11a 新宿御苑の菊
 
 〈大菊・中菊大作り〉
 
 △大作り
 大作りには大菊の大作りと,中菊の大作りの二種類があります。大菊は厚物種,中菊
は江戸菊種が用いられ,花壇に仕立てますと,大きいものは幅3.6m,高さ1.5mにもなり
ます。
 大作りの特徴は,根分けによる苗に,摘心を繰り返して枝数を増やし,最終的には一
株に,大菊は200〜300輪の花を咲かせることです。
 栽培には全期間竹かごを用い,定植場で開花直前まで育てた株を展示花壇の石台セキダイ
(木鉢)に植込み,割竹や篠竹を使って半円形に整然と仕立てます。
 △菊の性質
 大作りには,発育が旺盛で節間が良く伸び,分枝力に富んだ種類を用います。一般に
菊の草勢は,長年に亘って栽培を続けるに従い次第に弱まりますので,特に大作りには
同じ品種を長く用いることはできません。そこで御苑では常に交配育種を行い,新品種
の育成に努めています。
 △栽培
 展示花壇には最終的に5株(大菊3株,中菊2株)を用いますが,それを確保するた
めに,1品種につき5株の割合で,最低10品種,計50株を準備します。さらに予備苗や
試作苗を加えますと100株以上になります。
 12月上旬根分けにより7寸(21p)竹かごに植えた苗は,ガラス室内で保護管理しま
す。3月下旬に1尺(30p)竹かごに移植,5月中旬屋外ヨシズ囲いに移し,外の環境
に徐々に慣らします。この間,施肥と3回の摘心,結立を行います。
 5月下旬大株8株,中菊4株,計12株を厳選し,定植場に埋め込んだ角かごに移植し
ます。伸びた枝に対し篠竹を立て,イグサで誘引,結立をします。結立には,1株につ
き2mの長さの篠竹を100本用意し,順次放射状に立てていきます。さらに1回の摘心を
行い,十分な枝数を確保します。定植に用いる培養土は植穴一つに2.7立米,全体で32.4
立米を必要とします。
 夏期は肥培管理に努め,潅水作業や陽射しの調節を行い,茎葉の硬化を防ぎ,枝の伸
張を促します。また病害虫の発生・蔓延を防ぐために薬剤散布を継続します。8月から
9月にかけては摘芽,整枝を行い,養分の分散を防ぎ,各枝の充実を図ります。9月下
旬から摘蕾を行い,最終的に一茎一花とします。
 10月中旬開花直前の株を掘り上げ,展示花壇に運搬します。
 △本結立
 展示花壇における仕立を本結立と呼び,定植場から掘り上げた株を石台に植込んで行
います。大作りの真価がこれにより決まるとまで云われるほど重要な作業であり,一株
を仕上げるのに3人で4日,延べ12日を要します。
 本仕立は黒く塗った篠竹や割竹,杉の小貫などで基礎となる骨組みを作り,垂直に立
てた篠竹に花を結いつけ,半円形に仕上げます。
 △花壇
 面積は25坪(82.5u),その上に間口12間(21.6m),奥行2.1間(3.8m),軒高8.5尺
(2.55m)の上家を組みます。上家は桧造りで,三方がヨシズ張り襖戸,屋根はロウ引き
和紙の障子を用い,展示期間中,雨や風から花を保護しています。ここに石台を前列2
台,後列3台の割合で配置し,本結立を完成させます。
 最後に花壇全面に化粧用の黒土を敷き詰め,菊,石台,上家が一体となって,大作り
花壇を構成します。
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