05a 松の趣〈病虫害の予防と駆除〉
〈マツノアワフキムシ〉
本種は年1回発生,卵で越冬します。4月下旬孵化した幼虫は,新梢基部で泡を分泌
し,その中に生息して吸汁加害します。被害部の針葉はスス病が発生し,黒く汚れて醜
くなります。
5月下旬頃,老熟した幼虫は成虫となり,葉鞘や樹皮上に1粒ずつ産卵します。成虫
は11月頃まで樹上で見られます。
マラソン,スミチオン乳剤1000倍液を散布します。泡の中の幼虫を捕殺します。
〈マツバノタマバエ〉
マツの針葉基部に虫瘤コブをつくり,針葉の成長を止めてしまう害虫です。
年1回発生し,成虫は4月下旬から6月上旬に出現します。雌成虫はマツの新葉が1,
2pに伸びた頃,双葉の合わせ目に4,5粒産卵します。孵化幼虫は針葉基部に潜り込
み,寄生部は間もなく肥大して虫瘤となります。
森林害虫ですので,成虫は冬の雨後に集団で地上に落下しますが,湿った落葉層がな
いと生育できません。
〈マツノシントメタマバエ〉
マツの冬芽に寄生し,芽の発育を止めてしまいます。
年1回,成虫は9月中旬から10月中旬にかけて発生し,雌成虫は冬芽内に産卵します。
幼虫で越年し,5月頃から養液を吸収しますので,そのため芽は次第に肥大し,8月頃
には直径6oの虫瘤の中に30頭内外の幼虫が寄生しています。
老熟幼虫は8月中旬から9月上旬にかけて,雨天に脱出して地下に潜りますが,地面
が露出していますと生育できません。
〈マツカレハ(松毛虫)〉
年1回発生,成虫は7〜8月に現れ,マツの針葉に卵を塊状に産みつけます。孵化幼
虫は,はじめ群生して針葉を食害しますが,二令以後は分散して生活するようになりま
す。
寒地では10月から,暖地では11月になりますと,2〜4pに成長した幼虫は,地際の
粗皮の間や落葉の下に潜り込んで冬篭もりをします。そのとき樹幹に藁を巻いておきま
すと,その中に潜りこみます。
翌2月下旬から3月になりますと,幼虫は冬眠から醒め,再び樹上に登って葉を食害
します。幼虫は5〜6月頃老熟し,樹上で繭マユをつくって,その中で蛹サナギになります。
幼虫が孵化する8〜9月と冬眠から醒める4月に,スミチオン,ディプテレックス,
カルホスなどの乳剤か粉剤を散布します。10月始めにマツの幹に菰を巻き,翌年2月に
それを開いて,焼くなどして越冬中の毛虫を殺します。
〈モモノゴマダラノメイガ〉
ゴヨウマツ,ヒマラヤスギ,モミ,ツガなどの針葉樹の枝と葉を糞で綴って巣をつく
り,その中に棲んで針葉を食害します。
幼虫の孵化する6月始めと,8月始め頃に,スミチオン,ディプテレックス,カルホ
スなどの乳剤1000倍液を散布します。
〈マツノシンマダラメイガ〉
若いマツの新梢を破壊するだけでなく,マツがある程度太りますと,幹に食い入り,
大量の松脂マツヤニを流出させ,著しく美観を損ね,商品価値を下落させます。
年2回発生,幼虫のまま被害部で越冬します。成虫は5〜6月と7〜8月の2回出現
します。成虫は新梢部あるいは樹幹の樹上に産卵し,孵化幼虫はすぐに内部に食入しま
す。幼虫が成長するにつれて排糞量は多くなり,幹寄生の場合は松脂の流出が激しくな
ります。老熟幼虫は加害部で蛹サナギとなります。
被害新梢は切断して焼却,幹被害の場合は白くなった松脂を除去して中の幼虫を刺殺
します。5月と7月に,スミチオン,カルホスなどの乳剤を幹には500倍液,新梢には
1000倍を散布します。
〈マツヅアカシンムシ〉
年3回発生,春は主として新梢に,夏は主として球果に食入します。
成虫は4月,7月上旬,8月下旬〜9月上旬頃に出現します。孵化幼虫は直ちに内部
に侵入,食害を始めます。新梢は普通,梢頭付近より侵入し,10p内外を枯らします。
球果に食入したときは食入部より糞や松脂マツヤニを排出します。老熟幼虫は加害部で蛹サナ
ギとなり,蛹又は幼虫態で越冬します。
防除法は,マツノシンマダラメイガに準じます。
〈マツクイムシ〉
マツクイムシということは,マツの幹や枝に潜入して樹皮や材部を食害する穿孔虫を
総称し,マツノマダラカミキリ,シラホシゾウムシ類,キボシゾウムシ類,マツノキク
イムシ,マツノコキクイムシ,キイロコキクイムシなどがあります。
マツクイムシの被害は,マツノマダカミキリが運んでくるマツノザイセンチュウとい
う線虫によるものです。
5〜6月頃,枯れた松の材中で成虫となったマツノマダラカミキリは,ザイセンチュ
ウをいっぱい身につけて野外へ飛び出します。そして健康なマツの小枝の軟らかい樹皮
をかじって食べます。このとき,マツノマダラカミキリの体内にいた数千ものザイセン
チュウが,この噛み傷を通してマツの材部に侵入し,マツを急速に枯らします。
そのため,空中散布などでこのマツノマダラカミキリだけを狙って駆除します。
参考「松図鑑」池田書店
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