12b 野菜「香辛野菜」
◎セリ 芹 カワナ・カワナグサ・ネジログサとも
セリ科 原産地:ユーラシア,熱帯アフリカ
プロフィール:セリはわが国に自生し,春の七草の一つとしても知られています。そ
の歴史は古く,『万葉集』にセリ摘みの歌が詠まれています。また,平安時代の『延喜
式』に栽培方法が記載されていることから,千年以上も前から栽培が始まっていたこと
が分かります。セリと云う名は,清水の湧き出るところに競り合って生えているところ
から付けられたと云われています。
△食べ方と効能
セリの旬は初春から初夏にかけてです。真っ直ぐにピンと伸びていて,葉の緑色が濃
く,シャキッとしているものが新鮮です。茎が太いものは堅いので注意して下さい。保存は,
湿った新聞紙に根元を包んでラップで密封し,立てたまま冷蔵保管します。
独特の香りと歯触り,鮮やかな色を楽しむ野菜です。アクが強いので,さっと茹でて
から用います。お浸しや,酷コクのある味付けの和え物,鍋物などに利用します。
◎タデ 蓼 ホンタデ・マタデとも
タデ科 原産地:北半球
プロフィール:タデは,日本全土の水辺に自生しています。『万葉集』にタデを詠ん
だ歌があることから,奈良時代には栽培されていたようです。辛味が強く,独特な香り
がありますが,それでも害虫が付くので,「タデ食う虫も好きずき」と云われます。食
用とされる種はヤナギタデで,アイはその代用とされますが辛味はありません。ヤナギ
タデには,葉や茎の赤いベニタデ(アカタデ)やホソバタデ,緑色のアオタデやアザブ
タデ,ササタデなど多くの品種があります。ベニタデの子葉を芽タデと云い,辛味があ
り見た目も美しい。ササタデは,タデ酢として鮎料理に用いられます。ベニタデは周年
出荷され,アイタデは5〜8月が旬です。
△食べ方と効能
最も一般的なタデはベニタデで,赤色が濃く艶のあるものが良品です。保存は濡れ新
聞紙に包んでラップに入れ,冷蔵保管します。
辛味が強く,普通は刺身のつまや鍋物の薬味に用いられます。また,彩りとして小鉢
や酢の物に散らすこともあります。生の白身の魚とエンダイブなどの葉野菜を合わせた
サラダに散らしますと,和洋折衷の楽しさが味わえます。
魚の生臭さを除くなどの解毒作用があります。
◎ハマボウフウ 浜防風 イセボウフウ・ヤオボウフウとも
セリ科 原産地:日本,中国
プロフィール:ハマボウフウは,全国の海岸の砂浜に自生します。根が地中深く入っ
ているため,砂が風によって飛散するのを防ぐことからこの名が付いたと云われていま
す。若葉は古くから食用に利用されてきました。
市場に出回るハマボウフウの殆どは栽培品です。若葉と,軟化床によって軟白した葉
枝を食用にします。ヤオヤ(八百屋)ボウフウとか,ハマゴボウとも呼ばれます。単に
ボウフウと云いますと,漢方の「防風」を指し,別の植物です。
△食べ方と効能
ハマボウフウは,若芽と若葉は早春に,根は夏から秋にかけて収穫されます。葉に艶
と張りがあり,緑色の濃いもの,茎の赤色が鮮やかなものが良品で,あまり大きなもの
は堅い。砂地に育ちますので,砂を十分に洗い流し,下部は堅いので切り落として用い
ます。そのまま刺身のつまやサラダ,汁の具にするほか,茹でて和え物やお浸しにしま
す。根を焼酎に漬けますと,健康酒になります。
ビタミンA効力とビタミンC,食物繊維が豊富です。
◎ワサビ 山葵
アブラナ科 原産地:日本
プロフィール:ワサビは,北海道〜九州の山間の渓流に自生します。その歴史は古く,
文献に登場するのは,918年の『本草和名』からです。栽培が始まったのは江戸時代から
で,魚毒や魚臭を消すと云われ,この頃から握り鮨にワサビを塗るようになりました。
幾つかの品種がありますが,地域的異変が多い。茎の色により,青茎系,赤茎系,白
茎系に分けられます。また,栽培法により,流水によって作る水ワサビ,畑において作
る畑ワサビの2種にも区分されます。葉茎と葉の部分を葉ワサビ,花の付いた花茎を花
ワサビ,どちらも和え物などの食用になります。
△食べ方と効能
ワサビは多年生草本ですので年中収穫でき,特に旬はありません。卸す前に茎を切り
離して,塊茎の疣イボのような凸部を包丁でこそげ落とします。卸すときは,茎が付いて
いた方から卸して下さい。辛味を出すため目の細かい卸し金を使い,円を描くように卸
すのがポイントです。更に包丁の背で叩きます。一度に使いきれないときは,摺り卸し
たものをラップに包んで冷凍保管します。
茎の部分はさっと茹でて,甘酢漬けや粕漬け,お浸しにします。
◎オレガノ ワイルドオレガノとも
シソ科 原産地:ヨーロッパ,地中海沿岸
プロフィール:オレガノは,愛と美の女神ヴィーナスの手に触れたため,今でも良い
香りがし続けていると云われているハーブです。蛇や蠍サソリなどの毒液の解毒剤や,蟻アリ
除けとしても有名です。また,トマトとの相性が大変良く,イタリアやメキシコ料理に
は欠かせません。
日当たりと水捌けミズハケの良い乾燥した土を好みますが,繁殖力旺盛で,半日陰にも強
く,耐寒性にも優れています。美しい緑の葉が生い茂り,初夏には薄紫の小花が茎の先
に集まって咲きます。葉を料理に用いたいとは,開花直前に収穫して下さい。生より乾
燥させますと使いやすく,香りも強い。乾燥葉は,緑や黄色の染料にもなります。
△食べ方と効能
オレガノは,英名"ワイルドマージョラム"のように,野生種に相応しい男性的な香り
が特徴です。イタリア,スペイン,メキシコ料理には欠かせないハーブの一つで,特に
イタリア料理においては,トマトソースを作るのに必需品です。
わが国のように多雨な地域で育ったオレガノは香りが弱いので,一般にはイタリアか
ら輸入した乾燥品を用います。擂り鉢で擂るか,手で揉んでから素材に加えますと,香
りが一層良くなります。トマトのほか,ナス,インゲン,チーズ,肉,魚などとも相性
が良く,芳香が強いので,素材の臭い消しにも重宝されます。
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