07a 野菜「根菜類−塊茎根」
◎サトイモ 里芋 クロイモとも
サトイモ科 原産地:マレー半島
プロフィール:サトイモと云う名は,山野において採れるイモを山芋(自然薯ジネンジョ
とも)と云うのに対して,人里にできることから付けられたと云われています。
原産地の中においても生長の早い種が,中国を経てわが国へ渡来したと云われます。
渡来時期は米よりも古く,サトイモは稲作以前のわが国の主食であったと推定されてい
ます。中国には紀元前の書物『史記』に記録があります。わが国においても江戸時代に
サツマイモが登場するまでは,イモの主役として栽培されていました。各地にサトイモ
をお正月に食べる習慣があるのは,わが国における主要産物として生活に入り込んでい
た名残りである,とも云われています。
サトイモは他のイモと同様,地下において肥大した塊茎を食用としますが,ズイキと
呼ばれる葉柄を食用とする品種もあります。地下の茎は殆ど伸びずに肥大し,楕円形か
ら卵形の塊茎になります。株の中心に大きな親芋を作り,その親芋から子芋や孫芋が出
来ます。長い葉柄は直生し,その高さは1m以上にもなります。緑系のものと赤紫系のも
のがあります。また葉も長さ50cm,幅30cmと大きく,卵円形若しくは楯型です。葉の表
面は水をはじき,以前は子供が傘代わりにして遊んでいたこともありました。
ズイキは,えぐ味のない品種の葉柄の皮を剥いて乾燥させ,保存食としたものです。
これらはイモガラ,干しズイキ,割り菜などとも呼ばれます。
△サトイモの主な品種
@石川イシカワ早生:主として関西地方において生産される品種で,球形の小型の子芋を
多数付けます。柔らかく粘りがあり良質で,ハウス栽培もされます。
A土垂ドダレ:サトイモの代表的品種で,関東地方において主に生産されます。少し長
めの子芋を多く付け,石川早生と同様粘りがあり柔軟,収量も多い。
Bセレベス(大吉とも):親芋子芋の両方を食用とする親子兼用品種で,インドネシ
アのセレベス島から導入されました。イモ全体に赤味があるのが特徴です。
C唐芋トウノイモ:親子兼用品種,親芋は楕円形で太く,子芋は長く曲がっています。ズイ
キとしても利用できます。エビイモはこれを特殊栽培(土寄せ)したもので,京都
の特産(京野菜の項参照)です。
D八ツ頭ヤツガシラ:親子兼用種,親芋と子芋は分裂せず,数個のイモが結合した形状で
す。味が良く,高級品とされます。
Eタケノコイモ(京イモとも):親芋用品種の代表格,イモの半分以上が地上に出て
おり,筍に似ていることからこの名で呼ばれます。主産地は九州です。
Fハスイモ(白芋とも):葉柄を食用とするサトイモ,親芋子芋共に小さく堅いため
食用にはなりません。葉柄と葉は緑白色で表面に薄く白い粉があり,白芋とも呼ば
れます。
G田イモ(ミズイモ・タンムーとも):湿地や水田において栽培されるサトイモ,主産地は沖
縄で,多くは祝料理に用いられます。
H芽芋:親子兼用種の唐芋の若い芽を軟白栽培したものを芽芋と呼びますが,これは
品種ではありません。唐芋自体は余り市場に出回らず,現在は芽芋だけが出回りま
す。柔らかくて美味しい。
Iズイキ:サトイモ類の葉柄の呼称で,品種ではありません。乾燥させて干したズイ
キはイモガラとも云い,貯蔵性に優れています。ハスイモや赤茎種エビイモ,赤芽
が代表種です。
Jイモガラ:干しズイキの乾燥品を云います。
△食べ方と効能
サトイモの旬は秋から冬にかけてです。泥付きで適度に湿り気のあるもの,濃い茶色
で傷のないものが良品です。細長いものより丸いものを選んで下さい。瘤コブや割れ目の
あるもの,赤い斑点の出ているものは避けます。緑色をしたものは,えぐ味が強い。洗
いイモは傷みが早いので,直ぐに使いきって下さい。泥付きのものは,泥付きのまま冷
暗所で保存,また土穴に埋めますと可成り日持ちします。
特有のぬめりがあり,これが煮ているときの吹き零コボれの原因になります。ぬめりを
付けたまま料理をしますと,味が滲み込みにくく,口当たりも悪くなりますので,ぬめ
りを取り除く必要があります。皮を剥いたら直ぐに水に晒し,全部剥き終わったら水を
捨て,塩をたっぷり振って擦り合わせるようにしてぬめりを除き,そのまま熱湯に入れ
て茹でます。3〜4分茹でて湯を零コボし,出汁と調味料を加えて本煮に入ります。また
素手で皮を剥くと痒くなることがありますが,これは手に酢か塩を付けて扱いますと,
防ぐことができます。
煮物のほか,茹でて和え物や田楽に,また揚げてから醤油煮にしても美味しい。ジャ
ガイモに代えてコロッケにしても良い。
主成分は澱粉,ぬめりはガラクタンと云う炭水化物と蛋白質が結合したものです。蛋
白質やビタミンB群も豊富,カリウムはイモ類の中で最も多い。また繊維も十分で,便
通を良くする働きがあります。
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