03d 松の趣〈盆栽づくり〉
△接ぎ木ツギキ
マツの接ぎ木は,主として八ツ房性のもので行われますが,山取りできないニシキマ
ツでも接ぎ木により繁殖させます。
ニシキマツの例を述べます。
@適期は3月上中旬頃,台木には黒松の2年生位いの丈夫な苗木を用います。
A接ぎ穂は,勢いのよい新梢を選び,6〜7pに切り取ります。
B台木の根際から2pのところを,木質部をそぐ程度に長さ3p以内を小刀で削り取
ります。次ぎに,接ぎ穂の元の方の葉をむしり取り,その樹皮をそぎ,両者の接ぎ口
を手早く合わせます。
C藁ワラかセロテープで縛り,周りの土を接ぎ穂の芽元まで寄せ掛けて,手で軽く押さ
えて下さい。この方法を削ソギ接ぎ法といいます。
D後は十分に潅水して,日当たりのよいところで管理します。
E秋10月,又は翌春になりましたら,台木を切り放して下さい。
八ツ房は元接ぎによります。接ぎ穂は長さ3pのものの元を両側から楔クサビ状に切り,
台木は根元に近いところに切り込みを入れ,それに接ぎ穂を差し込み,ヤニの出ない
うちに縛ります。台木の切り取りは翌春,新芽が固まってからにします。
△取り木
クロマツとゴワウマツが取り木に適しています。適期は3月中下旬〜6月上旬までで
す。この方法は,根からの水上げを強制的に止め,生理上やむなく発根へと導くもので
す。
@緊縛法は,切り取ろうとする部分に,6〜8番線の針金に紙などを巻いて,2,3
回,幹肌に食い込む程度に巻き付け,ペンチで引き締めておきます。
Aその周りを水で練った赤玉土でくるみ,水苔を当てて,ビニールで包みます。とき
どきビニールの上端から潅水します。
B若木ですと1年位いで発根します。
C環状剥皮法は,幹の全周を直径の2,3倍の幅で,木質部が現れるまで小刀で剥く
ものです。この方法は発根が早いようです。
D早いものは,秋には切り取って鉢に移すことができます。
Eこのほか専門家は,その部分に楔クサビ状の切り込みを数本入れ,切り口に小石か砂
粒を挟んで水苔で発根させる方法を用いますが,初心者では難しいようです。
△挿し木サシキ
マツ類では挿し木はあまり用いませんが,クロマツやニシキマツでは試みられていま
す。
挿し木の適期は6月下旬頃です。その年の新梢を10p程度切り取り,下部の葉をむし
り取って小刀で楔クサビ状に切り取ります。
挿し床は微塵粉を抜いた川砂をゴロ,中粒,細粒に分けて,ゴロより順に入れて整え
ます。挿し穂をやや斜めにして挿して下さい。発根するまでは強い日差しを当てないよ
うにしましょう。
△マツ盆栽の名品
@三代将軍遺愛の松
徳川家光遺愛の五葉松で,その後伊東伯爵家,清水藤吉氏を経て天皇家に献上され
ました。現在は宮内庁の管理下にあります。
A東海道原宿の一対の赤松
東海道原宿の植松家に代々愛培され,参勤交代の折に大名等が観賞したと伝えられ
ています。年古りの赤松で,現在は白泥釘彫長方に納められ,東京の某大家のもとに
あります。
B「日暮し」の五葉松
中野忠太郎氏の所有で,五葉松の双幹です。
△陳列
盆栽趣味の最高の楽しさは,自ら仕立てた名木を本格的に飾りつけて観賞するところ
にあります。このような飾りつけを陳列といいます。
盆栽をのせる卓ショクには,高さによって高卓,中卓(又は机卓),平卓があります。
半懸崖,懸崖などは高卓にのせ,他の樹形のものは高さや幹模様などを配慮して,中卓
か平卓にします。
添えものとしての地板は,床の間に飾るとき以外は,できるだけ青氈セイセンというフェ
ルト系の敷物をしきましょう。このほか添えものには,躑躅ツツジ類や石楠花シャクナゲなど
の小低木,草物類,あるいは水石なども用いられます。
よい陳列とは,居ながらにして素晴らしい景情を眼前に彷彿とさせるものでなければ
なりません。そのためには,主飾り(主体)と添えものがよくつり合っていることが必
要です。山の木には山の草,里の木には里(野)の草といった配慮が大切です。また季
節的な違和感を避ける必要もあります。例えば,寒々とした裸木のモミジにチューリッ
プの花では景になりません。
二つの卓を用いる場合であっても,どちらかを低くして変化をつけ,そして総体的な
調和がとれているようにして下さい。
参考「松図鑑」池田書店
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