02 発酵の力で心身豊かに〈はじめに〉
 
                     参考:NHK人間講座「発酵は力なり」
 
                    「納豆、醤油、味噌、酒・・・・・・。我々の身
                   近には多くの発酵食品がある。微生物の働き
                   による発酵を利用して、人類は豊かな食の文
                   化を築いてきた。人間の知恵の結晶ともいう
                   べき、発酵の深い世界を語る。」
                    本稿は、小泉武夫講師によるNHK人間講
                   座「発酵は力なり」のテキストを参考にさせ
                   ていただき、本コーナーの主題「食而健康」
                   に沿う形で、記述してみました。
                    詳しい内容につきましては、同テキストを
                   ご覧下さい。           SYSOP
 
〈はじめに〉
 「発酵の世界」とは、目に見えない微生物の働きを、巧みなに応用して来た人間の知
恵の集積です。僅か1ミクロン(1000分の1o)、或いは0.1ミクロンと云う小さな微生
物がもたらす世界は、とにかく神秘的で素晴らしいものです。
 微生物には、いわゆる善玉菌と悪玉菌の二つがあります。人間のために良いことをし
て呉れる善玉菌とは、実は発酵菌、即ち発酵微生物です。一方の悪玉菌とは、食べ物を
腐らせてしまう微生物である腐敗菌と、炭疸タンソ菌や結核菌、梅毒菌などの病原菌です。
微生物の作用を巧く利用して人間生活を豊かにするのが、「発酵」なのです。
 
 一般に発酵とは、味噌、醤油、酒、チーズ、納豆、ヨーグルト、酢などの食べ物を思
い浮かべます。
 これらの食べ物は、「発酵の世界」の総生産額の17%程度で、残りの80数%はその他
の別の分野で利用されています。
 別の分野の中で一番大きいのは医薬品で、例えば伝染病に対する抗生物質や、抗ガン
剤、抗エイズ、抗ウイルス剤など、難病に対する薬は殆どが発酵生産物です。
 次に大きいのが薬用や食品用などの化学製品で、アミノ酸始め、ビタミン、特殊な有
機酸、ホルモンなどは微生物によって作られます。
 その次が酵素で、例えば胃腸薬に含まれる消化酵素、汚れを分解する洗剤や歯磨き粉、
血液や尿検査のときの酵素診断法などで利用されています。因みに酵素は生き物ではな
く、発酵微生物の作る蛋白質の一つで、物を合成したり分解して呉れます。
 更に発酵産業には、環境浄化発酵即ち活性汚染法やメタン発酵と云う発酵微生物を使
った廃水処理や、生ゴミを発酵させて得る農業用堆肥作りもあります。
 
 それでは、その微生物の応用によって作られる発酵食品の神秘、魅力、不思議さ、そ
して長い年月の間、人間が「発酵」と云うものに、如何に知恵を加えて関わって来たか
について述べてみましょう。
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