04b 松の趣〈庭木づくり〉
 
 〈マツの庭木仕立て〉
 
 マツの庭木仕立ての方法には,実生苗養成,山取り木の剪定・整姿があります。仕立
てはその主幹の形から,直幹仕立て,斜幹仕立て,曲幹仕立てに分けられます。
 直幹仕立ては,主幹が直で,枝の間隔は下が広く,上になるに従って狭くします。左
右の枝配りは幹の左右対象よりも,枝の長さの総和が左右同じ位いになるように仕立て
るのがよいとされています。
 斜幹仕立ては門冠りによく用いられるように,主幹の中程から長い枝を出させ,その
位置で曲がりをもたせる仕立てです。長く出す枝を差し枝といいますが,樹高が低く,
特に長く差し枝を仕立てたものを流枝ナゲシ松といって,水辺に植えるのに適しています。
 曲幹仕立ては,幹に曲げとくねりをもたせる仕立て方で,その曲がりは下部ほど大き
く,梢の方に近づくにつれて小さくします。
 マツは毎年,幹,枝の先端に新芽をつけますが,これをミドリといいます。その中心
の芽は長く,周りの側芽は短くなっています。長いミドリは主幹,主枝となるもので,
周りの短いミドリは生長して車枝になります。従って苗木から仕立てる場合,ミドリの
取扱いに注意しながら仕立てて下さい。
 ミドリの伸び方が強すぎるときや,もうこれ以上幹や枝を延ばしたくないときには,
基部から全部摘み取ります。幹から出ている主な枝を長く伸ばしたいときは,枝を真っ
直ぐの伸ばし,ミドリの中で最も勢いのよい長いものを残し,これは将来の主枝としま
す。側芽は半分位いに摘み取って2本位いに整理し側枝とします。上向きのミドリは1
本にして半分は摘み取り,将来上向枝として,主枝に厚みをもたせるようにします。
 側枝は主枝に対して互い違いに出るように仕立てるのが原則ですが,山取り木などは,
上向きのミドリを摘み取って,その下部に新しく胴ぶきの芽を出させることもあります。
 梢端部の仕立てには二つの方法があります。一つは本仕立てで,目標の高さにまで生
長しましたら,最先端の中心部のミドリを基部から摘み取り,脇のミドリを3本残して
半分から1/3の長さに摘み取ります。3本のミドリから出る小枝を,さらに2本ずつ
に枝分けして目標の仕立線に仕立てる方法です。
 もう一つの方法は最先端の中心のミドリは摘み取り,脇のミドリは全部残し,車枝状
になったものを繩で下方に引っ張って固定し,車枝から上向枝を芽ぶかせて,それをさ
らに枝分して,目標の仕立線に仕上げる方法です。
 幹を曲げるのは10年以下(一般には5〜6年生,樹高2m前後)のもので,曲げられる
幹の上端は根元の真上になるように,また自然に曲がったようにするのが理想的です。
2〜3月,支柱を2〜3本打ち込んで,これに幹を絡ませて結束します。
 斜幹仕立ては,幹を傾けて植栽し,目標とする位置から差し枝を伸ばし,添え竹をつ
けて枝を伸ばしていきます。幹を支える支柱と添え竹の結束で枝の向きを上下に加減し
て下さい。
 またクロマツの山取り苗を60度程度に傾けて植栽し,差し枝のところで幹を切り,そ
この車枝の一本を幹代わりに仕立てる,通称枝芯を立てるという方法があり,この方法
を繰り返して変化のある幹の曲がりが得られます。
 △植え方
 マツは一般に根つきがよく,移植しやすい樹種といわれていますが,マツは細根が少
ないので掘り取りには気を配って下さい。ダイオウショウは移植が難しく,小さい木で
も難しいようです。
 (1) 植付時期
 マツは,芽が伸び始める前までの早春,2月下旬から4月下旬頃と,生長が止まった
秋以降,9月下旬から10月下旬,又はところによって11月までが適期とされています。
 (2) 根廻し
