02d 松の趣〈松属の姿〉
 
 ハイマツ(偃松)〉
 
 @形態
 常緑針葉低木で高さ1m,地上をはって長さ10m内外に広がり,幹は多岐して斜上した
小枝を密生します。主な幹は径8〜10pとなり,樹皮は暗褐色で薄い鱗片となって剥げ
落ち,伏せた枝条からは根を出します。
 葉は短枝上に5個束生し,針状で長さ3〜5p,4〜5年生枝までついています。葉
は濃緑色で少し湾曲し,ゴヨウマツよりやや硬いです。
 雌雄同株,7月頃開花します。球果は開花した年にはあまり大きくなりませんが,翌
年7月頃には卵形〜長卵形,長さ3〜3.5p,幅2.3pとなります。球果は9月に成熟し,
卵形〜卵状楕円形,長さ3〜5p,幅3〜3.5pで柄は非常に短いです。種鱗は開裂し
ません。種子は三角倒卵形で長さ8〜11o,幅4.5〜7o,翼はありません。黒褐色で
斑点があり,ホシガラスが好んで食べます。
 A分布と性質
 本州中部以北,北海道の高山に生え,サハリン,千島,カムチャッカ,東シベリア,
朝鮮,中国東北部に分布しています。南限は静岡県光ヒカリ岳,西限は石川県白山で,富
士山や浅間山などの新しい火山には分布していません。陽樹で夏は涼しく,冬は寒冷の
地に生えますが,冬期は積雪下に保護されています。
  
 △品種
  エゾハイマツ:北海道,千島,サハリンに分布し,葉が6〜10pと長く,葉の横断
   面の樹脂道がしばしば3個現れ,球果の種鱗の上半部の肉が薄く先端が三角状に
   とがっているものもあります。
  クビナガハイマツ:球果の柄が1p以上と長く,山形県蔵王山刈田岳で発見されま
   した。
  八甲田五葉ハッコウダゴヨウ:ハイマツとキタゴヨウの雑種といわれています。葉は5個
   束生し,長さ約6pあります。北海道アポイ山以南,本州の八甲田山,蔵王山,
   舟形山,富山県下立山弥陀が原などに見られます。
  ヤクタネゴヨウ(アマミゴヨウ):九州屋久島,種子島の標高100〜800mに分布し,
   高さ20〜25m,胸高直径60〜100pになります。樹皮は幼木では灰褐色,平滑で,
   老木になりますと厚い鱗片となって剥げ落ちます。葉は短枝に5個ずつ束生して
   長さ5〜9p,雌雄同株,4〜5月に開花し,翌年の秋に熟します。球果は卵円
   形〜卵状楕円形,長さ5〜8pで短い柄があります。種鱗は乾燥しますと開裂し,
   種子は長楕円形,長さ約1pで翼がありません。
  リュウキュウマツ(オキナワマツ):沖縄県の諸島に広く生え,鹿児島県の奄美諸
   島,トカラ列島にみ分布しています。高さは20〜25mにもなり,樹皮は黒褐色で
   老木では深く裂け,クロマツに似ています。葉は2個ずつ短枝上につき,長さ10
   〜20pです。雌雄同株,4月頃開花し,翌年の秋おそく熟し,球果は狭卵状円筒
   形,長さ4〜5p,径2〜2.5p,種鱗の内面に種子が2個あり,種子は長さ4
   〜5o,翼の長さ9〜14oあります。
 
