12a 野菜「香辛野菜」
 
◎サンショウ 山椒 ハジカミとも
 ミカン科 原産地:東アジア,北アメリカ
 プロフィール:サンショウは高さ2〜3mの落葉低木です。古くは『魏志倭人伝』や『
古事記』に,椒ハジカミの名で載っていますように,最も古くからある香辛野菜であると云
われています。平安時代からは,のぼせや咳,下痢などに効果があるとされ,薬用とし
て用いられていたようです。元々北海道から九州までの山野に自生していたものですが,
明治時代から栽培されるようになりました。昔から食べ物に風味を添えるのに用いられ
ていたようですが,現在においてもその香りと辛味を活かし,様々な料理に用いられて
います。また,木の幹は堅く,香りも良いため,すりこぎにも加工されます。
 若芽を木の芽と呼び,4月〜5月に付ける黄色い花を花ザンショウ,その後に結実し
た青い実を青ザンショウ,成熟した実を実ザンショウと云います。実ザンショウのうち,
実が裂けて種子が弾けたものを割りザンショウ,青ザンショウを粉にしたものを粉ザン
ショウと呼びます。サンショウには雄株と雌株があり,実のなるのは雌株の方です。そ
のことから,雌株を実ザンショウ,雄株を花ザンショウとも呼びます。
 栽培ものは周年出回りますが,木の芽や花ザンショウは春,実ザンショウは初夏が旬
です。
 
 △食べ方と効能
 サンショウは新芽から果実までが,我々の食生活の様々な場面で薬味として登場しま
す。例えば実を粉末にした粉ザンショウなどは,鰻ウナギ料理に欠かせない薬味です。
 木の芽の旬は4〜5月です。色が鮮やかで柔らかいものが良品です。香りが大切な野
菜なので,出来るだけ早く使いきることが大切ですが,保存には濡れた新聞紙に包んで
冷蔵保管します。
 花,実,葉をそれぞれ出汁ダシと醤油,味醂などで煮たものが,常備菜として年中利用
できます。その他花ザンショウは,ナスやインゲンと一緒に煮物にします。木の芽は刺
身のつまや料理のあしらい,香り付けに利用します。木の芽を擂鉢で擂り,味噌と混ぜ
合わせて木の芽味噌にして田楽にしたり,砂糖と塩で味付けして和え衣を作り,ウドな
どを和えて木の芽和えにしたりします。そのまま細かく刻んで魚の上に散らして焼きま
すと,木の芽焼きになります。煮物のあしらいや汁物の吸い口にするときは,掌に載せ
てパンと叩きますと,葉脈が傷ついて良い香りが出ます。
 木の芽はカルシウムが豊富で,他に食物繊維も多い。実ザンショウは漢方薬において
も用いられ,胃を丈夫にしたり,筋肉の凝りコリを解ホグしたり,利尿作用や駆虫作用,整
腸作用があるとされています。
 
◎ミツバ 三つ葉
 セリ科 原産地:東アジア、北アメリカの温帯
 プロフィール:ミツバを食用にしているのは,わが国と中国のみです。わが国におけ
る栽培は江戸時代元禄年間から始まり,享保年間には軟化栽培がされていたと云われて
います。緑の鮮やかさと香りの高さ,歯触りの良さから,日本料理には欠かせない食材
です。
 市販されるミツバには,青ミツバ,切りミツバ,根ミツバがあります。青ミツバは糸
ミツバとも云い,露地栽培やハウスに密植して軟弱に伸長させたもので,近年は水耕栽
培され年中出荷されています。切りミツバは株を養成して軟化床に伏せ込んで(軟化栽
培),根を切り取ったもので,多くは11月から3月にかけて出荷され,柔らかくアクの
少ないのが特徴です。根ミツバは株を養成し,土寄せして軟化栽培したもので,根付き
のまま収穫し,その根も食べ,多くは春先に出荷されます。
 
 △食べ方と効能
 ミツバの旬は春から初夏にかけてです。香りが良く,葉の色が濃くて黄ばみのないも
の,艶のあるもの,茎が真っ直ぐでピンと張りのあるものを選んで下さい。茎が折れた
り,茶色に変色しているものは避けて下さい。傷みが早いので,入手したその日のうち
に使いきって下さい。残りましたらラップに包んで冷蔵保管します。
 さっと茹でて,茎を結んだものを吸物に浮かせたり,刻んだものを茶碗蒸しや混ぜ寿
司に散らすなど,少量を香り付けに用いるのが一般的です。そのほか,生のままサラダ
にしたり,茹でたものをお浸しにしたり,根ミツバはキンピラにしても美味しい。茹で
るときは,熱湯にさっと潜らせる程度にし,直ぐ冷水に放しますと,歯触り良く,緑色
が一段と鮮やかになります。
 青ミツバはビタミン類,ミネラル類共に豊富に富みますが,アクが強い。一方軟白栽
培されたミツバは柔らかくアクも少ないが,栄養素の量は青ミツバに劣ります、
 
◎ミョウガ 茗荷
 ショウガ科 原産地:アジア東部
 プロフィール:ミョウガは日本全土に自生し,現在においてはわが国特有の香辛野菜
です。『魏志倭人伝』にミョウガの漢名が見えるほか,平安時代の『延喜式』には供御
の漬物として栽培規定が記載されているなど,食用として古くから親しまれていました。
 品種は多くなく,地方毎に在来種が土着しています。早生種・中生種・晩生種に分け
られます。早生種は夏に花を付けますので夏ミョウガ,中生・晩生の品種は秋に花を付
けますので秋ミョウガと云います。夏ミョウガは収穫が早いが,小さくて収量も少ない。
一方秋ミョウガは収穫は遅いが,大きくて収量も多い。
 食用になるのは,蕾ツボミと軟化栽培した茎で,蕾を花ミョウガ(ミョウガの子とも),
茎をミョウガタケと云います。花ミョウガには早生種を用い,ミョウガタケは中・晩生
種を用いることが多い。
 
 △食べ方と効能
 夏ミョウガは6〜7月,秋ミョウガは8〜10月に出回り,ミョウガタケは11〜3月と
3〜5月に出回ります。
 ミョウガは熟すと丸味を帯びてくるので,ふっくらとした丸味があり,赤みがあって
光沢のあるもの,花が咲いていないものが美味しい。大き過ぎるものは堅く,花が咲い
ているものは空洞が出来ています。ミョウガタケは茎が白くて葉先が淡赤色のものを選
んで下さい。保存は,乾燥しないように霧を吹いて冷蔵保管します。
 多くは刺身や麺,鍋物の薬味,酢漬けや汁の具に利用します。その他天麩羅や卵綴じ
トジにしても美味しい。青シソと一緒に酢飯に混ぜ合わせますと,暑い夏にぴったりのさ
っぱり味のミョウガご飯になります。ミョウガタケは,針にように細く切って水に放し
てシャキッとさせて,刺身のつま(けん)にします。
 栄養的にはビタミン,ミネラルともに少なく,あまり期待出来ません。
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