と区別することもあります。
[次へ進む] [バック]