 〈松類の知識 − 外国産のマツ類〉
 
 マツ類は主として北半球に生えていて,北は極地から南はカナリア半島,北アフリカ,
アフガニスタン,ヒマヤラ,スマトラ,フィリピン,中央アメリカ,西インド諸島を結
ぶ線までに100種内外が分布しています。
 アジア地区の中国には2針葉のマンシュウクロマツ,タイワンアカマツ,ニイタカア
カマツ,2〜3針葉のウンナンマツ,3針葉のタカネゴヨウなどがあります。ヒマヤラ
地方には3針葉のヒマヤラマツ,ジラードマツ,5針葉のヒマヤラゴヨウがあります。
東南アジアの熱帯地方には2針葉のカシアマツ,メルクシマツが分布しています。
 シベリアからヨーロッパにかけて,2針葉のオウシュウアカマツがあります。
 ヨーロッパの高山には日本のハイマツに似た5針葉のセンブラマツがあり,ヨーロッ
パ南部には2針葉のオウシュウクロマツ,樹形が傘状になるイタリアアカマツ,針葉が
太くて長いカイガンショウ,2〜3針葉のアレッポマツがあり,カイガンショウとアレ
ッポマツは北アフリカにも分布しています。また北西アフリカのカナリア諸島には3針
葉のカナリーマツが分布しています。
 北アメリカには,2針葉のパンクスマツ,バージニアマツ,レジノサマツ,2〜3針
葉のエチナタマツ,3針葉のリキダマツ,ジェフリーマツ,針葉の長いダイオウショウ,
テーダマツ,スラシュマツ,カリブマツ,ときに2針葉を混じえるポンテローザマツ,
メキシコマツや,5針葉のものにはストロープマツ,サトウマツがあります。このほか
多数の種類が分布しており,中央アメリカにもカリブマツ,メキシコマツなど多くの種
類が分布しています。
 わが国では,京都大学農学部上賀茂試験地や,農林水産省林野庁森林総合研究所多摩
森林科学園などには多くの種類が植栽されています。
 
 ハクショウ(白松,白皮松):中国北部〜西部原産で高さ20〜30m,胸高直径50〜100
  pに達する常緑針葉高木,針葉は3個ずつ短枝上に束生し,雌雄同株,球果は卵状
  長楕円形,長さ5〜7pで短い枝があり,種子は食用となります。
  中国では神聖な木として王宮の庭園,寺院,名園にどに植えられています。東京で
  は小石川植物園,新宿御苑,多摩森林科学園に植えられています。
 ダイオウショウ(大王松):北アフリカ〜南部原産で高さ25〜30m,胸高直径70〜150
  pに達する常緑針葉高木で,老木になると暗褐色で厚い鱗片に割れて剥げ落ちます。
  針葉は3個ずつ短枝に束生し,長く垂れ下がります。幼木の葉は40〜50p,老木で
  20〜30pあって世界中のマツの中で最も長い葉です。雌雄同株,球果は長さ15〜20
  pです。
  日本では関東以南の暖地に植えられています。
 リキダマツ(ミツバマツ):北アメリカ東部原産の常緑針葉高木で高さ15〜20m,胸
  高直径50〜100pに達し,樹皮は黒灰色,厚く亀甲状に裂けて剥がれます。針葉は
  3個ずつ短枝に束生し,長さ7〜9p,球果は長卵形,長さ4.5〜6pで,種子は
  クロマツに似ています。陽樹で湿潤地を好みますが乾燥地でも生育し,東北,北海
  道でも育ちます。
 テーダマツ:北アメリカ南東部原産の常緑針葉高木で高さ25〜30m,胸高直径70〜100
  pに達し,樹皮は老木になると暗褐色で深い裂目ができ鱗状に剥げます。針葉は3
  個ずつ短枝に束生し,長さ10〜15p,雌雄同株,球果は楕円形,長さ5〜12pです。
  陽樹で比較的湿気のある砂質地を個のみ,関東以南に植栽されます。
 ストローブマツ:北アメリカ北東部,カナダ原産の常緑針葉高木で高さ20〜30m,大
  きいものは75m,胸高直径は2mにも達するものがある。樹皮は老木になると灰褐色
  となり,浅く鱗片状に剥がれます。針葉は5個ずつ短枝に束生し,長さ6〜12p,
  雌雄同株,球果は円筒形,長さ5〜15pです。やや適湿の地を好みますが,本州中
  部〜北海道でよく育ちます。
 ヒマヤラゴヨウ:ヒマヤラ地方原産地で5針葉の長さは10〜20p,球果は長さ15〜25
  p,東京でもよく生育します。
                           参考「松図鑑」池田書店

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