07b 野菜「根菜類−塊茎根」
◎ジャガイモ ジャガタライモ・五升イモ・二度イモ・甲州イモ・弘法イモとも
和名:馬鈴薯バレイショ ナス科 原産地:南アメリカ
プロフィール:ジャガイモの原産地は南米アンデス山脈,チチカカ湖周辺地域で,5
世紀頃から栽培され始め,先住民の主食とされていたと考えられます。その後コロンブ
スによりヨーロッパへ渡りました。わが国には16世紀にオランダ人によって,ジャカト
ラ(現在のインドネシア)から伝わりました。このためジャカトライモと呼ばれ,それ
を略してジャガイモと呼ばれるようになったとされます。また馬鈴薯と云う名は,馬に
つける鈴に似ていることから付いたとされます。名前には様々な由来があり,別名の多
い原因になっています。
わが国において本格的に栽培されたのは明治以降で,北海道の開拓と共にアメリカか
ら多品種が輸入されてからのことです。現在の主要品種である男爵も,明治40年にアメ
リカから輸入された品種です。主産地は北海道ですが,全国各地において栽培されてい
ます。
ジャガイモは,地下茎の各節から出た匐枝の先端が肥大して塊茎になったものです。
色や大きさ,形は品種により様々です。また株は高さ50cmから1mになり,特有の臭いを
持ちます。葉は柔らかく,6月頃に星型の白色,薄桃色,淡紫色の花を付けます。
主成分は澱粉ですが,ビタミンB1・C,食物繊維なども多く含んでおり,穀物と野菜
の両方の働きを持ちます。栽培も容易で,家庭菜園においても作られるようになりまし
た。
△ジャガイモの主な品種
@メイクイーン:大正5年に輸入されたイギリス原産種,長卵形で黄白色,肉質は緻
密で淡黄白色です。メイクイーンの名は欧州伝統行事の五月祭の女王に由来します。
A男爵ダンシャク:北アメリカ原産で,明治40年に川田男爵がアメリカから持ち込みまし
た。昭和3年から奨励品種となり代表格になりました。球形で黄白色,肉は白で粉
質です。
B紅丸ベニマル:文字どおりイモが丸く赤い品種,澱粉の原料専用として北海道において
作られました。晩生で収量も多い。煮物としての愛好者も多い。
Cキタアカリ:昭和62年に早生食用を目的に男爵とツニカを交雑し作り出された品種
で,まだ普及途上です。偏球形で淡黄白,ビタミンCが多い。
Dトヨシロ:北海19号とエニワの交雑種,加工用に最適で,主としてポテトチップス
の原料にされます。肉色は白く,油加工しても褐色化しません。
Eホッカイコガネ:トヨシロと北海51号の交雑種で,主としてフライドポテトに加工
される品種です。
Fベニアカリ:平成になつてから生まれて新品種で,北海61号とR392-50の交雑種,外
皮が淡赤色,肉部は白色で粉質,コロッケの素材に適しています。
△食べ方と効能
5〜6月に出回る新ジャガと,11〜2月に出回る冬物が美味しい。表皮に艶と張りが
あって薄く,形がふっくらしているものが良品です。皮に皺シワや傷のあるもの,凹凸の
多いものは避けます。ジャガイモは収穫後3カ月位休眠期間があり,その期間は発芽し
ません。発芽しているものは,その期間を経過したもので,養分を取られて美味しくあ
りません。保存は風通しの良い,涼しい処に置いて下さい。
新ジャガは丁寧に洗って皮付きのまま茹でたり,煮っころがしにします。男爵はホクホク
として粉質のイモなので,粉吹き芋やコロッケなどに,メイクイーンは煮崩れしにくい
ので,カレーやシチューなど煮込み料理に向きます。切った後空気に触れると黒ずみま
すので,直ぐに水に晒します。また芽にはソラニンと云う毒素が含まれ,食べると腹痛
や胃腸障害,めまいなどの症状が出ることがあります。芽が出ていましたら,丁寧にえ
ぐり取って下さい。
