13 野菜「山菜野草」
 
              野菜「山菜野草」
 
                     参考:草土出版発行「花図鑑[野菜]」
 
〈山菜野草〉
 
◎アシタバ 明日葉
 セリ科 原産地:関東地方から紀伊半島にかけての太平洋岸,伊豆七島
 プロフィール:アシタバは海辺の山菜で,本州中部地方から九州までの海辺近くの暖
帯林に自生します。特に伊豆諸島の八丈島や大島の特産品で,ハチジョウナとも呼ばれ
ます。高さ1mにもなる大型の多年草で,四季を通じて収穫出来ますが,旬は2月〜5月
頃です。暖かい地方で採れるもの程柔らかく香りも良く美味しい。アシタバには,今日
若葉を摘んでも明日にはまた伸びていると云う意味があり,生長の速さが特徴です。
 栽培の歴史は江戸時代で,市場に出回るようになったのは近年のことです。太い茎を
ナイフで切りますと,切り口から黄色い汁が出ます。採取するとき株の中心を傷付けな
いないように注意し,傷を付けると翌年葉は出てきません。
 
 △食べ方と効能
 アシタバには独特の香りと旨味,仄かな苦味があります。個性的な臭いがあるので通
常は茹でてから利用します。茹でるときは塩湯に根元から入れ,茎を摘んで茹で加減を
みて,柔らかくなったら流水に晒して,手早く冷まします。根元の部分は堅いので,切
り落としてから用います。茹でたものは,和え物やサラダ,お浸し,汁の具,バター炒
め,塩漬けなどにします。また生のまま天麩羅テンプラやフライにしても良い。
 カロチンやビタミンC,鉄を多く含み,強壮作用があるとされます。
 
◎ウド(野生種) 独活
 ウコギ科 原産地:東洋や日本各地の山野
 プロフィール:ウドは春に新芽が伸び始め,初夏には小さな白色の五弁花を咲かせま
す。高さ150p程の大型の多年草です。採取時期は4〜5月で,新芽が出て丈が10〜40p
に伸びた頃,緑色の若芽と赤みがかった地下茎の間にナイフを入れて切り取ります。6
〜7月でも,伸び続ける茎の先端の柔らかい部分と,開ききらない葉が食用となります。
茎に白毛のない種類はミヤマウドと呼ばれ,同様に食べられます。
 
 △食べ方と効能
 野生のウドの茎は,短毛が密集していて赤褐色か紫褐色が濃く,風味が強く,刺激的
な味で,旬は春です。下処理として,茎と根元の境部分に付いている苞ツトを除き,堅い
根元を切り落とします。次に短毛を洗い流して,堅い皮は浅く削り取ります。そのまま
煮物にしますと,緑色を残した野生ウドならではの料理になります。白く仕上げたいと
きは,矢張り皮を厚めに剥いて酢水に晒します。生のものは,味噌を付けて食べたり,
酢の物やサラダにします。茹でたものは,梅肉や酢味噌,ごま味噌,マヨネーズなどで
和えます。
 
◎カタクリ カタカゴ・カッタコ・クゾ・ハアクとも
 ユリ科 原産地:日本,朝鮮半島,サハリン
 プロフィール:カタクリは暖かい地方では3月頃,寒い地方では5月頃,桜の花が終
わりに近づきますと,薄紫色の可憐な花が咲き始めます。春の女神と呼ばれるギフチョ
ウやヒメギフチョウが,花の蜜に誘われて飛んで来ます。そんな光景は正に春の風物詩
です。カタクリは万葉の時代からカタカゴの花として詩歌に謳われ,親しまれてきた山
菜です。昔は,地下の鱗茎を掘り出してカタクリ粉を採取しましたが,手間が要かる上,
自然を守ろうと云う考えから,現在では行われていません。
 平地から1500m位の高山にかけての,土手や雑木林の中,萱の原などに大小の群落で自
生します。これらの群落は,年々減少傾向にあると云われています。
 
 △食べ方と効能
 カタクリは若芽を摘んで食用にします。
 熱湯に潜らせる程度に茹でて水に取って冷まし,お浸しや和え物,酢の物にします。
また茹でたものを日陰干しにして乾燥させますと,保存食にもなります。これを戻して,
炒め物や餡掛け,汁の具にしますと美味しい。鱗茎は初夏の結実期に掘り出し,ユリネ
と同様に甘煮やきんとんにします。
 
◎ギボウシ ウルイ・タキナ・ヤマカンピョウとも
 ユリ科 原産地:東アジア
 プロフィール:庭先によく植えられるギボウシは日本海側の山地に自生し,葉は大き
く粉白色を帯びています。山地に自生するオオバギボウシは,葉が根生して30〜40p程
で大きい。栽培されているスジギボウシは葉に白い筋が入り,全国に分布します。葉が
細長いのはコバギボウシです。
 食用には葉が開く前の筒状に巻いている若芽を,根際で折り取ります。ぬめりがある
のが特徴です。山の落ち葉の中にあるものが,茎が太くて美味しい。柄を茹でて干した
ものは山干瓢ヤマカンピョウと呼ばれます。有毒なバイケイソウ,コバイケイソウの幼苗はギ
ボウシとよく似ており,自生地も重複するので注意して下さい。
 
 △食べ方と効能
 ギボウシは5〜7月頃の若い葉柄,葉や花が食べられます。大きな葉が開いている梅
雨の頃,根元から刃物で切り取り,塩湯で茹でます。元々柔らかいものなので,茹で過
ぎないように注意して下さい。
 茹でた葉柄は,炒め物や和え物,煮物にします。和え物にするときは,辛子マヨネー
ズや,擂った黒ごまなど,少し酷コクのある和え衣が合います。また生のまま刻んで塩を
まぶし,重石を載せて一晩置きますと,塩漬けになります。花は淡紫色で,サラダにし
ても美味しい。
 
◎クサソテツ コゴミ・コウミ・コゴメとも
 オシダ科 原産地:ヨーロッパ,アジア東部,北アメリカ
 プロフィール:クサソテツはシダ類の中で最も美味しいと云われており,全国の湿り
気のある林の中などに群生します。関東地方以南は4月,東北地方以北は5月頃が旬で
す。葉の先が巻いている若い芽を摘んで食用とします。秋になると葉の裏に胞子が付い
ており,食べられません。
 山形などでは,早出しのために栽培されています。
 
 △食べ方と効能
 クサソテツは巻いた若芽全体が食用になり,暖かい地方は4月頃から,寒い地方では
7月頃まで食べられます。
 クサソテツは採ってから時間が経過しますと,茎の下部が堅くなるので,堅い部分は
折って捨てて下さい。たっぷりの塩湯で茹で,水に晒してアクを抜きます。独特の歯応
えが残るように,茹で過ぎないようにしましょう。また長時間水に晒し過ぎますと水っ
ぽくなります。
 お浸しや和え物,ちらし寿司の具,また塩漬けにもします。
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