1402a 野菜「キノコ その2」
◎チチタケ 乳茸
ベニタケ科 地方名:チタケ・チダケ・ドヨウモダシとも
プロフィール:チチタケの傘は直径3〜10p,黄褐色或いは赤褐色で,初め丸く,開
くと平らから漏斗型になります。肉は厚く,締まっていて白色,香りには幾分癖クセがあ
り,乾燥すると干しニシンに似た匂いとなります。襞ヒダは白色で後淡黄色になり,褐色
の染みができやすい。茎は傘と同色です。傷付けると白色の乳液を分泌することから,
この名前が付けられました。梅雨時から秋まで広葉樹林に生えます。肉質は堅く,弾力
がないため,口当たりはボソボソしていますが,こっくりした旨味のある出汁が出ます。
多少渋味はありますが,生のままでも味噌やマヨネーズを付けて食べられます。栃木県
においては,「チタケ」と呼んで,異常な人気があります。
△食べ方と効能
チチタケの旬は夏から秋にかけてです。山々にキノコの少ない時期に採れる,希少価
値の高いキノコです。乳液が渋いものは,さっと茹でてから料理します。肉質は堅くボソ
ボソしていますが,酷コクのある旨味を持っているため,料理においては他の素材の味を引
き立てます。和風,洋風,中華風など何れの料理にも用いられますが,肉や魚など脂肪
質の素材と合わせた料理によく合います。また,汁物,スープ類には独特の旨味を発揮
します。
◎コウタケ 香茸
イボタケ科 地方名:シシタケ・クマタケとも
プロフィール:コウタケの傘は直径10〜25p,大型の漏斗型,茶褐色で角状のささく
れがあり,傘の中央部は深く窪み,ときには茎の根元に達することもあります。初め淡
紅色から次第に褐色になります。乾燥しますと殆ど黒色となり強い香気を放します。針
は傘の下面から茎の半分位のところまで付いています。秋にコナラ,ミズナラなどの広
葉樹林に生えます。独特の芳香がありますので,香茸の名前が付けられたと云われてい
ます。生食では中毒することがあるため,必ず加熱調理や乾燥保存して下さい。よく似
たキノコに,ささくれの少ないケロウジがありますが,苦くて食用にはなりません。
△食べ方と効能
コウタケの旬は秋です。香りが高く,昔から精進料理の珍菜とされるほか,地方の民
間薬とされたり,煎じた汁は化粧品として利用されました。コウタケはアクが強いので,
一般的には,下処理として茹でてアク抜きします(そのまま鍋に入れますと,煮汁が真
っ黒になります)。茹でると風味は大分失われますが,炊き込みご飯や鋤焼き,天麩羅
やフライ,汁の具,炒め物,ピラフ,卵綴じなど,いろいろな料理に利用できます。
◎ショウゲンジ 正源寺・性賢寺
フウセンタケ科 地方名:コムソウ・コモソウ・ボウズ・ボンサンタケとも
プロフィール:ショウゲンジの傘は直径4〜10pで,始め俵型後開いて平らになりま
す。傘の表面は初め白色〜紫色の絹糸状の光沢のある繊維に覆われ,やがて開いて淡黄
褐色の皺シワを生じます。襞ヒダは白色,後に錆褐色になります。茎は長さ6〜15p,太さ
0.7〜2.5p,白色〜黄土色で傘よりも淡色です。秋にアカマツなどの針葉樹林に生えま
すが,ショウゲンジが生えると,マツタケの発生が少なくなると云われています。名前
の由来は,正源寺(又は性賢寺)の僧が食用出来るとして広めたとされています。茎は
堅く締まっていて,歯切れが良く,爽やかで上品な風味があります。
△食べ方と効能
ショウゲンジの旬は秋です。色合い,姿形の美しいキノコで,歯切れ,舌触りも良い。
淡白で上品な風味に活かすよう,薄い味付けにして下さい。貝や白身魚との相性が良く,
汁物や鍋物に良い出汁が出ます。貝の酢の物やぬた,吸物,白身魚を使ったエスカベー
シュやパエリヤなどの料理のほか,風味に癖クセがないためどんな料理とも相性が良い。
