04c 松の趣〈庭木づくり〉
 
 (7) 植付け後の管理
 庭の木の管理は美しい姿を維持すること,気象上の被害から守ること,病虫害を防ぐ
こと,その他枯損の原因となることから守ることです。必要により剪定,整枝,雪吊り,
病虫害防除をして下さい。
 (8) マツの硫酸銅液注入法など
 ボルト錐で幹の芯に届くまで穴をあけ,硫酸銅粉末小匙1杯に水1.8lの割合の水溶液
をつくって注入します。これはマツに限ります。
 衰弱したマツを元気にする方法は,前述の硫酸銅水溶液のほか,燗冷ましの酒やスル
メの煮汁が効くともいわれています。小根(大根はだめ)を掘り出して鋸で挽目をつけ,
スルメを巻いて藁でくくって埋め戻すと,枯れかかったマツに生き返ると古書にみえる
そうです。
 (9) 時期や土質が合わないとき
 アカマツ,クロマツは適期以外の12〜2月,5〜6月でも植えることができます。8
月は避けた方がよいでしょう。
 土壌中への空気や水分の供給のための透通水性の良い土壌を機械的に造り,泥炭地や
岩屑土では土壌改良材と砂質壌土を混合した客土をします。また痩せたところでは深耕
することもあります。
 (10) 肥料
 マツはあまり肥料を必要としませんが,年に1回木灰を与え,衰弱したようなときな
どには魚肥,骨粉などを,1〜2月の寒のうちに与えて下さい。
 (11) 形の整え方
 人工を加味してマツの持ち味を発揮させるように,摘芯,剪定,摘葉などの方法で樹
型を整えます。
 摘芯は「マツのミドリ摘み」といわれ,マツに限って行われる摘芯の方法です。アカ
マツはミドリがまだ柔らかいときに指で摘み取ります。クロマツはミドリがやや硬くな
ってから鋏で切り,これをミツを切るといいます。タギョウショウやゴヨウマツはいず
れの方法でもいいです。
 仕立てようとする樹型に応じて,@樹型をある方向に向けたいときは,頂芽1本残し,
他のミドリを全部摘む,A細い枝を数多く出させようとするときは,頂芽を摘み,他の
芽を全部残す,B前記のものより枝の量が少なくてよいときは,頂芽を摘み,他の芽は
一部分のみ摘む,C枝の量が多すぎるときは,頂芽の上半部を摘み,他は全部摘み去る,
E枝の量を適当に調整するときは,頂芽の上半部を摘み,他は一部残して一部分を摘む,
F樹冠や枝先の表面を揃えたいときは,全部を同じ長さに摘む,などの方法を組み合わ
せて摘んで下さい。
 なお,樹勢の旺盛な若木などの場合は,「めくら摘み」といってミドリを全部摘み取
ることもあります。樹勢の衰えたマツはミドリ摘みを差し控えましょう。
 (12) 剪定 − 不要な枝の剪定
 庭の限られた範囲の中に生育させ,またマツ独特の美しさを発揮させるため,幹を曲
げたり枝をある方向に下げたり,いろいろの樹の形に仕立てます。また一度仕立てたマ
ツも放置して置きますと,枝葉が密生して,枯れたりなど見苦しくなります。
 幹の方向に伸びていたりや樹冠の中にある枝でいずれは枯れてしまうふところ枝,一
つの枝から上下に伸びて樹形を乱すさかさ枝,立ち枝,また伸びすぎた枝や貧弱な小枝
などは剪定して下さい。
 @芯を立てる梢は一つとする,A主幹の1カ所から放射状に何本もでている,いわゆ
る車枝にしないこと,B主幹の1カ所から対象的に出ている,いわゆるかんぬき枝とし
ないこと,C枝と枝とが絡み合わないようにすること,D同じような枝が重ならないよ
うにすること,E幹と枝を交差させないこと,などに留意して下さい。
 全体的には,幹を主軸とした左右の枝の調和になるようにしながら変化をつけ,マツ
が直幹形のときは四方に均斉を保つように枝の多いところを剪定します。なお,強い枝
は短く,弱い枝は長く切るように心がけます。
 剪定時期は8〜9月でも行いますが,通常,摘葉と同時に行います。
 (13) 剪定 − 枝の切り方
 大きな枝はおろす,中枝は切る,小枝は鋏むといいます。
 大きな枝のおろし方は,幹から少し離れたところの下側に少し挽目を入れ,そこから
少し枝先の方のところに上から鋸目を入れます。枝の重みで落下しましたら,切り残っ
た枝を幹の外面に沿って垂直に切り離します。
 剪定用鋸は先まる櫛型がよく,大小2種用意しましょう。
 鋏は普通の剪定鋏,生垣の刈込み用の,柄のついた刈込み鋏があればなおよいでしょ
う。あとは脚立や梯子も必要でしょう。
 マツの葉を摘み取ることを「モミアゲ」ともいいます。マツの美しさは葉並みのほか,
幹の色,枝や小枝の姿にありますので,これらが多少透いて見えるように,必要な葉を
摘み取ります。
 マツの葉は2〜3年の秋に落ちます。摘葉は1年目の新葉の一部を間引くこともあり,
2年目以上の古い葉は全部摘み取ります。アカマツは柔らかい感色を出すために,下垂
した新葉は取りません。
 摘葉や枝の剪定は,樹木の生理機能の調節を図り,さらに樹木も若返ります。また,
アカマツの場合は,同時に樹皮を藁で擦って古い表皮を落とすようにします。
 (14) 枝吊りの方法
 マツの枝は冬になると組織が硬化して,雪の重みで枝が折れやすくなります。中央に
長い柱を1本又は数本立て,その頂上部から何本も縄を張って,枝の各部を吊り上げる
ようにします。縄は弛まないように均等に張って下さい。
 
                           参考「松図鑑」池田書店

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