04b 日本庭園の手法1
△石組イシグミ
石組とはわが国では「石を立てる」こととしており,石組の使い方,石の選定,石の
表裏,配石の仕方などに配意して施工します。
△立石タテイシ
立石とは庭に石を配し,石を据えることで,それが庭造りの骨子とされています。
△役石ヤクイシ
役石とは庭の構成上,実用上,美形式上の機能から,特定の位置に特に決められた石
のことです。例えば,三尊石,礼拝石,橋挟石とか,つくばいの前石,つくばいなどの
石をいいます。
△座禅石(上座石)ザゼンセキ
真の築山の庭洞石で,庭中一山を引き締めるよう置く石です。上座石と呼ぶのは,「
座するところ上なる」をいいます。
△橋挟石ハシバサミイシ
石橋(又は木橋)を固定するもので,根張りのしっかりした安定感をもたらします。
△石の根
石を据えたとき,その基部となる部分で,根が浮いて見えないにしなければなりませ
ん。
△蓬莱山の石組ホウライサンノイシグミ
蓬莱山や鶴亀は神仙説からきた不老長寿を願うもので,平和で明るい石組をするとい
うことです。
△三尊石サンゾンセキ
三尊とは仏教でいう弥陀,観音,勢至,又は釈迦,文殊,普賢,若しくは薬師,日光,
月光などの菩薩ともいわれています。三尊石は,庭の中心となるべきところに三柱石を
バランスよく組むこととされています。
△主(守)護石シュゴセキ
守護石とは諸景の源にして,一庭を守護する石であり,他の石はこれによりこれを受
けて釣り合いを保って組まれるものとなります。
△捨石ステイシ
捨てられたように無造作に置かれる石ということからその名があります。小庭であれ
ば一石で全体を支配する効果を持ちます。借景などで,遠景との結びつきに最も適して
いますのでよく用いられます。普通雑木林の中に何気なく無造作に置かれたり,芝生や
草地に露頭のように置かれたりして,貴重な味わいを出すものです。
△須弥山石シュミセンセキ
古代インド人の世界観に由来し,須弥山は世界を構成する山として想像されたもので,
東西南北の空間は一色からなり,九山八海が連なっています。水面から山が高く聳え,
日月がこれを巡っています。須弥山は九山の中心の山であり,中央に須弥海という海を
持ちます。このような世界観が仏教によって受け継がれ,須弥山の頂上を帝釈天タイシャク
テンの住居と考えたものです。これを庭園の中で宇宙の中心であり至尊の在所であるとし
た仮想した須弥山を,庭の宇宙と見立てて石を据えることとなったものです。
△清浄石(請浄石)ショウジョウセキ
手水鉢に添うて,平らな水汲石と均衡を保つ大切な石で,心身を浄める意をこめてい
ますので,そうした格を持った石を選んで下さい。
△額見石ガクミイシ
茶室の屋根の妻に掲げられてある額を見るとき踏む石です。しばらく立って落ちつい
て鑑賞する訳ですが,上部の平坦なやや広目のゆったりした石を浅く据えます。
△飛石トビイシ
自然石あるいは切石を配列し,これを苑路として利用するものです。飛石として用い
る個々の石は,多くは上面の平らな花崗岩,安山岩などの野面石が用いられます。石の
大きさは庭園の意匠や規模,建築との調和などを考慮して決定されます。
渡りは飛石を自然に伝い歩く動きとそのために採られる飛石の間隔を指すもので,通
常は一歩踏みで2mを4〜5歩で踏むものと考え,4〜5石を配置しますが,石と石との
間隔は10〜15p位を標準とします。
ちりは地表から飛石の天端までの高さを意味し,大形の石で6p,小形の石で3p位
に採ります。大形の石,丸味のある石は低く過ぎないよう,また小形の石,角張った石
は高くなり過ぎないように据えることが要点です。
合端アイバ(合場)は石相互の面の凹凸を考え合わせて,一方の石の凸部と他の石の凹
部とを向き合わすようにして,馴染みよく据えるのがよいとされます。
飛石は実用から出発したもので,歩きよく据えることが大切ですが,庭園意匠の上で
も重要な要素となるものであり,それだけに意匠的に美しい配石であることが望まれま
す。
△飛石の定石トビイシノジョウセキ
飛石の配置は歩きよいことを前提としますが,庭園意匠的にみて韻律的な美しさを作
り出すことも大切ですので,次のような自然石による配列の形式があります。
@二連打:大きさ,石質などの異なった二つの石を一組として配列します。
A三連打:二連打に1石を加えたものですが,この場合第3石は第2石と石質又は形
状が共通することが望ましいとされています。
B四連打:二連打の列形を基礎としますが,具体的には二連打を2種組み合わせて配
石する方法と,三連打に1石を加えて配石する方法とがあります。
C千鳥駆け:左,右,左,右と1石ずつ,いわゆる千鳥チドリに配石するもので,二連
打の応用とみられます。
D二三崩し:この「踏み崩クズし」は二三打とも呼ばれます。これは二連打と三連打と
の組み合わせとみられます。2,3,2,3と雁行するように配石の方向を変え列
形全体の変化を求めます。
E四三連:3,4,3,4と雁行に配石するもので,二三崩しの応用ともみられます。
雁が音カリガネ打はこの応用です。
なお,飛石の配列については,殊更に歪ヒズませた配石は慎むべきで,素直な列形を基
調とすることが望ましいです。上記の定石形なども,列形の単調を破るための強調的な
用い方に留めるべきでしょう。
△飛石段トビイシダン
園路勾配が急なときは,しばしば飛石あるいは延段の手法を応用した飛石段が用いら
れます。飛石段には蹴上げの部分のところで,下の段石に上の段石を重ねて据える方法
と,蹴上げの部分の小口面を上下の段石で馴染みよく突き合わせ据える方法とがありま
す。
飛石段は,蹴上げ10〜15p,踏み面30p以上を標準とします。
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