12d 野菜「香辛野菜」
 
◎フェンネル スイートフェンネルとも
 和名:ウイキョウ セリ科 原産地:ヨーロッパ,地中海沿岸,西アジア
 プロフィール:フェンネルは古代ローマにおいては,強精用の食物として用いられて
いました。現在では魚とよく合うことから,魚のハーブとして知られていますが,この
取り合わせはギリシア時代から続くものです。また,かつてイギリスやアメリカのキリ
スト協会においては,フェンネルの種子を噛み,お説教の際の退屈を紛らわしたと云い
ます。
 草丈が2m近くになる大型のハーブです。糸状の細い葉と傘を開いた形に咲く黄色い小
花が特徴です。種子はフェンネルシードと云い,独特の香りと辛味があり,香辛料とし
てピクルスやパンの香り付けなどに利用されます。株元が肥大するフローレンスフェン
ネルは変種です。他に葉が赤銅色になるブロンズフェンネルなどがあります。
 
 △食べ方と効能
 フェンネルの中においても,肥大化した白い茎を野菜として食べるのがフローレンス
フェンネルで,和名をアマウイキョウ,又はイタリアウイキョウと云います。葉はハー
ブに,種子はスパイスに,茎は野菜になります。魚と相性の良いハーブで,魚の生臭さ
や脂っこさを消すと同時に,すっきりとしたアニスに似た甘さが備わります。煮込みま
すと更に甘さが繊細になり,茎の部分もとろりと柔らかくなります。生のままサラダ野
菜に,またソースやグラタン,煮込み料理にもよく合います。
 乾燥には向きません。また黄ばみがありますと香りも落ちます。
 
◎マジョラム フレンチマジョラムとも
 和名:マヨラナ シソ科 原産地:地中海沿岸
 プロフィール:マジョラムは古代ギリシア時代から栽培され,幸福と美食を象徴する
と云われる香草です。殺菌効果があるとされ,床や家具の消毒に用いました。現在はそ
の芳香成分を香水や石鹸作りに利用しています。食材としては,肉のハーブとも云われ,
あらゆる肉に合います。また,トマトとの相性も良く,イタリア料理には欠かせないハ
ーブの一つです。
 一般に利用されるのはスイートマジョラムと呼ばれるもので,卵形の葉を付け,夏に
は白い小花が集まるようにして咲きます。草全体に強い精油分がありますので,香りを
楽しむフレグランスガーデンにも向きます。
 食用にするときは,生と乾燥どちらも利用出来ますが,乾燥の方が香りが強いため,
利用度も高い。
 
 △食べ方と効能
 マジョラムの香りはタイムに似ていて,甘くて優しい万人向けです。肉のハーブと云
われますように,ソーセージやパテ,ミートローフなどの挽肉料理に入れたり,肉の煮
込みやローストに用いられることが多い。香りが優しい分,長く火を通しますと独特の
香りが消えてしまうので,さっと火を通す程度にします。長く煮込むときは,タイムと
合わせて用いますと,風味の相乗効果が期待出来ます。
 マジョラムは乾燥に向くハーブで,ドライにしたものをスープやソース,シチューの
香り付けとして仕上げに加えますと効果的です。
 
◎ミント類
 シソ科 原産地:ヨーロッパ南部,ユーラシア,アフリカ
 プロフィール:ミントの仲間は世界各国に自生しています。繁殖力が強く雑交配しや
すいため,正確な品種の把握が困難な程,多数存在すると云われています。よく知られ
ているのはメントールの含有量が多く,爽やかなペパーミント,甘い香りで飲物や菓子
に用いられるスペアミントです。スペアミントはペパーミントに比べますと甘味のある
香りがするため,料理用としてよく利用されます。
 ペパーミントはミントに中においても特に殺菌,駆虫効果に優れていると云われます。
また,生の葉を潰したものは湿布薬として,肌の炎症や打撲傷の治療に用いられます。
他にデザートや飲物の風味付け,ポプリなどに利用されます。
 
 △食べ方と効能
 ペパーミントはピリッとした清涼感があり,スペアミントは清涼感の中にも甘さがある
のが特徴です。その他フルーツの香りがするアップルミントやオレンジミント,オーデ
コロンミントなど様々な種類があります。イギリスにおいては,ラムのローストには必
ずミントソースが添えられ,ジャガイモやマメ,卵料理の鍋にも,ミントの葉が入りま
す。中近東においては,ミントと砂糖をたっぷり入れたコップに,熱湯を注いだ甘い甘
いミントティーが,暑さに耐えるエネルギー源になっています。乾燥も出来ますが風味
が落ちるので,フレッシュなものを利用して下さい。
 
◎ローズマリー マンネンロウ・シーデューとも
 シソ科 原産地:地中海沿岸
 プロフィール:ローズマリーは,ヨーロッパにおいては魔除けの聖木として古くから
知られており,花嫁が一枝身に着ける習慣があります。枝分かれが旺盛で,形を整えや
すいため庭木としても人気がありますが,ルネサンス文化が花開いた16世紀頃のイギリ
スにおいては,装飾的な刈り込みを楽しんでいたと云います。
 高さは1m以上になり,蝋質で濃緑色の針状の葉が密生します。初夏から白,ピンク,
ブルーなどの花が咲き始めます。精油に老化防止の成分が入っているために,若返りの
ハーブと云われ,化粧水やヘアリンスにも用いられています。また,強く爽やかな香り
には頭脳を明晰にする働きがあるとされます。
 
 △食べ方と効能
 ローズマリーは,野性的な森林のような強い香りが特徴です。香りが強いため,好き
嫌いがありますが,イタリアにおいては頻繁に用いられるハーブの一つです。特にラム
のローストにはぴったりで,塩を振ってローズマリーを散らせば,それだけで十分な味
付けが出来ます。
 その他豚肉や鶏肉,鰯イワシや鯵アジなど癖クセのある素材や,ジャガイモ,チーズ,バタ
ーなどにも向きます。また,クッキーやマフィンのタネにローズマリーを加えますと,
風味が良く,甘さも引き立って一層美味しくなります。
 乾燥出来ますが,矢張り風味は落ちますので,できればフレッシュなものを用いて下
さい。

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