05e 野菜「果菜類−未熟果・熟果・豆類」
 
◎トマト 小金瓜,蓄茄
 ナス科 原産地:中南米
 プロフィール:「トマトは野菜か果物か」とよく議論されますが,分類上においては
ナス科の一年生果菜です。ナスやピーマン,ジャガイモなどと遠い親戚に当たります。
フランスにおいては「愛のリンゴ」,イタリアとドイツにおいては「天国のリンゴ」と
呼ばれており,わが国においても最も愛されている野菜の一つです。原産地などにおい
ては,太陽の光が燦々と降り注ぐ赤道直下の乾燥した高冷地帯において栽培され,有史
以前から食用にされていました。
 ヨーロッパには16世紀に導入されましたが,当初は観賞用とされていたようです。食
用として盛んに栽培されるのは18世紀になってからです。わが国における一番古い文献
は,1544年に貝原益軒著『大和本草』の中において「唐ガキ」として紹介されています。
矢張り17世紀頃に導入されたときは観賞用とされていたようです。食用として本格的に
利用され始めたのは明治時代以降です。昭和初期にアメリカから甘味に富んだ桃色系が
導入されてから,日本独特の品種が普及しました。
 トマトの赤い秘密はリコピンと云う色素にあり,昼夜の温度差の大きい程赤色の鮮や
かさが増します。かつては夏が旬でしたが,露地栽培に加えて,ガラスやビニールなど
の温室・ハウス栽培により,現在においては年中出回るようになりました。冬と春は熊
本,愛知などの温暖地,初夏には千葉,茨城,栃木,真夏は福島や長野からの出荷が増
えます。
 
 △トマトの主な品種
 @完熟型桃太郎:完熟トマトの代名詞です。株の上で熟し,収穫してからも果肉が締
  まって変質が遅い。甘味が強く酸味も適度にあることから人気品種になっています。
 Aファースト:完熟型トマトの普及する前の,冬〜春季向けの代表品種です。先が尖
  っているのが特徴で,ハウス栽培が主体です。果肉が多くて甘く,良食味として根
  強い人気があります。
 B黄寿:珍しい黄色の大玉完熟トマト,果重は270gの大玉で果肉部が多い。酸味が少
  なくて甘く,独特の風味があります。
 Cサンマルツァーノ種:ピューレ,ジュース,ケチャップや水煮缶詰などの加工用に
  用いられ,果肉の堅い品種です。支柱のない畑において完熟後に一つずつ摘み取り
  ます。
 Dシュガートマト:シュガートマトは品種ではなく,水を殆ど与えない方法によって
  栽培したものの呼称で,小果・低収量です。果物並に糖度が高く,甘いことからフ
  ルーツトマトとか,パーフェクトトマトとも呼ばれます。
 Eミニトマト(プチトマト,チェリートマト)赤色丸形:サンチェリー,ミニキャロルなどの品種
  があり,実付きが良く,甘くて美味しい。家庭菜園でも手軽に作れます。ミニトマ
  トの主流です。
 Fミニトマト(プチトマト,チェリートマト):このほかのミニトマトでは,橙色丸形のオレンジ
  キャロル,黄色丸形のイエローキャロル,赤色楕円形のもの,黄色楕円形のものな
  どがあります。
 
 △食べ方と効能
 ファーストはハウスなどにおいて栽培し,日持ちの良い寒い時期に株でじっくり熟し
たものが収穫出来るので,酸味が少なく甘味も強い。夏のファーストは甘味も酸味も薄
い。露地ものは初夏から秋口まで出回ります。赤色の濃いもの程熟しています。皮に艶
があり,丸くて形のよいもの,赤色の均一なものが良質です。蔕ヘタはピンとしていて,萎
れていないものが新鮮です。凹凸があったり角張った形のものは,中が空洞になつてい
ます。潰れやすいので取扱いに気を付けて下さい。ラップに包んで冷蔵保管しますが,
あまり低温にし過ぎますと味が落ちます。青いものは,室温で赤く熟させます。
 生のままサラダにするほか,バターソテーや煮込み,パスタのソースに,中華料理で
は炒め物に用いられます。熟し過ぎましたら熱湯に浸けて皮を剥き,冷凍して置きます
と缶詰代わりに利用できます。
 トマトの色素のリコピンはビタミンA効力は少量ですが,ビタミンCやカロチンは多
く含まれています。その他脂肪の消化を助けるビタミンB6,ルチン,鉄なども含まれ,
特にルチンは,ビタミンCと一緒に働き,血圧を下げる働きがあります。
 
◎トンブリ 箒草の実
 アカザ科 原産地:アジアから南ヨーロッパ
 プロフィール:トンブリは,見た目やプチプチとした歯触りから「畑のカズノコ」「ジ
ャパニーズキャビア」などと呼ばれているトンブリは,箒草の果実を加工したもので,
秋田の特産品です。ホウキグサはわが国においても歴史は古く,1000年以上前から栽培
されています。
 トンブリの市販品は水煮されており,さっと熱湯をかけて,水を切って用います。以
前は地方色豊かな食品で消費地域も限られていましたが,現在は中央にも出荷され,需
要が増えつつあります。旬は秋から冬です。
 
 △食べ方と効能
 トンブリは8〜9月に,細枝にびっしりと緑色の小粒の実が付きます。
 プリプリとした歯応えを楽しむ食品で,山芋を摺り卸したトロロと混ぜて合わせたり,
納豆と和えるなど,粘り気のあるものと相性が良い。また酢醤油や辛子醤油を掛けて,
あっさり戴くのも美味しい。キャビアを模してクラッカーや薄切りのトーストに載せて
カナッペにもなります。
 
◎ヒシ トウビシ・オニビシとも
 ヒシ科 原産地:ヨーロッパ,アジア,アフリカ
 プロフィール:ヒシの名の由来は,果実が押し潰されたように「拉ぐヒシグ」と云うの
で付けられたとする説と,水面に浮かぶ葉の部分が「菱形」であるところから付けられ
たとする説があります。ヒシは北海道〜九州,朝鮮半島,中国など北半球の熱帯・温帯
地方に幅広く分布する水生植物で,水深2m以内の湖沼に群生します。
 わが国にはヒシ,オニビシ,ヒメビシが生育し,食用として販売されるのはヒシのみ
です。成熟した果実は,食塩を加えて茹でますと栗に似た風味があります。婦人病など
にも効能があります。イタリアのある地方においては,リゾットに入れる主材料の一つ
にもなっています。
 
 △食べ方と効能
 ヒシの実は堅い皮に包まれているので,茹でるか蒸すかして皮を剥きます。そのまま
でも食べられます。料理方法は,ご飯と合わせてヒシ飯にしたり,茶碗蒸しにしても良
い。また干して粉に挽いて食べることもあります。
 糖質の中でも澱粉質が多い。
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