04 発酵の力で心身豊かに〈納豆をどうぞ〉
参考:NHK人間講座「発酵は力なり」
〈納豆をどうぞ〉
△中国・東南アジアにもある納豆文化
納豆は、メコン川上流域の山岳地帯から、その流域にかけて食べられています。
中国雲南省辺りの西双版納シーサンパンナなどでの納豆の食べ方は、油で揚げて、お八つの
様にして食べるのです。
東南アジア − ミャンマー、カンボジア、ベトナム、ラオスなどでも納豆文化を持つ
地域があり、野菜や魚と炒めて食べるのです。
このように、納豆に火を通して調理するので、食べるときにはあまり糸を引かない状
態になります。糸を引く納豆を食べるのは、どうやら日本人だけのようです。
なお、メコン川流域には、熟鮓文化も存在します。
△納豆が旨い訳
何故納豆が旨いのだろうか。
一つは、納豆の原料は大豆で、煮た大豆に含まれる蛋白質の量は平均で17.5〜18.5%
もあり、牛肉とほぼ同じです。ですから大豆のことを「畑の牛肉」と呼ぶのです。
このように豊富な蛋白質が、納豆菌の出す蛋白質分解酵素によって分解されると、旨
味の素であるグルタミン酸を多量に含むアミノ酸になります。醤油や味噌が美味しいの
も、麹菌の作る酵素が蛋白質を分解して、グルタミン酸を多く含むアミノ酸になるから
です。
もう一つは納豆の持つ、あの匂いです。納豆の匂いは、醤油の匂いとも非常に合うと
云うことが挙げられます。
そしてわが国では昔から漬物がとても発達していて、納豆は漬物と共通した匂いを持
ってます。また味噌の匂い、くさやや熟鮓ナレズシの匂いなど、日本人が昔から賞味してき
た、いわゆる発酵の際の共通した匂いが納豆にもあり、日本人は、この匂いが好きなの
です。
また日本人が納豆に求めるのは、あのヌラヌラです。美味しさを追求することは何処
の納豆文化圏でも同じことですが、匂いとヌラヌラを追求する願望の高いのは日本人な
のです。
ヌラヌラした食べ物とは、生卵を掛けたご飯、ナメコ、ジュンサイ、モクズ、ワラビ、
トロロ等々で、日本人は好んでこのような食べ物を食べます。
我々の食べる米はジャポニカ米で粘り気がありますが、中国や東南アジアのインディ
カ米には粘り気があまりありません。
日本人が納豆が大好きなのは、他の発酵食品や調味料の匂い、主食や日常の食べ物の
ヌラヌラ感と大いに関係があるからです。
△味噌作りから生まれた納豆
江戸時代の頃は、納豆は納豆汁にして食べていました。江戸だけでなく、関西地方で
も広く食べていました。
何故納豆汁にして食べていたかには、理由があります。
味噌を作るときにはまず大豆を煮て、それで味噌麹を作ります。即ち煮た大豆を稲藁
で編んだ蓆ムシロに広げ、その上に保温のための稲藁を掛けます。そうすると、温度が低い
場合は麹菌が支配して味噌麹になりますが、温度が高い場合は納豆菌が強くなって納豆
に成ってしまいます。つまり味噌麹を作ろうと思ったら納豆に成った、と云うことで、
その納豆は味噌の仕込みには使えないので、しょうがないので味噌汁の中に入れて食べ
た、と推察されるのです。
江戸時代の文献を調べてみると、納豆汁を作るときに合わせる具は、殆どが豆腐であ
ると云うことが分かりました。つまり大豆は前述のとおり高蛋白質食品であり、その大
豆から出来る「味噌」味の「納豆汁」に、「豆腐」をも加えると、お椀の中は「大豆蛋
白質」三兄弟の揃い踏みです。
江戸時代でも、このように十分に蛋白質を摂取していたのです。
△納豆の効能
納豆の効能の一つは、消化が良いと云うことです。納豆をご飯と一緒に食べると、ヌ
ラヌラしてしっかりと噛カめませんが、それで構わないのです。納豆には、納豆菌が作っ
た澱粉分解酵素、蛋白質分解酵素、脂肪分解酵素などの消化酵素が沢山入っているので、
すぐ消化して呉れて、栄養分の吸収が非常に良くなります。
二つには、蛋白質が極めて多いので、大量のアミノ酸が摂れると云うことです。旨味
のグルタミン酸の他に、ロイシン、アルギニン、アスパラギン酸、アラニン、リジン等
々、均衡バランスの良い必須アミノ酸と一般アミノ酸が沢山含まれています。
三つには、ミネラルです。大豆には、亜鉛、銅、カルシウム、マグネシウム、カリウ
ムなどの成分が豊富に含まれているので、それが納豆に成ったことにより吸収されやす
くなるのです。ミネラルの中でも亜鉛が不足すると、味覚障害の原因になったり、精子
の減少、情緒不安、遺伝子形成の阻害などの症状が現れると云われています。
四つには、ビタミン群が豊富なことです。納豆にはビタミンB1・B2・E、ナイアシン
などが多く含まれています。中でもビタミンB2が豊富で、納豆には、煮ただけの大豆の
5〜10倍もあります。ビタミンB2の不足は、皮膚炎や脱毛、食欲不振、疲労、成長障害
の原因になります。
そして納豆には保健的機能があることも分かって来ました。納豆菌が腸の中で有毒な
菌が増えるのを防いで呉れるのです。そして最近、アンギオテンシン変換阻害酵素と云
う抗血圧上昇酵素(高血圧を下げて平常にして呉れる酵素)と、ナットウキナーゼと云
う血栓を溶解する酵素がそれです。
なお、納豆を多量(1日30sも)に食べ過ぎるとビタミンKが増加して、血液の凝固
を促進させるので、血栓症の人は食べられないとの疑問を生じますが、1日に1〜2パ
ックなら全然問題ありません(「ワルファリン」を処方されている方は担当医師とご相
談下さい)。
ところで、ビタミンKは骨とカルシウムとを結合させるのに働くビタミンなので、骨
粗鬆症を防ぐ効果が認められています。
△納豆を楽しむ
乾燥納豆、納豆茶漬け、納豆ライスカレー、納豆の漬物から、納豆デザートや納豆サ
ンドイッチなど面白い食べ方がいろいろあります。
海外へ行って長期間滞在すると、食べ物が合わなくて往々にしてお腹をこわすことが
ありますので、そのときは「乾燥納豆」を持参することをお薦めします。腸内の納豆菌
によって、悪玉菌はやっつけられるのです。1ケ月以上も滞在するときは、3sもの乾
燥納豆を持って行き、毎日のように食べるのです。
[乾燥納豆の作り方]
材料 納豆 10パック
シソの葉 10枚
片栗粉 小匙2
塩 小匙2〜3
作り方
@シソの葉を天日干ししてパリパリに乾燥させ、それを手で揉んで粉状にする。
A納豆に片栗粉小匙1、粉状シソ葉、塩を入れてよく掻き混ぜ、それを皿などに薄く
広げて天日で4〜5日干す。
B十分に乾燥したら、更に残りの片栗粉小匙1を振り掛け、袋に入れて保存する。
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