02 園芸植物とは
園芸植物とは
参考:世界文化社発行「世界文化生物大図鑑」
○人類に役立つ形質の作出
原始の人々にとって最も重要なことは,まず身を守ることと,食べることであったで
しょう。そして,食べられるものは総出で集めました。集めた種子がこぼれ,又は捨て
られた種子や株の残りから芽が出てきたので,住居の側において植物を育てる方が,山
野から集めるよりも効率的であることを知りました。これが「園芸」の第一歩でありま
した。
更に進んで,植物の特性を掴み,植え育てる技術を習得し,やがて野生の植物を栽培
することができるようになりました。最初は食用になる植物の栽培から始まって,次第
に生活用品の材料や薬用,さらに人間にいろいろと役立つ植物へと,広がっていきまし
た。こうして人類が覚えた野生植物の栽培は,安定的に収穫を得るために,特別な栽培
方法の確率へ,また多く収穫できる系統を選択して栽培することへと進んできました。
それはつまり長い栽培の経験のなかから,種シュの小さな変移を発見し,人間により役立
つ植物の系統を作り上げるという歴史でありました。
さらに,野生の植物の利用できる部分を,目的に合うように,人為的な働きかけや選
択を繰り返して,当該植物を異常発達させる改良が進みました。例えば,リンゴやナシ
など果樹類の果托カタクや果肉の巨大化,ハクサイやキャベツなど蔬菜類の葉枚数の増加と
肥大化,ダイコンやニンジンなど根菜類の根や地下茎の肥大化などがそれです。
栽培化への道は,植物の器官,組織の肥大化に止まらず,他の性質,すなわち気候や
土壌への順応力の強いもの,発芽率のよいもの,成熟日数の短いもの,脱落しにくいも
の,病虫害に強い性質のものなどをも考慮しつつ,改良されてきました。
○利用から観賞へ
採取から栽培へと進んだ野生植物の園芸植物化は,食べることから,生活用品として
利用する材料や薬用などとして栽培し,その後生活にゆとりがでてくるにつれて,草花
や庭木などの観賞植物への関心に移っていきました。
次第に植物の栽培法や繁殖法が確立して,なるべく美しい花の株からは種子を採り,
枝変わりのものは挿し木で殖やし,山野を駆けめぐって珍しいものを集めるなど,とい
う操作が行われてきました。すなわち品種の改良選択と交配,突然変異の固定などに因
って,野生種とは全く別の植物と見まがうばかりのものが,作出されるようになりまし
た。
続いて新大陸の発展と生活圏の拡大,輸送手段の発達などにより,遠隔地の植物が容
易く手に入るようになり,異国情緒溢れた珍奇な植物として栽培されるようになりまし
た。そこから選択をした園芸品種を生み,さらに園芸品種同士の交配や,それらに新た
な原種を交配して数多くの美しい園芸品種が生み出されました。例えばアフリカのタン
ザニアにおいて発見されたセントポーリア・イオナンタとセントポーリア・コンフーサ
を中心にした数種の交配から,1981年までにアメリカではセントポーリアは4,500以上の
園芸品種が作出,登録されました。未登録のものを含めますと,現在では2万近い品種
があると言われています。
○園芸植物の分類
園芸植物は,広義には観賞植物にほかに野菜,果樹など農作物を含みます。また山野
草や高山植物を移植して楽しんでいる人もいますが,普通,園芸植物は狭義に解釈し,
農作物や山野草とは区別しています。
園芸植物は次のように大別されます。
(1)草花
草花とは,種子を播いたり,苗で殖やす草本類を指し,球根植物をも含みます。種子
を播いて発芽してから1年以内に開花,結実して枯れるものを一年草,播種ハシュ後2年目
に開花して枯死するものを二年草,休眠期には地上部が枯れ地中部分が生き残って翌年
の生長期に再びそこから発芽し開花する多年草などに分けられます。
多年草の中で特に地中に肥大した器官(肥大した部分の種類と形によって鱗茎リンケイ,
球茎,根茎,塊根に分けられます)を持つものを総称して球根植物と呼びます。
(2)庭木
庭木とは,主に庭などに植え込む樹木をいい,必ずしも花が美しいものとは限りませ
ん。カエデ,シイ類やアカマツなど枝振りや葉の茂りを楽しむものや,キャラボクなど
の下木類も含みます。花の美しいものを花木と言います。近年造園界においては,従来
あまり用いられることのなかったクヌギ類などの雑木を活用した雑木庭などが関心を呼
んでいます。
庭木は成木の高さの違いによって,低木,中木,高木と区別し,日射の必要量に応じ
て陰樹と陽樹に区別されます。一年中常に葉を着けている樹木を常緑樹,休眠期に一斉
に葉を落とす樹木を落葉樹と言います。庭木を極端に矮小化ワイショウカして盆栽として観賞
されることも多いです。
(3)観葉植物
葉だけとも限りませんが,主として葉の美しさを観賞する草本,木本類を観葉植物と
言います。鉢植えにして室内に置いたり,温室に植えて楽しむことが多く,熱帯産の植
物を指すように一部では考えられていますが,アオキ,イワヒバ,オモト,ハラン,各
種のシダ類も観葉植物のグループに入ります。特に熱帯産のものを温室植物とか,室内
植物と呼ぶこともあります。
(4)山野草
山野草とは,山野に自生する植物でして,花や葉,実などの美しいものが小作りされ,
日本産の植物ばかりではありません。特に高山や北方の小低木や多年草を高山植物と言
います。
(5)野菜
野菜は,利用される部位によって,果菜類,葉菜類,根菜類に分けられます。料理な
どに使うハーブ(香草類)もこの分野に入れます。最近新しい西洋野菜や中国野菜も市
販され,栽培されるようになりました。
(6)果樹
果樹は,一般的な果樹と,熱帯果樹に大別されます。
(7)水草
水草には,スイレン,ホテイアオイ,ウォーター・ポピーなど水面に浮いて育つ種類
と,タヌキモ,スギナモなど水中に沈んでいる種類とがありますが,水生の植物を一括
して水草と呼んでいます。最近,アクア・アートという新しい水草栽培の楽しみが紹介
されましたが,今後発展が予想される園芸の新しい分野です。
(8)サボテン,多肉植物
サボテン・多肉植物は,どちらも乾燥地に適応した水分の貯蔵器官を持つ植物でして,
葉が退化し,茎が肥大化したタイプか,葉が厚く多肉質になったタイプが多いです。サ
ボテンはサボテン科に属する植物だけを指します。多肉植物はユリ科,ベンケイソウ科,
ツルナ科,ガガイモ科,トウダイグサ科を中心に約50科に及びます。サンセベリアなど
多肉質の葉を持つ種類においては,普通の観葉植物として扱われることもあります。
(9)食虫植物
食虫植物とは,ウツボカズラやモウセンゴケのように昆虫類を捕らえて消化する器官
をを持った植物です。
(10)グランドカバー・プラント
グランドカバー・プラントは,地被チヒ植物とも言います。地面を覆う観賞的効果だけ
ではなく,雑草の生育を押さえ,環境条件の緩和など庭の管理上の効果が大きいです。
また斜面の土流防止などの実用性もあります。利用される植物としてはシバ類,キボウ
シやアジュガなどの多年草,セイヨウキヅタやツルニチニチソウなどの蔓植物,ハイビ
ャクシンなどの低木,広義にはドウダンツツジやサツキなどの刈り込みもグランドカバ
ーに含めます。
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