10 野菜「中国野菜」
 
              野菜「中国野菜」
 
                     参考:草土出版発行「花図鑑[野菜]」
 
〈中国野菜 その1〉
 
◎中国ダイコン
 アブラナ科 原産地:地中海沿岸,中央アジア,中国西部
 プロフィール:中国において蘿匐ロオボと呼ばれるダイコンは,古くから栽培されて来
ました。最も古い記録として,紀元前400年の書物には「ローフクイ」の名で記載されて
います。中国ダイコンは,華北型・華南型・中国小ダイコンの三つの群に大別されます。
 華北型は華北から東北,朝鮮に分布します。華北型には青長,紅心,紅丸などの品種
があります。
 華南型は華中から華南に分布し,日本ダイコンに最も関連が深く,華南型の品種には
エベレストがあります。
 中国小ダイコンは華北から東北,朝鮮,中国西部の高原地帯に分布しています。ヨー
ロッパダイコンとも関連のある品種群です。中国小ダイコンの代表的品種にアルタリが
あります。
 わが国に渡来したのも古く,農耕時代初期と云われており,わが国の主要野菜の一つ
として大きく発展して来ました。現在,中国野菜と云われているダイコンは,中国から
改めて導入された品種のことを指します。
 中国ダイコンとして食べられているものは,日本ダイコンに比べ,全体的に小さく,
根の長さも短めのものが殆どです。赤や緑色のものもあり,形も円筒,円錐,長円錐,
丸,偏平など多様です。
 
 △中国ダイコンの主な品種
 @青長:華北型の品種の一つ,円筒形で全体が淡い緑色を帯びています。
 A紅心コウシン:華北型の品種の一つ,丸形で外皮は白,首部は緑,中は赤い。
 Bエベレスト:華南型の品種の一つです。華南型全体の特徴としては,中型で色は白,
  肉質が柔らか点が挙げられます。
 Cアルタリ:中国小ダイコンの品種の一つで,葉に油滑感があります。韓国系の青首
  ダイコンが国内において僅かに栽培されています。短根系で日本種に比べて小さく,
  肉質は堅い。
 
 △食べ方と効能
 中国ダイコンは,秋から冬にかけて出回るカラフルなダイコンです。肉質は緻密で甘
く,加熱して食べるには惜しいものばかりです。中国においては,紅心(中国名は心里
美)を果物代わりに生食します。
 紅心ダイコンは,外側は白く,首部が緑,内側には赤色の放射状の線が入っていて美
しい。赤色は,茹でますと茹で湯に色が移り,白くなってしまいます。またダイコン特
有の青臭さや辛味もなくなりますので,加熱せずに生で食べた方が良い。千切りにして
水に晒しても色は抜けますので,赤色を残すためには切ったら直ぐに酢水にさらして色
を安定させることです。酢の物にしたり,サラダにしてレモンドレッシングを掛けたり
など,酢を加えた食べ方にしますと,色も味も楽しめます。
 紅丸ダイコンは外側が赤く,内側は白い。矢張り加熱によって赤色が褪せますので,
生のまま酢を用いた料理にして下さい。辛味のあるときは,さっと茹でたり,塩揉みを
してから料理します。
 青長ダイコンは,外側も内側も緑色,透明感があってとても美しい。塩を加えると色
が冴えますが,加熱すると悪くなります。卸しや酢の物,サラダ,漬物など生で食べま
す。なお,加熱しますと甘味は増します。
 ダイコンと同じで,水分が多い野菜,ビタミンCは比較的多いが,卸しにしますと損
失が激しいので,食べる直前に卸して下さい。
 
◎エンサイ クウシンサイ・アサガオナ・カンコンとも
 ヒルガオ科 原産地:熱帯アジア
 プロフィール:エンサイは,中国南部から東南アジアにかけての広い地域に野生種が
あり,栽培もされる夏野菜です。高温を好み,土壌水分の多い湿り気のある処で生長し
ます。わが国においては沖縄で栽培されており,第二次世界大戦後南方で生活した人等
がグループで栽培していたこともあり,そのときこの中国野菜を「エンサイ」と呼んで
いたことに名の由来があります。また別名のクウシンサイとは,エンサイの茎の中が空
洞になっていることから空心菜,アサガオナはその花がピンク,帯紫,白など朝顔の花
を小さくしたような形をしていることから朝顔菜,カンコンとはフィリピンにおける呼
び名がわが国に入って来たものです。
 中国南部においては,池沼に浮かべた筏イカダに挟んで栽培するなどの水生植物ですが,
陸生のものもあります。1980年頃から広く出回るようになりました。サツマイモに良く
似ていますがイモはできず,若い茎葉を利用します。
 
 △食べ方と効能
 エンサイの旬は7〜10月です。茎と葉,それぞれに特徴があり,別々に用いれば二つ
の素材として楽しめます。茎は空心菜と云われる通り,ストローのように中心が空洞に
なっています。葉は濃い緑色,形は細長いハート型でサツマイモに似ていてとても柔ら
かい。茎は真っ直ぐに伸びて折れていないもの,葉は張りがあり,瑞々しくて緑の濃い
もの,萎れたり変色のないものを選んで下さい。
 蔓が伸び始める前の柔らかい葉や茎を食べます。茎も葉も無味無臭で食べやすい。茎
は好みの堅さに塩茹でして和え物やお浸しに,また生のまま炒め物にしても良い。
 葉はアクは少ないが,加熱後に緑色が黒変するので,料理したら直ぐに食べて下さい。
矢張り塩茹でしますが,元々柔らかい葉なので,熱湯にさっと潜らせる程度で良いでし
ょう。水に晒して急冷し,水気をきつく絞ってお浸しにします。加熱しますとぬめりが
出ますので,特有の口当たりが楽しめます。味付けは,ごま油やオイスターソースなど,
濃いめの酷コクのあるものが合います。
 ビタミンAが豊富で,吸収を良くするために油と一緒に食べて下さい。鉄も多く,貧
血に効果的です。
[次へ進んで下さい]