ビタミンCが多く,「畑のリンゴ」と云われる程です。しかも加熱による損失が少な
く,ホウレンソウは3分茹でると半分に減ってしまいますが,ジャガイモは丸ごと40分
蒸しても4分の3の量のビタミンCが残ります。そのほか,ビタミンB1・B6,カリウム
も多く,カリウムは,体内の塩分(ナトリウム)を排泄させる働きがありますので,高
血圧の人には効果的な野菜と云えます。
◎ショウガ 生姜 はじかみとも
ショウガ科 原産地:熱帯アジア
プロフィール:ショウガは香辛料の一つとして世界中において利用されています。中
国においても『史記』に記載されるなど,古くから用いられて来ました。ショウガは漢
方においては,咳や吐き気を抑える特効薬になっています。わが国においては,3世紀
頃までに中国から渡来したと推定されます。別名「はじかみ」の由来は,平安時代時代
初期の書物『和名抄』からと云われています。
食用とするのは,地下の塊茎部分です。塊茎は淡黄色で,辛味と香りがあります。草
丈は60cmから1m,細長い針状の葉を付けます。
昔からショウガは魔除けになると信じられており,東京や鹿児島の神社においては,
ショウガ市を開くところもあります。また旅に出るときに道中の無事を願ってショウガ
を一切れ口に入れる習慣があったと云います。
ショウガの区分は,大きさによる品種分類と,栽培・利用方法による分け方がありま
す。大きさによるものは,塊茎のサイズにより大ショウガ,中ショウガ,小ショウガに,
栽培方法によるものは,葉ショウガ,筆ショウガ(軟化ショウガ,芽ショウガ),根シ
ョウガに分けられます。
△ショウガの主な品種
@大ショウガ:塊茎の大きい中国種を意味し,主な品種にインド,オタフクがありま
す。辛味が弱く,砂糖漬けにしたお菓子用,漬物用。ほかに中ショウガ(代表品種
三州),小ショウガ(代表品種谷中・金時)など。
A新ショウガ:成熟したショウガは貯蔵性があり年中出回っていますが,秋に収穫し
たばかりの塊茎で,直ぐに出荷する根ショウガのことです。これに対して前年のタ
ネショウガのヒネショウガがあります。何れも呼称で,品種ではありません。
B筆ショウガ(芽ショウガ・軟化ショウガ・矢ショウガとも):太陽光線を遮り,新芽を30cm程に
伸ばして軟化栽培したもので,品種名ではありません。刺身のつまに利用します。
△食べ方と効能
ショウガは年中出回っていますが,7〜11月は新ショウガとして売られ,残りは貯蔵
されて翌年に出荷されます。皮に艶と張りのあるもの,太い筋が盛り上がったものを選
んで下さい。
堅くて辛味が強いヒネショウガは,千切りや擂り卸して,冷や奴や刺身の薬味,炒め
物や煮物の香り付けにします。新ショウガや谷中ショウガは,柔らかくて辛味も少ない
ので,酢漬けにします。布巾で擦って薄皮を除き,根の部分だけを熱湯に30秒程浸けて
塩をまぶし,そのまま冷まします。合わせ酢をパットに入れて寝かせて漬けます。立て
て漬けますと,茎部分がクニャッと弱くなります。
ビタミンやミネラル類は少なく,栄養テク特徴はありません。特有の辛味は,ジンゲ
ロンとショウガオールによるもので,品種によって含有量は大きく異なります。また香
りはシネオール,ジンギベレン,ジンギロールなどによります。強い殺菌作用があり,
寿司にショウガで作ったガリを添えるのは,理に適った組合せです。喉の痛みには,塩
水にショウガ汁を加えてうがいをすると良いと云われています。また漢方においては,
ショウガを乾燥させたものを煎じて,整腸,吐き気止めに利用されます。
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