△けいらん(鶏卵) 参考:鹿角市発行「花輪・尾去沢の民俗」ほか
けいらんは旧盛岡藩時代から、花輪、野辺地、花巻、二戸、遠野などで作 っていた。形が鶏卵に似ているので、その名がある。 練アン・クルミ・コショウなどの味と香りが良く、汁に餅が浮かぶ姿は気品がある。夏 はソウメンも入れる。 一般に普及したのは、大正時代の頃からと云う。不祝儀の料理であるが、 作り方が大変に面倒である。 ア、前日に、 @糯米を研ぎ、お日様に干して臼で挽く。次の日、それに少しずつ熱湯を 入れ、箸で掻き混ぜながら練って、耳たぶ位の固さの生地を作る。 A糯米粉と片栗粉少々をよく篩フルイいに掛け、熱い湯を入れてこね、丸く 棒状に伸ばして生地を作る。 B白玉粉をこねて生地を作る。 C糯米と粳米とで生地を作る。 イ、小豆を煮てザラメ又は黒砂糖、塩少々を入れ、よく練ってこしあんを作 る。 ウ、こしあんにクルミ・胡椒を入れ、鶏卵の黄身位の大きさに丸めてあん玉 を作る(古い作り方は、黒砂糖の塊にクルミを入れて丸める)。 エ、あん玉を生地(皮)でくるんで鶏卵の形にし、熱湯で硬めに茹で、冷水 に取る。鶏卵の形は、片方の先が少し尖るようにすると、形がよい。 オ、出汁は、 @大正時代は干椎茸か銀茸(後にマイタケ)に、薄い醤油味の出汁。 A昆布、干椎茸(又は干しトビダケ)に、塩と醤油の出汁。 B昆布で出汁を取り、塩・酒・薄口醤油で調味する。 カ、夏場は具にソウメンも入れる(冬場は入れない)。 キ、朱か黒塗りのお椀にけいらんを二個並べ、ソウメン少々、茸(マイタケ・ 銀茸・椎茸など)を入れ、色どりにミツバを結ぶか、サンショウの葉又は葉ミ ョウガの千切り、若しくは春にはミョウガだけを刻んで載せ、熱々の出汁を 張る。 △ごとしのけいらん 上司の家で鶏卵をご馳走になった。早速帰宅して、塩漬けの菜の葉を適当 に切り刻み、すり下ろしたナガイモを絡めて食べることを「見た如し」、つ まりこれを「ごとしのけいらん」と云う。 △因みに はなびらもちは平安時代、源氏物語や土佐日記にも記され、朝廷ではお正 月に長寿を願い、齢につながる意も含めて歯固めの儀式があった。お祝いの お餅には、猪肉・鹿肉・大根・瓜の糟漬けなどのほかに、必ず押し鮎と餅鏡(も ちひかがみ、円形の薄い餅)が添えられた。これらをお餅に包んで召し上が ったものと考えられる。餅鏡に紅色の菱形のお餅が重ねられて菱葩(ひしは なびら)となり、 更にごぼうを押し鮎に見立てて現在のようなお菓子になっ たとされている。明治時代に、茶の湯の宗家が宮中の許可を得て、初釜に使 うようになってから、一般の人も食べれるようになったのである。 △けいらんの由来(推理) はなびらもちは、このように一般の人々が食べることが出来なかった。そ こで考え出されたのが、お吸い物に姿を変えて食べようと云うのである。 即ち、甘い餅菓子をお吸い物でいただく、と云うユニークな発想である。 |
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