1002 野菜「中国野菜」
野菜「中国野菜」
参考:草土出版発行「花図鑑[野菜]」
〈中国野菜 その2〉
◎シャンツァイ(香菜) 中国パセリ・コエンドロとも
和名:香菜コウサイ,コシ,コニシ セリ科 原産地:地中海沿岸
プロフィール:シャンツァイは,生草が強烈な香りがある香辛野菜で,東南アジアに
おいて広く利用される東アジア型と,ヨーロッパ型があります。代表的なものとして東
アジア型には香菜と,ヨーロッパ型にはスペインや中南米料理に多用するコリアンダー
があります。
古代エジプトの遺跡の中から種子が発見されたとも云われており,古くから利用され
ています。紀元前2世紀に中国へ渡り,平安時代の『和名類聚抄』『延喜式』に記載が
あり,わが国へは10世紀までには渡来したと考えられます。また江戸時代に,ポルトガ
ル人によってヨーロッパ型のものが伝えられましたが,日本人の口に合わなかったのか
普及しなかったようです。
強烈な香りのある小葉は,薄く羽状に裂けており,2〜3pです。その強烈な香りを
活かし,肉や魚の臭い消しや,風味を付けるために用いられます。初夏に白く小さな花
を付け,果実は丸い淡い褐色です。未熟果は,葉と同様の香りがあり,成熟して行くに
つれ,甘い芳香に変化して行きます。この種子をそのまま,若しくは粉末にして香辛料
として利用します。また種子は漢方では,胡菜子として健胃や発汗に良いとされます。
△食べ方と効能
シャンツァイは,わが国においてはつい最近になって,特にエスニック系のレストラ
ンにおいて初めて口にする人が多くなった野菜です。中国から東南アジア,ヨーロッパ,
アメリカからラテンアメリカまで,世界各国において親しまれている重要なハーブの一
つです。キンサイ同様,三つ葉に似ていますが,風味は全く異なり,一種独特です。慣
れるとなくてはならない野菜であると云う人と,全く口に出来ない人とに,はっきり分
かれる程強烈な個性があります。
茎や葉がシャキッとしていて張りがあり,葉に変色や萎れのないものが新鮮です。直ぐに
萎れてきますので,成る可く早く使いきって下さい。保存は新聞紙に包んで冷蔵保管し
ます。
加熱しますと独特の香りが飛んでしまいますので,成る可く生のまま用いて下さい。
中国料理においては,葉をお粥やスープの仕上げに散らして,香りと彩りを楽しみます。
また炒め物や揚げ物に添えたり,鍋物の薬味にも用いられます。欧米においては葉より
も種子を用いることが多く,種子はコリアンダー・シードと呼ばれ,スパイスの一種とし
て扱われています。葉と種子とでは風味が全く異なり,種子はピクルスや煮込み料理の
ほか,パンやお菓子にも利用されます。
ビタミンA効力,ビタミンB1・B2・C,鉄が多く含まれます。中国においては風邪や
肝臓病に良いとされ,中世ヨーロッパにおいては媚薬としてもてはやされました。
◎セリホン 葉カラシナ・遅菜(チイサイ)とも
アブラナ科 原産地:中国揚子江一帯
プロフィール:セリホンは特有の辛味と風味のある中国野菜で,カラシナの仲間です。
セリホンは農林水産省の統一名称で,中国においては雪里紅と呼ばれています。
他のタカナ・カラシナ類が南の暖かい地方で栽培されるのに対し,このセリホンは寒
さや乾燥に強いため華中から華北で多く栽培されています。わが国へは1939年に導入さ
れ,千筋菜芥子の名で試験栽培されましたが,未だ普及したと云えるまでには至ってい
ません。
セリホンの葉はカラシナに似ていますが,葉の縁に細かい切れ込みがあり,1株に付
く葉数はカラシナより多い。株は大きくなりますと分かれます。通年栽培が出来,生長
した茎も柔らかい。
△食べ方と効能
セリホンはカラシナの仲間で,中国においては塩漬けにし,その発酵した特有の旨味
を活かして,料理の風味付けに用います。新鮮なものは葉先までピンとしていて,葉の芯
の部分が綺麗な白色をしています。葉の周囲が変色しているものや,傷や虫食いの痕が
あるものは避けて下さい。
生のものはピリッとした辛味があり,それが美味しい野菜です。茹でますと辛味がなく
なり,少し苦味が出ます。株の下方は,ホウレンソウなどと同様,土が残っている場合が
ありますので,流水で丁寧に洗って下さい。漬物にするときは,日陰干しにしてから,
ハクサイの塩漬けの要領で,塩,セリホン,塩の順に重ねて漬けます。水が上がりまし
たら,容器を綺麗に洗って,同じように塩を振りながら重ね,重石をして本漬けをしま
す。再び水が上がれば出来上がりです。そのまま食べたり,料理に用いたりと,幅広く
利用出来ます。そのまま料理に用いるときは,さっと茹でますと風味が良くなります。
お浸しや和え物,汁の具,炒め物,煮物,サラダなど,わが国のカラシナと同じように
料理出来ます。
ビタミンA効力,ビタミンB1・B2・Cが多いほか,鉄やカリウムなどのミネラル類も
豊富です。
◎タケノコハクサイ(紹菜シャオツァイ) 筍白菜
アブラナ科 原産地:中国山東・河北
プロフィール:タケノコハクサイは結球する大白菜の一種で,その形が長円筒形で,
直径約15p,高さ40〜50pにもなることから,筍白菜と云う名前が付きました。中国に
おいては現在,原産地の山東・河北において広く栽培されています。
比較的冷涼な気候を好み,結球温度は15〜16℃と云われています。このことから,晩
夏から初秋に種子を蒔いて,下降気温下で生長させます。わが国の白菜との違いは,葉
の緑色がより濃く,やや水分が少なく堅めで貯蔵性が高く,高熱の料理に適することで
す。収穫した株を日陰で4〜5日乾かし,外葉毎新聞紙に包んで,雨に当たらない気温
の低い処に貯蔵します。
野菜自体に匂いなどの癖クセもなく,肉厚で調理してもその形は崩れにくい。
△食べ方と効能
タケノコハクサイは,わが国のハクサイのようなずんぐり形ではなく,細長くすらり
とした形が特徴です。ハクサイ同様,軸の部分は白くて,傷や変色のないもの,葉は色
鮮やかで瑞々しいものが良品です。保存はビニール袋に入れて,立てて冷蔵保管します
と,日持ちがします。
ハクサイほど巻きが強く有りませんので,一枚一枚剥がして,しかも縦に長いので,
他の素材を芯にして巻くのに都合が良い。含まれる水分が少ないので,堅そうに見えま
すが,火を通しますとハクサイよりも短時間で柔らかくなります。
天津冬菜と云う名で売られている壷入りの漬物は,このタケノコハクサイを一度干し
てから細かく刻み,ニンニクや塩で漬け込んだものです。そのまま食べるには,少し堅
くて塩辛いが,煮込み料理や鍋物の味出しの用いますと,旨味がぐんと深くなります。
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