03b 松の趣〈盆栽づくり〉
 
 〈植え替えの方法〉
 
 △植え替えは何故必要か
 盆栽は小さな鉢の中で,限られた土で生きていますので,何年か経つうちに,根が伸
び,新しい根をおろす余地が無くなったり,土は崩れて固くなって水を吸収できず,や
がて枯死します。
 そこで,若返りのため,盆栽を鉢から抜き,根を切り込み,新しい粒状の土に植え替
えることになるのです。
 △時期と回数の決め方
 植え替えの最も良い時期は,樹液の活動が盛んになり,その年の新しい芽が出る直前
です。マツ類の場合,東京では3月下旬から4月下旬までが適期です。
 回数は,若木は2,3年に1回,完成木(老木)では5年に1回位いとします。吸水
が悪くなってきたり,根が表土を盛り上げ,軽く叩くとポンと音がするようでしたら,
植え替えしましょう。
 △用度と配合
 マツ類の用土は,赤玉土7と桐生砂3(又は川砂)の割合で混合した土がよいでしょ
う。
 △鉢の選定
 マツ類にはいわゆる釉薬ユウヤク物よりも,紫泥・朱泥系の渋い色合いのセッ器の鉢が映
ります。
 幹の太い直幹:外縁の中深の長方鉢が映ります。
 豪壮な蟠幹ハンカン:外縁で深目の鉢がよいでしょう。
 双幹でやや優美な感じのもの:切立てで浅目の長方鉢か,小判の鉢がよいでしょう。
 株立ち:力強い樹は中深の長方鉢,優美な趣の樹は中深の小判鉢にします。
 斜幹:中深の小判か丸鉢とします。
 根連り:長方か小判の浅鉢で,斜面のスペースの広い鉢が向きます。筏吹きの場合も
  同じです。
 文人木:浅い丸鉢か小判の鉢,あるいはしゃれた感じの変わり鉢が映ります。
 懸崖:長方か丸の深目の鉢が向きます。
 石付き:小判の浅鉢か,あるいは水盤が向きます。
 △植え替えの順序
 植え替えの前日は,潅水を控えて,根土を落としやすいようにしておきます。
 回転台,竹箸,鋏,根切り,コテ,シュロ箒などを用意し,用土は大・中・細粒に分
けておきます。
 表土の苔は静かにとって,再び使います。鉢を斜めにしますと,鉢抜きが楽です。 
 抜きとった盆樹は回転台にのせ,竹箸で1/3〜1/4の根土を崩して下さい。
 長く伸びた根や古い根は,1/3程度を鋏で切り取って下さい。
 植え替え土は,まず赤玉土の大粒を底から1/5〜1/3入れます。次に盆樹をしっ
かり据えて中粒の混合土を入れて,竹箸でつつきながらまんべんなく土が根にゆきわた
るようにします。マツ類の場合は幾分堅植えにした方がよいでしょう。
 盛り具合は,鉢の縁周では鉢縁よりやや低目とし,根元は縁周に比べて小高くし,鉢
の胴を叩いて土を落ちつかせ,細かい化粧土を薄く卷き,コテで丹念に押して安定させ
ます。
 軽く潅水した後,根元を中心に苔を張ります。
 苔は,びろうど苔や松葉苔のようにきめ細かく,色の鮮やかなものが好まれています。
幾分湿らせて上から手で軽く押さえ,土になじませるように張って下さい。全面ではな
く,根元や太い枝の陰になるようなところに重点的に張りますと効果的です。
 苔張りが終わりましたら,底穴から水が抜けるまでたっぷりと潅水して下さい。
 △植え替え後の管理
 植え替え後は,1週間位いは半日陰に置いておきましょう。このとき表土に日光を与
えるなどして根を温めますと,活着を早めます。
 潅水は1日1回たっぷりと,またときどき葉水もやって下さい。
 1週間後に棚上に出します。施肥は1カ月後,また植え替えの年は葉刈りのような荒
い作業は差し控えましょう。
 △根張りのつくり方
 @実生苗の根を切断する方法
  発芽後,双葉が開き茎が硬くなりかけたときに,抜き取って根部を少し残して切り
 取ります。そうしますと四方張りの苗木が得られます。
 A植え替えのときに根を露出させる方法
  露出させますと,日光と外気があたって根は発達して良い根張りとなります。露出
 させたときは,半月位いは水苔で覆って急な日光を避けて下さい。
 △置場
 @四季を通じて日当たりがよく,1日のうち何時間かは日の当たるところ
 A適度の風通しがよく,あまり強風の当たらないところ
 B潅水や施肥などの管理に便利なところ
 C高さ60p程度の台や棚の上
 Dマツ類は寒さに強いですが,鉢土が凍らないところ
 △水遣り
 水遣りは,排水のよい土壌構造ですと,水と空気との新陳代謝が行われるので,根を
刺激し,生長を早め,木にも活力が生まれます。
 ゴヨウマツは葉が伸びやすいのでクロマツより控えめ,アカマツは生長が遅いのでさ
らに控えめにします。
 △施肥
 @クロマツ
  あらかじめ厳寒期に油粕3,骨粉2,米糠3,魚じめ粕2の割合のものに水を加え
 団子状して,1,2カ月おいて発酵させた置肥を作っておき,それを3月中旬,6月
 中下旬,9月中下旬に鉢に置いて下さい。
 Aニシキマツ
  クロマツに準じます。
  なお,クロマツやニシキマツは,これに,スルメの足を5pぐらいに切ったものを
 鉢の4角に挿し込んでおくとよい,といわれています。
 Bアカマツ
  油粕の単用でもいいですが,葉色をよくするためにシジミやアサリ類などを油粕に
 混ぜて,液肥にしたものを施すのもよいでしょう。
  液肥も厳寒期に,油粕1,水10の割合の溶液を腐熟させて造り,その上澄み液を原
 液として10倍程度に薄めて使用します。
 Cゴヨウマツ
  油粕,骨粉,魚じめ粕を混ぜた置肥をつくり,春は3,4月,秋は9,10月の年2
 回行います。
[次へ進んで下さい]