13a 野菜「山菜野草」
 
◎ゼンマイ 薇 コゼンマイ・ハゼンマイ・ホソバゼンマイとも
 ゼンマイ科 原産地:日本,サハリン南部,朝鮮半島,台湾,中国からヒマラヤまで
 プロフィール:ゼンマイはポピュラーな山菜の一つで,各地の山麓の湿った北側の斜
面や,幼齢造林地や土手,谷沿いなどに自生します。暖かい地方では4月末から,寒い
地方では6月頃まで採れます。若芽は白か褐色の綿毛に包まれていますが,綿毛は若芽
が生長するにつれてなくなります。葉は,裸葉(栄養葉)と実葉(胞子葉)の2種類で
す。先に実葉が出て30p程伸びた頃,裸葉が1株から数本出て来ます。食べるのは裸葉
の若芽で,実葉の中には黒い粒があり食べられません。アク抜きや乾燥に手間がかかる
ため,市販品の80以上は中国からの輸入品,国産品は貴重になってきています。
 
 △食べ方と効能
 ゼンマイはアクが強いので,茹でてから用います。まず綿毛を除き,塩湯で暫く茹で,
直ぐに水に晒します。2〜3時間アク抜きしますが,まだ苦味が残っていましたら,ま
た暫く水に晒して下さい。完全に苦味を除きたいときは,茹で湯に重曹ジュウソウを入れて
茹でます。茹でたものは和え物やお浸し,煮物や炒め物,また卸し醤油や辛子醤油,辛
子マヨネーズなど,簡単な味にもよく合います。茹でたものを3〜4日日干しにします
と保存できます。
 ビタミンC,ビタミンA効力,食物繊維が豊富です。
 
◎タラノメ ウドモドキとも
 ウコギ科 原産地:日本
 プロフィール:タラノメはタラノキの若芽のことで,人気の高い山菜です。タラノキ
は落葉低木で,山麓から標高1500m位の伐採跡地,丘や林の日当たりの良い処に群生しま
す。枝や茎には鋭い刺があり,葉は枝先に固まって付きます。8〜9月に白い小花が沢
山咲きます。
 タラノメの採取時期は,桜の開花から1週間が目安で,芽(苞)が裂けて若芽を見せ
たばかりのものを摘み取ります。太くて瑞々しいものが良品です。天然物の甘くほろ苦
い味わいは,山菜の王者と呼ぶに相応しい。日本各地に分布しますが,寒い地方のもの
が美味とされます。ハウスものも多く出回っており,刺の無いトゲナシタラノキも育成
されています。
 
 △食べ方と効能
 タラノメは若芽の下部に刺があり,また苞で覆われていますので,それらを包丁で取
り除いて水洗いします。太いものは十文字に切り込みを入れ,塩湯で茹でます。茹で過
ぎますと,風味が失われますので注意して下さい。直ぐに水に晒して,笊ザルに揚げま
す。茹でたものは煮物や和え物にします。春の初物の新ジャガイモやタケノコと一緒に
煮たり,山のもの同志クルミ和えにしますと美味しい。天麩羅にするときは,生のまま
中温で揚げます。
 
◎ツクシ 土筆
 トクサ科 原産地:北半球の温帯以北
 プロフィール:ツクシは,春を告げる摘み草の代表的な存在です。ツクシはシダ植物
のスギナの胞子茎で,高さ10〜15pです。スギナは始末に負えない位に繁殖力のある緑
色の雑草で,平地から標高1000m位までの土手や道端,畦道に群生します。特に土を動か
して数年経過した処や,痩せた土壌に見られます。
 暖かい地方においては2月頃から,寒い雪国などにおいては5月頃に一斉にツクシが
顔を出します。穂の六角形をした胞子嚢の開く前の,堅いものを選んで摘み取り,節に
付いている袴ハカマを取り除いて食用にします。
 
 △食べ方と効能
 ツクシは,頭の部分に黄色の胞子が付いていますので,掌で挟んで揉むようににして
取り除いて下さい。また茎に付いている袴は堅いので,指で摘んで丁寧に剥き取ります。
塩湯でさっと茹で,水に取って冷まします。関西地方においては一般に卵綴じにします。
そのほか,ツクシご飯や和え物にします。ツクシご飯のときは,重曹を加えた水に浸け
てアク抜きし,生のまま炊き込みます。また油とも良く合いますので,炒め物も美味し
い。
 乾燥させたものの煎汁には利尿作用があり,浮腫ムクミが取れます。
 
◎ノビル 野蒜 ヒル・ヒロ・ヒルナ・タマビル・メビルとも
 ユリ科 原産地:日本
 プロフィール:ノビルは最も身近な野生ネギの一種です。ノビルとは「野の蒜」の意
味で,ニンニクやネギの古語です。『古事記』や『万葉集』の時代から食用として親し
まれてきたと云います。現在も各地に分布し,日当たりの良い土手,草地,田畑の畦道
などに自生します。葉と鱗茎を利用します。細長く伸びた葉の中は空洞になっていて,
横断面が三日月型なのが特色です。茎頂にムカゴを形成し,これによって繁殖します。
採取時期は,新芽の出る晩秋から花の咲く5〜7月までです。発達した地下茎に1〜2
pの白い球形の鱗茎が付き,鱗茎は周年採取できますが,特に葉の枯れる頃のものが充
実しています。鱗茎は引き抜き難いので,株毎丁寧に掘って下さい。
 
 △食べ方と効能
 ノビルは地中の鱗茎と,鱗茎を含めた若芽を食用とします。泥を丁寧に洗い流し,細
根は1本ずつ包丁によって切り落とすか,指で摘んで除きます。たっぷりの熱湯に根か
ら先に入れて茹で,茹で上がりましたら,笊ザルに広げて冷まします。水に晒しますと風
味が落ちます。ネギに似た特有の臭みがあり,それがノビルの美味しさです。
 生のまま味噌を付けて食べたり,茹でて辛子酢味噌で和えたり,炒め物や卵綴じにし
ても美味しい。
 強壮,強精作用があります。
 
◎フキノトウ 蕗の薹
 キク科 原産地:日本,朝鮮半島,中国
 プロフィール:フキノトウはフキの花の蕾ツボミで,里から標高1800m位の高山までの土
手や湿った野原,沢沿いなどに大小の集団を作ります。雪の少ない地方においては,2
月頃に若草色の蕾を摘みます。雪の多い地方においては,未だ雪の解けきらないうちに
雪の下で芽を出した,黄色い苞の開いたものが見られますが,その頃の芽を摘みます。
雪国において採れるものの方が,苦味が少なく,味も香りも良い。フキは蕾の季節が終
わる5月頃からは,茎と葉の旬になります。フキは,季節毎に異なった楽しみを秘める,
万能選手とも云えます。
 
 △食べ方と効能
 フキノトウは,茹でる前に根元の部分を薄く切り落とし,外側の筋っぽい葉を除きま
す。アクが強いときは,重曹を加えた湯で茹で,水に晒してそのまま1〜2時間置きま
す。茹でたものは和え物や佃煮,味噌漬にします。また茹でたものを刻んで味噌と砂糖,
清酒と一緒に練ったものをフキノトウ味噌と云い,関西地方のツクシの卵綴じに対比し,
関東地方の春の味と云えます。天麩羅にするときは,生のまま外葉を広げて内側に衣を
付けて揚げます。
 カロチン,ビタミンB1・B2を含み,健胃,整腸作用があります。
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