◎ハタケシメジ 畑占地
キシメジ科 地方名:ウリシメジ・ニワシメジとも
プロフィール:ハタケシメジの傘は直径4〜12p,初め丸くやがて平らになり,表面
は灰褐色から茶褐色,肉は白色で厚く,引き締まっています。多少粉臭い。襞ヒダは白色
で細かく,茎は灰白色で直径1p前後,長さ3〜8pでしっかりしています。姿形全体
が天然のホンシメジによく似ていますが,ハタケシメジは梅雨時から秋にかけて,畑,
道端などに株状に群生します。シャキシャキした独特の歯応えがあり,味,香り共に癖クセがな
く,良い出汁が出ます。地面に生えるため,襞ヒダの中の土をよく落として調理して下さ
い。よく似た毒キノコにクサウラベニタケがありますが,クサウラベニタケは襞ヒダが肉
色になるので,注意しますと見分けが付きます。
△食べ方と効能
ハタケシメジの旬は秋です。短期間の保存は,新聞紙に包んでビニール袋に入れて冷
蔵保管します。長期保存は乾燥又は冷凍,塩漬けにします。全く癖クセがなく,歯切れ,
舌触りも良いので,土瓶蒸しのような薄味に仕上げるなど,品の良い料理にしますと風
味が活きます。その他,ヒラタケやシイタケ同様,味噌汁や澄まし汁,炊き込みご飯,
煮物,醤油煮,洋風のソースや煮込み料理,ピクルスやマリネ,グラタンやピザ,中国
風の炒め物や餡掛けなど,どんな料理にもよく合います。
◎ハツタケ 初茸
ベニタケ科 地方名:ロクショウモダシ・アイタケ・アイズリとも
プロフィール:ハツタケの傘は直径3〜12p,淡赤褐色で表面に濃色の同心円状の模
様があり,初め丸く,徐々に平らになり,最後は漏斗形になります。茎は直径1〜2p,
長さ2〜5p,色は傘と同色,肉質は堅いが脆モロい。襞ヒダは傘より少し淡色で細かい。
夏から初秋にかけてアカマツ,クロマツなどの林内に生えます。他の食用キノコに先駆
けて出るので,この名前が付けられました。傷付くと緑青色に変色します。他に紛らわ
しいキノコがないので,安心して採取出来ます。肉質はボソボソしていますが香りがよく
て美味しく,旨味のある出汁が取れます。
△食べ方と効能
ハツタケの旬は初秋です。マツタケと並んで古くから日本人に親しまれてきたキノコ
で,全国各地において利用されます。個性的な特徴を持ったキノコですが,香りがよく,
どんな料理にも利用され,取り分け吸物,ピクルスやマリネ,たれを付けての付け焼き
などによく合います。また四国においては,ハツタケの炊き込みご飯の人気が高い。
◎ハナイグチ 花猪口
イグチ科 地方名:ラクヨウ・ラクヨウモダシ・ジコボウ・ジゴボウ・リコボウとも
プロフィール:ハナイグチの傘は直径4〜15p,初め丸く後平らに開き,表面には著
しいぬめりがあり,黄金色から赤褐色,肉は厚く柔らかで淡黄色です。傘の内側は最初
は膜に覆われています。茎は高さ5〜10p,太さ1〜2p,黄色から錆褐色で,上部に
網目模様があります。傘の裏は網目状で初め黄色で後茶褐色になります。夏から秋にか
けて,カラマツ林に屡々円形に連なって生えます。ナメコやジュンサイなどと共に,ぬ
めりを好む日本人向けのキノコで,西洋人はあまり好みません。ぬめりとこっくりした
風味は,様々な和風料理によく合います。大きく生長したものでも,傘裏の網目は取り
除く必要はありません。
△食べ方と効能
ハナイグチの旬は夏から秋,各地において人気の高いキノコです。強いぬめりがある
ため,傘の開かない小さなものはナメコ同様に利用し,傘の大きくなったものは,小さ
く切って用います。ぬめりを活かした和風料理向きのキノコですが,ピクルスやマリネ,
グラタン,ピザなどにも合います。
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