04a 松の趣〈庭木づくり〉
 
 〈庭の目的に合わせて〉
 
 △目を楽しませる
 例えば花を見て楽しむためのものにサクラ,ウメ,ツバキ,ツツジその他沢山の花木
があって,好みによって選ばれています。
 また,実を観賞するためにカキなど,香りのよいものとしてタイサンボク,モクセイ,
クチナシなどがよく植えられます。紅葉の美しさを見るためのカエデ,樹皮を観賞する
シラカンバなど庭木としていろいろな樹の特徴を生かした使い方があります。
 このような目的を以て植える木もありますが,全体の姿を見て楽しめる庭であること
が望ましいです。そのために形を整えたり,樹種によって自然樹型に近い形で観賞する
ものもあります。カイヅカイブキ,コウヤマキ,ヒマヤラスギ,シュロ,ソテツなどで
す。
 マツは普通,庭木の中の主要な景観の焦点として,幹の形,枝振り,葉の色合い,皮
肌の感じなどを見て楽しむ木ですので,剪定,整姿をして美しく仕立てられたものを選
びます。独立してマツを観賞するために植えることもあります。
 △目隠しをする
 目隠しは,周りから覗き込まれたり,家の中から見苦しい外の眺めを隠すために境界
に沿って植えるもので,現状に応じ列植や互の目植え,自然風などの方法がありますが,
樹種は常緑で枝や葉が密生しているものが選ばれます。
 一般に常緑広葉樹のサンゴジュ,マテバシイ,カシ,針葉樹ではスギ,サワラなどが
使われますが,マツも植えることがあります。この場合は自然に生長したもので,樹高
の高いものを選びます。植え幅が広いときは,自然風にマツの他に常緑広葉樹を混植す
ることも考えられます。
 △実用
 住宅庭園の植栽には,庭園内の植栽,建物周辺の植栽,敷地外周部に植栽するなど大
きく分けられますが,また観賞本位の植栽と実用本位の植栽にも分けられます。
 実用として住宅敷地周辺に植栽するのは防火,防風,防塵など様々な使命を持たせる
意味があり,また当然美観や目隠しの意味も重視されます。
 関東周辺で,西側と北側を高い樹で囲うことは,冬期の寒風を防ぐ目的でもあります
し,海岸地帯で潮害を防ぐ目的で,海岸に向いた側に植樹帯を設けることも行われます。
島根県で家の周囲に「築地チイヂ」と称する高い防風林を造成することは有名であり,
実用植栽の見本であるといえましょう。
 その他の実用植栽としては,防雪,防音,防砂などいろいろの目的を持つこともあり
ますが,マツは防雪や防火,また緑陰樹には不向きです。
 △記念樹
 記念樹は防虫害に強く,丈夫で寿命が長く,大木になって独特の風格あるものが望ま
しい条件です。マツは昔から慶事に関係深いものとして記念樹として選ばれています。
 以前は皇室,皇族が地方に行かれますと慣行的に御手植による植栽が行われまして,
お手植えのマツとして記念に植えられています。
 記念樹は,後日移植することのないところを選び,念入りに植え,植付け後は,枯れ
枝切り,必要最小限の剪定・整姿・施肥などを行います。
 △マツの下木,下草には
 好みによって選びますが,耐蔭性の強いものです。枝下の高いマツにはモチやカヤな
どを配植し,その下にヤツデ,アオキ,ヒサカキ,ヒイラギナンテン,アセビなどをあ
しらいます。
 景石や化粧砂利を用いたときには,コザサ,コケ類,シダ類などを地被植生としてよ
く使用しますが,リュウノヒゲ,シャガなどが一般的です。芝生は日陰では消えますの
で,日当たりのよいところを選んで敷いて下さい。
 マツは陽樹ですが,樹冠を通して陽光を透しますので,半蔭性の植物でも十分生育し
ます。
 
 〈庭の面積に合わせて〉
 
 △広い庭に場合
 広い庭の場合,囲いに沿って植込みを作りますが,庭の中央部は芝生や池などでなる
べく広く見れるように工夫します。
 周りの植込みの場所は,ある幅をとって自然木の姿を楽しめるようにして,マツに各
種の樹種を混え,他の木の樹冠の高さも自然に高低の変化を持たせるようにします。
 また何本かのマツを寄せて,マツ林の風景を作り,前景に小高木や低木などを植えて
厚みのある景観を現すこともよいでしょう。単一樹種を避けて,広さを生かした変化あ
る植栽にしたいものです。
 △狭い庭の場合
 広くない庭に高い木を植えますと,不自然に見上げるようになってよくありませんし,
屋内の陽射しを妨げますので,整姿しながら,ある程度まで伸びましたら高さを調節し
ます。この場合,低木だけに片寄りますと貧弱な庭になってしまいますので,景観のア
クセントになる,マツの仕立てられた立派なものを植えるとよいでしょう。また,庭の
高低に起伏をもたせたり,見る眼の高さをなるべく低くするなどの工夫も必要です。樹
冠の高低のほか,潅木の刈り込みなども,表面を波型に高低をつけて刈り込み面積を広
くする方法が採られます。
 △非常に狭い庭には
 広さに応じて高木を1本又は数本に絞って,空間を強調し,あとは根締めネジメ用の小
潅木又は地被植物を植えて,庭をまとめるようにします。マツを用いる場合は,下枝の
少ないもので,幹と樹冠の美しさを観賞できる姿のものを選びます。庭の景観を強調す
るものは樹木だけでなく,灯篭や庭石,つくばいその他重量感のあるものを置くのもよ
いでしょう。
 
 〈マツ類の買い方〉
 
 △園芸店で
 庭造りには庭師の手によることが多く,庭師がよく使う形のものを植木生産業者やと
きに農家が副業として生産していたものです。
 自分で庭木を求める場合は,園芸店や植木市などで好みのものを選ぶことになります。
園芸店で買うマツは苗木で,大きなものは少ないですから,大きいものは形や枝振りを
指定して注文することもできます。
 庭木を買うときの注意点は,根がよいか,病虫害に罹っていないかです。根巻きの藁
ワラを開いて細根が充分あるかを視ます。葉や幹に病斑や食痕がないかを確かめます。
 枝振りは,植えてから任意に形づくりができますので,あまり拘コダワらなくてもよい
でしょう。
 △植木市で
 定例の植木市や,生産者団体などが開く植木市は,地域によって,植木の大きさは樹
高,幹廻り,枝幅などについて一応の規格があり,価格の規準もあります。
 求める木の大きさと姿が,値段とつり合っているかをみて,見た目にも生き生きとし
た鮮度のよいものを選んで下さい。細根が腐っていて白い糸状のものがないかどうかを
吟味して下さい。
 △植木屋で
 関東では埼玉県安行,中京では愛知県稲沢,関西では大阪府池田市,兵庫県宝塚市,
九州では福岡県田主丸町,久留米市などが,昔から有名な庭木の産地です。
 庭をつくるときは,まとめて相当数の庭木を必要とする場合はあらかじめ,必要な樹
種と規格,本数などを調べておいて,業者の畑を歩いて視ながら選んでいきます。少し
ずつ買うよりも,植木屋や造園業者に一括して持ち込ませて植えますと安くつきます。
 庭は,他の庭木との均合いをみながら同時に植える方が,調和のとれた形に仕上がり
ます。
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