 予め根廻しをして,根元近くの細根を出させるようにして下さい。根廻しは,移植の
半年から1年前の,早春がよいでしょう。早春に根廻しをしたものは,秋には細根が出
てますので移植できます。
 まず,マツの根元直径の約4倍の周囲に溝を掘り,四方に延びている太い根と直根は
倒木予防のため切らないで残し,幅約15pの皮を完全剥離して下さい。細い根や余分な
根は,直角に切断します。
 後は埋め戻します。通常,潅水しません。
 根廻しによって一部の根が失われ,水分の蒸散能力が低下しますので,切断した根の
量に応じて,上部の枝葉を切り詰めて下さい。
 その後の養生として,支柱,幹巻き,施肥を行います。
 (3) 掘り取り
 剥皮した根を直角に切断し,根が抱いている土を落とさないように藁繩で縦横にしっ
かりと根巻きして,土ぐるみの鉢を作ります。
 まず下枝は上にはね上げ,また不要な下枝は切り,表面の雑草などは取り除きます。
 鉢の半分程度掘り下げて,全ての根を切断して掘り取ります。
 掘り取った後は,鋭利な刃物で再度根をきれいに切断して下さい。
 (4) 根巻き
 鉢土の割れを防ぎ,鉢の中の根を土に密着させるため,鉢土に直に繩を巻いて,繩が
めり込むくらいにしっかりと締め付けて下さい。
 まず鉢の円周に沿って水平に鉢の側をぐるぐる巻きにし,繩は正しく等間隔に鉢周り
に当て,小槌で繩が土の中にめり込むように叩きながら強く締めていきます。これを樽
巻きといいます。
 次に縦横に鉢をかがるようにして,繩が上から底へ,底から上へと巻き絡めます。こ
れにはいろいろな形の巻き方があって,鉢の表面を三角,四角,五角に切る形から,三
つ掛け,四つ掛け,五つ掛けなどに分けられます。なお同じ掛け方を繰り返すことで,
二度巻き,三度巻きなどと呼ばれています。
 以上は大きな木の根巻きですが,通常鉢の直径が15〜45p位いのものは次の方法によ
ります。
 藁を使う法は,まず藁をある幅に敷き,これを十文字若しくは米字形に重ね,その上
に苗木の鉢を載せます。鉢土の側面に藁を起こして当てて,その上から繩で根巻きしま
す。
 また,一層簡単な方法は,繩を延ばして地表に敷き,上に藁(菰など)を敷き並べ,
その上に掘
り上げた鉢の側面が当たるように置きます。次いで繩を鉢の外側から巻き上げて藁で包
むようにします。
 いずれの場合も,繩は藁の上から土にくい込むように強く締め付けて下さい。
 (5) 植付け
 マツは砂質壌土を好み,帯湿性の土壌は適しませんので,必要により砂質の土壌を客
土して植栽して下さい。
 特別に乾燥するところ以外は,深すぎると生長はよくありませんので,やや浅目に植
えます。
 マツは乾いた砂質壌土を好み,地中の水湿を好まない性質がありますので,潅水は,
植えたあとに土壌に湿りを与える程度でよいでしょう。
 元肥はあまり必要ありませんが,植穴の底に梱包してあった藁などを敷いて下さい。
また追肥は,完全に活着してからにして下さい。
 (6) 支柱と養生
 植栽木が風で動いたり,倒れたり,傾いたりしないように支柱を立てて安定させ,根
つきをよくします。
 支柱には,一本支柱,鳥居型二本支柱,鳥居型三本支柱,鳥居型四面支柱,三脚支柱,
数本をまとめて支える布掛支柱などがあります。材料は,防腐剤注入又は焼いた丸太,
唐竹,針金,スギ皮,シュロ繩,釘などを用意します。
 養生としての幹巻は,日焼けと寒害防止,水分蒸散抑制,害虫の侵入などのために行
われます。
 施肥は,植栽後1カ月を経過し,発根した根が固まってからにします。
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