05 日本庭園の手法2
 
            日本庭園の手法2
 
 〈日本庭園の手法〉
 
 △土居木ドイギ
 園路が坂に差し掛かるとき,これに対応する工法の一つとして土居木を用いる方法が
あります。勾配が緩く石段を設けるまでもないとき,2〜3歩の距離に胴木(クリ,カ
シ,ときにはマツの丸太あるいはなぐり材)を園路幅に横たえて両端を杭で支え,土を
胴木の天端一杯に埋め立てて階段を作ります。この胴木を土居木と呼び,庭園では実用
と同時に一種の意匠として用います。実用的には土居木の間隔を3歩踏みとするのがよ
いとされています。
 △石燈篭イシドウロウ
 石燈篭は本来仏堂の献灯用具で,その源流は中国にあり,朝鮮半島を経て飛鳥時代に
わが国に伝わり,平安時代には神社の献灯にも用いられるようになりました。それを庭
園に取り入りたのは千利休(1522〜91年)といわれています。茶匠の目を通して茶庭の
証明用具として,景として姿形スガタカタチの鑑賞として,いわゆる庭燈篭が創案されたので
す。
 利休,織部,遠州らによって,例えば基礎や台石の無い生け込み型のもの(織部型・
崩家型),脚の分岐したもの(雪見型・三角燈篭),火袋の笠のみ,若しくは中台まで
の置燈篭(岬型,手毬型・三光燈篭)などは,庭庭園ならではのものです。
 石燈篭は,庭門,池辺,山裾,園路の曲がり角,手水鉢などの傍,その他庭園の要所
に置かれます。その種類はおおむね,社寺の献灯に由来するもの(当麻寺型・柚ノ木型
・春日型など),庭園用として設計されたもの(雪見型・織部型・袖型など),及び寄
せ燈篭に代表される自然石あるいは廃物を利用したものなどに大別することもあります。
石燈篭は,灯口ヒグチを照明の最も必要な方向に向けて据えます。ただし景趣の上から客
付に灯口をあらわにしないよう心掛けます。
 △灯障りの木ヒザワリノキ
 石燈篭の風趣を整える目的で,燈篭の近くには普通,枝の軽やかなニシキギ,マユミ,
ドウダンツツジ,カンチクなどの樹木を選んで配植し,その差し枝で燈篭を僅かに蔽う
形にします。この灯障りの木は燈篭の趣に深みを与える目的で植栽するもので,その意
味で落葉期にも十分鑑賞に耐える樹形を持つものが要求されます。
 △燈篭控えの木トウロウヒカエノキ
 石燈篭に落ち着いた趣を与える目的で普通,石燈篭の背後には燈篭より大きな樹木を
配植します。この燈篭控えの木としてはクロマツ,アカマツ,モッコク,モチ,カエデ,
カキなどが選ばれます。これは灯障りの木と相俟って燈篭付近の景趣を作り出すもので
あり,一種の役木として働くものであるため,その樹種の選択と配植には十分に吟味が
必要です。
 △本歌ホンカ
 本歌は,翻案し又は模倣した和歌に対して,その本モトの和歌と解されています。例え
ば古今集が万葉集の模倣に過ぎないということで,万葉集を本歌という場合もあります。
このことから庭園の燈篭についても,銘真の燈篭を本歌といいます。
 △石幢セキドウ
 石燈篭が灯明用として使われるのと異なり,石幢は供養のために建立されたものとい
われます。普通は六角柱状に仕上げ,上部に笠を載せたもので,柱の上部に仏又は梵字
ボンジを彫んでいますが,仏は普通六地蔵菩薩が彫まれているといわれています。
 
 △平橋ヒラバシ
 寝殿造り庭園では,寝殿南庭から中島への第一橋は反橋ソリハシとされ,第二橋,第三橋
は平橋でしたが,舟の行き来などで妨げとなるときは平橋の中央部を取り外せるように
したものがありました。浄土形式庭園にも同様に反橋,平橋が組みとなって用いられま
した。併用するときは平橋の方が短いです。
 △廊橋ロウキョウ
 橋の全面に屋根の架かったものをいいます。中央部に亭を構えて腰掛を設けたものが
多く,平安神宮東神苑の橋殿,東本願寺渉成園の回棹廊,東福寺山内の堰月橋などがあ
ります。
 △亭橋テイキョウ
 木橋の反橋ソリハシの中央に,四本柱吹き放しに屋根を架けた亭を設けた形式の橋をいい
ます。寝殿造りや浄土形式の庭園に主きをなした反橋を更に強調したものといえます。
 △石橋イシバシ
 石橋には自然石のものと切石橋とがあります。自然の観察からして,自然石の橋は谷
川の上流に架かる様を表し,従って下は急流を思わせます。枯山水の庭では原則的に人
を渡す必要はありませんので,景としての重要度がより高くなります。またその規模が
庭全体の構成に大きく影響します。切石橋は本来の木橋に替わるものとしての耐久性や
力強さを強調し,反橋は河川下流の長橋を表し,真っ直ぐな橋は山間渓流の丸木橋とも
見立てられます。時代が下りますと技巧的になり,欄干付きのもの,八つ橋形のもの,
太鼓橋など様々な形式のものが作られました。
 △木橋キバシ
 欄干橋,通天橋,板橋,八つ橋,丸木橋などの構造の簡単なものから複雑など,種々
の形式のものがありますが,日本庭園では一般に簡素な形式のものが好まれます。特に
八つ橋は,橋板を筋違いに架けた形式のもので,極く浅い静かな流れに低く架け渡し,
アヤメ,カキツバタなどをあしらいます。
 △土橋ドバシ
 土橋の構造は,橋桁の上に丸太を敷き詰めて釘止めし,これに杉皮を置き,その上に
10〜15pの盛土をして仕上げます。橋の両端は粘土を混ぜた土で蒲鉾カマボコ形に作り出
し,コケ又は芝あるいはリュウノヒゲなどを植え付けて縁取りします。土橋は一般に低
めに架けますが,桂離宮の土橋では,舟の行き来のため高く架けています。
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