04c 日本庭園の手法1
 
 △伽藍石ガランイシ
 廃寺などの建物の礎石として用いられた石で,柱を受けるため自然石などの天端を円
形に彫りだし,ときにはその中央に柄穴を穿った形をとります。この伽藍石の持つ品格
が尊ばれ,飛石の役石としての踏分石,つくばいの前石,あるいは景石の一つとしての
拝石オガミイシなどに広く転用されてきましたが,伽藍石には数に限りがありますので,今
日では模刻しています。
 △亭主石テイシュセキ
 内,外露地を分ける中潜りあるいは中門の前後には通常,特別に役割を持つ飛石が打
たれます。外に据えるものを客石キャクイシといい,門を入ったところに据える石を乗越石
ノリコエイシ,この乗越石に続けて茶室寄りに打たれる石を亭主石と呼びます。この3石は他
の飛石より大振りの石を少し高めに据え,このうち亭主石は若干低めに据えます。
 △踏分石フミワケイシ
 飛石が分岐するところでは,一連の飛石よりも少し大形の石を通常据えます。この石
を踏分石と呼び,実用とともに飛石の単調さを破る意匠上の効果をも兼ねます。踏分石
には,例えば伽藍石や碾臼ヒキウス石などを用い,他の飛石よりも天端を少し高めに据えま
す。
 △碾臼石ヒキウスイシ
 種々の穀物を碾くときの石で,主として花崗岩が用いられます。碾臼石はこのほか,
手水鉢など広く利用され,現在では模刻したものが使われています。
 △沢渡石サワタリイシ
 沢飛石ともいい,池泉や流れなどで水際から中島や向岸への逍遥や,連絡のために設
けられた飛石です。常水面より20p程露出させており,水の流れに無理がなく,また歩
きやすいように打ちます。その石の形状や色彩などを考慮して自然に池に浮かび出した
ように配します。
 
 △延段ノベダン
 園路を自然石あるいは切石などを敷き詰めて,舗装することがあります。これを延段
(展段),石段イシダン,あるいは畳石タタミイシなどと呼びます。
  @切石敷:正方形や矩形などに整形した石材を敷き詰めて仕上げます。四盤敷(四
   半敷),布石敷などがあります。
  A玉石敷:玉石などの自然石を巧みに組み合わせて仕上げたもので,狭義の延段で
   す。玉石敷には,霰アラレこぼし,霰崩しなどの手法があります。
  B寄石敷ヨセイシジキ:大小様々な加工石を組み合わせるもので,矩の手カネノテ目地や氷文
   目地などがあります。玉石や瓦なども混ぜて敷きます。
 △敷石シキイシ
 敷石とは平らな地面に石を敷き詰めたものですが,園路においては敷石道,延段ある
いは石段などと呼び,材料により切石敷,玉石敷,寄石敷などに分類します。桂離宮の
御幸道は敷石道の好例です。
 △霰アラレこぼし(玉石敷)
 玉石を用いて露地内の園路を舗装する方法の一つです。直径10〜20pの玉石を用い,
石や目地の大小により面白く模様をつけながら敷き込みます。ごく自然にしかも少し荒
廃してような味を出し,また無造作に敷き並べて,いわゆる侘ワビ,寂サビの風情を添え
るものです。
 △沓脱石クツヌギイシ
 庭園と建物とを繋ぐ重要な石で,通常上面の平らな長手の自然石を用いますが,桂離
宮輿寄の沓脱ぎのように切石なども使われます。石質は,飛石と同質のもの,又は逆に
対比する異質のものも使われます。
 沓脱石は,縁より約36p下に,また縁より12〜15p離します。
 庭園から建物に向かって,飛石,踏分石,踏段石(縁石),沓脱石,縁の順に配置さ
れます。
 △踏石フミイシ
 茶室の躙口ニジリグチの前に据える石で,くぐり石ともいいます。踏石は,小型で両足が
揃えられる程度の石を用い,天端は敷居から約36p下がり,はばき板より18〜20p離し
ます。古来名石が好まれ,貴船石,鞍馬石などの山錆のものが悦ばれます。飛石から踏
石の間には,乗石ノリイシと落石オトシイシが据えられます。
 乗石は飛石よりたたきの厚さの分だけ高く据え,落石の高さは乗石と踏石の中間とし
ます。
                          参考 養賢堂発行「造園事典」

[次へ進む] [バック]