09a 野菜「京野菜」
 
◎賀茂ナス
 プロフィール:賀茂ナスは紫の濃い,ふっくらと丸い形をした,わが国において一番
大きいナスで,京の伝統野菜の中において最も著名です。直径はおよそ12〜15p,作り
方によっては1s近くにもなります。肉質がとても緻密で,手に持つとずしりと重く感
じられる程です。栽培の中心は,名の通り上賀茂地域で,明治時代以降から受け継がれ
て来ました。賀茂において栽培される以前は,芹川周辺において作られていましたので,
大芹川とも呼ばれます。作り手には手強い相手で,「ナスの女王」的存在です。葉脈・
蔕ヘタ・幹に大きな刺を多数持ちます。しかし,農家の賀茂ナスに懸ける情熱は高く,優
良系統を守りながら,手作りの味わいある丸ナスを育んでいます。盛夏,祇園祭りの頃
に最盛期を迎えます。
 
 △食べ方と効能
 賀茂ナスの旬は夏です。形が丸く,艶があって傷のないもの,萼ガクにピンと張りがあ
って刺が鋭いものが新鮮です。京都においては田楽や揚げ物,揚げ出汁にすることが多
い。田楽はしぎ焼きとも云い,賀茂ナスを輪切りにして空揚げにし,甘く煮た味噌をた
っぷり載せます。また揚げ出汁は,空揚げにした賀茂ナスに大根卸しを載せ,出汁と砂
糖,味醂,醤油を合わせた掛け汁を張ります。そのほか,挽肉を詰めたものにホワイト
ソースを掛けてグラタンにするなど,洋風の料理にも合います。
 
◎水菜 京水菜・京菜・千筋京水菜とも
 プロフィール:水菜は日本特産で,京都に古くから栽培される漬菜です。昔,京都東
寺九条辺りにおいて肥料を使わないで栽培し,水と土だけで作っていたことが,水菜の
名の起こりと云われます。全国各地に伝わり,地方においては京菜などと呼ばれました。
京都の八百屋の店先に水菜が並び始めると,冬も本番と云われる冬野菜です。
 水菜は良く枝分かれし,一株の葉数は600以上,株重量は4sにもなります。葉に細か
い切れ込みがあり,千筋京水菜とも云われるように多数の葉が発生し,白と緑のコント
ラストが鮮やかなのが特徴です。特有のピリッとした辛味と香りがあります。伝統的な「
大株仕立て」と,ハウス内での「小株周年栽培」が行われています。
 
 △食べ方と効能
 水菜は冬の京野菜です。茎に艶があり,真っ直ぐ伸びたもの,葉の緑色が濃く,萎れ
ていないものが新鮮です。シャキシャキとした歯切れの良さが特徴です。煮物や漬物,鍋物に
よく用いられます。特に肉の臭みを消す効果がありますので,鴨や牡蛎カキなどと一緒に
鍋にします。また油揚げと煮たものは,京の冬の代表的なおばんざいです。歯触りが残
るように,煮過ぎないこと,味の滲み込みが良いので,薄味に仕上げることが料理のポ
イントです。
 カロチンやビタミンC,カルシウムや鉄を豊富に含みます。
 
◎壬生菜ミブナ
 プロフィール:壬生菜は水菜の一種で寛政年間(188年頃),京都の壬生付近におい
て,葉に切れ込みにない菜が発見され,盛んに栽培され,やがて壬生菜と呼ばれるよう
になりました。性状は水菜に近いが,壬生菜は根はあまり大きくならず,葉柄は葉の基
部においてで区別でき,細長い箆ヘラ状で濃緑色であることが特徴です。ほかには水菜に
ない香りと風味があり,漬物や煮物など,用途が広い。
 品種には,産地における選抜や種苗業者の改良によって,早生・中生・晩生種があり,
よく枝分かれし,葉の幅の狭いものが良いとされます。普通は10月から翌3月頃までに
大株のものを収穫します。有名な京都の「千枚漬け」には,壬生菜の塩漬けを添える習
わしになっています。
 
 △食べ方と効能
 壬生菜は茎がスッと伸び,葉が柔らかなものを選びます。
 ピリッとした辛味があるのが特徴で,浅漬などに適しています。
 また,さっと茹でてお浸しや煮物に利用されます。
 
◎エビイモ 海老芋
 プロフィール:エビイモは,唐イモの最高品を種芋に用い,独特な栽培法によって,
海老状に曲がった形に育て上げられる子イモを云います。安永年間に青蓮院宮が長崎よ
り持ち帰ったイモを,祇園平野屋「いもぼう」の祖先が栽培したところ,大型のイモが
でき,宮がエビイモと名付けたのが起源との説があります。通常の子イモの5〜6倍の
大きさで,一株4〜5個,更に2〜4個の孫イモが付くように栽培します。肥沃で過湿
な土壌において,十分な畝幅と株間を取ります。夏場に4〜5回土寄せをし,株元を暗
くしますと,肥大する性質と土の重さに利用して,イモを太らせ湾曲させて行きます。
更に太らせるために親茎の葉を切って,子イモの葉に光を当てる作業もします。
 
 △食べ方と効能
 エビイモは,粉質で粘り気の強いのが特徴です。
 エビイモと棒鱈ボウダラを煮た,いもぼうは有名な京料理です。お目出たいときに作ら
れて来ました。
 形崩れしにくいので,煮物に向きます。また,揚げ物に利用しても良いでしょう。
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