02c 松の趣〈松属の姿〉
〈ゴヨウマツ(五葉松)〉
別名 ヒメコマツ
@形態
常緑針葉大高木で高さ20〜30mに達し,胸高直径0.5〜1mになります。樹皮は若木で
は淡灰色で平滑ですが,老木では暗灰褐色で鱗片状に剥げて落ちます。枝はやや水平に
開出し,一年生枝は淡黄褐色で微毛があります。
葉は5個ずつ短枝状に束生し,針状でやや細く長さ3〜6p,幅0.7〜1o,短緑色
で少し湾曲し,質が柔らかいです。
花は5月下旬頃,高山では6月中〜下旬に開きます。
雌雄同株,雄花は新しく伸びだした長枝の下半部に多数つき,それぞれの花は茶褐色
の鱗片葉に腋生し,雌花は新しい枝の頂端に2〜3個つき,長楕円形,種鱗(心皮)は
やや扁円形で厚味があります。
球果は開花したその年には淡茶褐色,卵形で長さ約1.4p,幅9oほどの大きさで越
冬し,翌春になると肥大をはじめ,秋に成熟しきす。球果は卵状長楕円形又は長卵形で
長さ4〜8p,幅3〜4pに生長し,9月下旬には緑色から淡茶褐色に熟して種子を散
布しますが,毬果の種鱗がよく開くものと開きの少ないものとがあります。
ゴヨウマツは南方型と北方型の2変種に分けられ,南方型をゴヨウマツ(マルミゴヨ
ウ),北方型をキタゴヨウマツと呼んでいます。
A分布と性質
南方型のゴヨウマツは本州の関東以西,四国,九州,朝鮮うつ陵島の山地に分布し,
自然分布の北限は福島県,南限は鹿児島県高隈山,北方型のキタゴヨウマツは北海道か
ら本州中部まで分布し,北限は十勝国ウペペサンケ山西方,南限は静岡県気田です。
陽樹ですが,幼木ではやや日陰にも耐え,適湿なやや肥沃地でよく育ちますが,生育
は遅く,やや耐寒性もあります。福島県などの高山の風衝地では葡匐形になり,これら
は盆栽の種木にもなります。
△品種
@樹皮に特徴のあるもの
トドハダゴヨウ:直径20p以上の成木になっても樹皮がほとんど滑らかで鱗片状に
剥がれないもの
A葉に特徴のあるもの
折鶴五葉オリヅルゴヨウ(イカリマツ):葉は短く,先端が折れたように急に屈曲する
ものが混ざる
禿五葉カムロゴヨウ:葉が螺旋状に捻れるもの
霜降五葉シモフリゴヨウ(斑入り五葉):葉が全部黄白色のものと一部に黄白色の斑が入
り,緑色の葉も混ざる
蛇の目五葉ジャノメゴヨウ:葉に規則正しく黄白色の斑が入り,蛇の目傘の模様状にな
るもの
爪白五葉ツマジロゴヨウ(糠白五葉):葉の先端が黄白色になるもの
根岸五葉ネギシゴヨウ:矮生で,葉は長さ2pで短く密生して白味が強く,枝も短縮し
たもの,盆栽に多く見られる
八つ房五葉ヤツブサゴヨウ:矮生で頂芽が極めて多くて枝が短く,葉が密生して短いも
の
福島・栃木県の火山地帯から出るキタゴヨウの盆栽は,葵,瑞祥,九重などの系統
名がつけられ,また産地名をつけて四国五葉,福島五葉,那須五葉,浅間五葉,
宮島五葉などと呼ぶことがある
〈チョウセンゴヨウ(朝鮮五葉)〉
別名 チョウセンマツ
@形態
常緑針葉大高木で高さ20〜30mに達し,胸高直径40〜70m,大きいものでは1.5mにもな
ります。樹皮ははじめ暗灰色で平滑ですが,のち灰褐色の鱗片となって剥げてきます。
葉は針状で5個ずつ短枝状に束生して長さ7〜13p,幅約1.5o,ゴヨウマツより太
くて長く,質が硬いです。
花は5月下旬頃,山地は1カ月ほど遅れて開き,雌雄同株,黄色で淡紅紫色を帯びて
います。頂端に雌花をつけた新しい長枝は,さらにもう一段長枝を伸ばして2回伸びま
す。
球果はその年には長さ2.3〜2.7pほどになり,翌年の秋10月に成熟し,円錐状卵形,
長さ10〜15p,幅6〜7.5pにも大きくなります。青緑色で尖り,あまり開裂しません。
種鱗には種子が2個入っており,種子は褐色,倒卵形でやや角ばり,翼はなく,食用
になります。
A分布と性質
本州中部の山地帯から亜高山帯と,四国東赤石山脈に僅かに自生し,朝鮮,中国東北
区などな分布しています。陽樹ですが,幼樹の頃はやや耐陰性があり,適湿地でよく育
ち,耐乾性もあります。
△品種
@葉に特徴のあるもの
禿朝鮮五葉カムロチョウセンゴヨウ:葉が螺旋状に旋回するもの
斑入朝鮮五葉フイリチョウセンゴヨウ:葉に黄斑があるもの
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