05 普段の食
参考:鹿角市発行「鹿角市史」ほか
〈調味料〉
調味料として鹿角では、塩・味噌・スマシ・糀(麹)などが多く使われ、砂糖や醤油は高
級品であった。食用油は殆ど使われていなかった。
△塩・味噌・スマシ
塩は粗塩で、漬物や味噌作り、また魚や野菜、山菜などの塩蔵保存に大量に使われた。
料理では魚の塩焼、吸物、煮物や、青物のお浸しなどに使われた。また神事や仏事の
清めの塩として使ったり、蚊に刺されたところに付けるとか、痒カユみ止めにもなった。
味噌は農家では古くから「味噌は酸っぱくなると病人が出たり悪い事が起こる」「味
噌を買う家は蔵は建たない」と云って、何処の家でも塩分の多い味噌を造った。
「力仕事には味噌を食べると元気が出る」とされ、山仕事には飯の他に必ず味噌を携
行したと云う。また古味噌を多量に蓄えていることは、その家の豊かさを表していた。
春彼岸の頃、大豆を前日から水に浸しておき、大釜で柔らかくなるまで煮る。臼で搗
くなどして潰した大豆を、円錐状に丸めて味噌玉にし、稲藁で編んで軒下などに吊るし
て、1〜1.5カ月乾かしながら醸成する。
味噌玉は最初は黄褐色であるが、次第に赤黒く罅ヒビ割れし、隙間に黴カビの花が見え
たら取り込む。それを水に浸して臼で搗いて潰し、その味噌原料1升に粗塩5〜7合(
後になって4合位)の割合で入れ、大きな箆ヘラで混ぜて合わせる。そして掻き混ぜなが
ら桶コガ(大桶のこと)に入れ、笹の葉を被せて蓋をし、重石を載せてじっくり醸成させ
る。秋になったら全体を掻き混ぜる。二年目から瓶カメに取って食べるが、三年味噌は味
が良く美味しいとされた。この桶の味噌の上に竹篭を差し込んでおくと、味噌の汁が溜
まり、これをタマリと云って醤油の代用とした。
スマシは醤油が普及する以前は、お浸し、煮物や焼魚などに掛けた。スマシの作り方
は、味噌を3〜4倍に薄めて八分程煮る。それを麻袋か晒袋に入れて吊るすと、薄茶色
の汁が滴り落ちる。普段は白い黴の生えたものや、黒くなった古味噌で作るが、晴れの
ときの料理には、良い味噌で作ったスマシを用いたと云う。
△糀コウジ(麹)・砂糖・食用油
糀は、濁酒ドブロク・アマチコ(甘酒)・味噌や、大根の切り漬け・鰰漬け・鰊漬けなどに
用いた。
砂糖は黒砂糖が主で、他に中白チュウジロやザラメ(粗目糖)であった。また砂糖が高級
品の頃は、普段サッカリンやズルチンなどの人工甘味料を使ったり、柿皮を代用したり
した。
食用油は昭和初期までは殆ど使われず、年に1〜2合あれば足りたと云う。その後農
家でナタネを栽培し、隣町の扇田で絞って貰ったり、移動搾り機械が巡回した来たとき
に絞ったりしたと云う。
[次へ進む] [バック]