05a 野菜「果菜類−未熟果・熟果・豆類」
 
◎キュウリ 胡瓜・黄瓜
 ウリ科 原産地:インド,ヒマヤラ山麓
 プロフィール:キュウリは,古い文献には「下品の瓜」とか「いなかに多く作る物な
り」などと書かれ,また胡瓜の切り口が徳川家の葵の紋に似ていることから,武士等は
畏れ多いとして食べなかったとも云われています。
 紀元前1000年頃西アジアにおいて栽培され,そこからヨーロッパ・中国北部・中国南
部へと広がりました。世界に400以上の品種があると云われていますが,わが国において
作られるものは殆どが細長い白疣イボ系です。
 ところで10年前までのキュウリの表面には白い粉が吹いていましたが,現在ではあま
り見かけません。この白い粉はブルームと呼ばれ,果面を保護する蝋物質で,かつてブ
ルームが付いたキュウリは新鮮であると評価されていましたが,一方ブルームがないと
果皮に光沢があること,白い粉が農薬と勘違いされたこと,などのため現在はブルーム
のないキュウリ(ブルームレス)が市場を独占しています。切り口が新しく,全体に張りがあ
り,触ると疣イボが痛い位のものが新鮮で,多少曲がっていても味と栄養は変わりませ
ん。
 品種の特性としては,疣イボ(=刺トゲ)の色から黒疣系と白疣系に分けられます。春
キュウリとして華南系黒疣種と春型雑種,夏キュウリとして華北系白疣種と夏型雑種が
ありますが,現在においては白疣種が生食用として見栄えが良く,皮が薄くて歯切れが
良いので主流です。主な産地は群馬,埼玉,福島,宮崎,千葉,高知などです。
 モロキュウリや飾り用の花丸キュウリは,普通のキュウリを若採りしたものです。
 
 △キュウリの主な品種
 @黒疣系:現在は九州,四国などで少量栽培され,皮が堅く,果肉は粘質,低温伸長
  性が高い。
 A白疣系:現在の主流(90%以上)で,多数の品種が育成されています。表面に付く
  疣が白いのが特徴で,果皮が薄くて歯切れが良く,品質も優れています。
 B四葉スーヨー:僅かに静岡において作られている白疣系品種,縮緬チリメンのように表面に
  皺シワが寄っています。歯切れの最も良い品種ですが,日持ちが劣ります。
 C加賀太:石川県特産の黒疣系品種,果肉が厚く肉質が締まってており,漬物や煮込
  み料理に向いています。
 Dピックル型:ピクルス漬けに適した品種で,わが国においては少ない。短い楕円形
  で,先半分は白色に近く,疣は低い。酒田や最上などの品種があります。
 Eモロキュウリ:普通のキュウリを若採りしたもので,もろみを付けて戴きます。生
  のままが一番ですが,即席漬けします。
 F花丸キュウリ:花の付いた3p程のキュウリの呼称で,つまやあしらいなどの飾り,
  また箸置きにしますと食卓が華やぎます。
 G葉付きキュウリ:葉の付いたままの幼果のことで,料理の飾りに用います。
 
 △食べ方と効能
 白疣キュウリは「夏キュウリ」とも云い,旬は夏から秋です。太さが均一で緑色が濃
く,張りがあって疣が痛い位に尖っているものが新鮮です。萎びて皮に皺のあるものは,
水分が蒸発しているためで,収穫から時間が経っている証拠です。ときどき,頭部が苦
いものがありますが,これはククルビタミンCと云う苦味物質が含まれているためで,
茹でたり焼いたりしても苦味は消えませんので,その部分は切り捨てて下さい。ラップ
に包んで冷蔵保管しますと4〜5日は保ちますが,0〜5℃の状態にしますと白い濁り
汁が出て腐り始めますので,冷やし過ぎないよう注意して下さい。
 キュウリは主として,生のまま酢の物や和え物,漬物,サラダにします。板擦りと云
って,まな板の上に載せて塩を振り,上から少し押すようにして転がしますと,色が鮮
やかになり,青臭さも疣も取れます。4〜5pに切ったものを縦二つに割り種子を抜い
てカニやトマトの微塵切り,イクラなどを載せますと,夏らしいオードブルになります。
中華風に炒め物にしたり,韓国風にキムチにしても美味しい。
 成分は水分が主体で,栄養的には殆ど期待出来ません。
 
◎ナス 茄子・茄
 ウリ科 原産地:インド東部地方
 プロフィール:ナスには,「一富士二鷹三ナスビ」「秋ナスは嫁に食わすな」「ウリ
蔓にナスビは成らぬ」などの諺コトワザも多く,古くから日本人が親しんで来たことが窺え
ます。ナスは中国を経てわが国に渡来し,奈良時代の『正倉院方書』にはナスを献上し
たと云う記録があり,その頃既に栽培されていたものと考えられます。このように1200
年の歴史を持つナスですので,変化に富んだ品種が生まれています。
 ナスの形に対する好みは地方によって異なり,関東地方においてはやや小型の卵形,
関西地方においては長卵形〜中長が多く,西日本において多いのは長ナス,九州におい
ては大長です。そのほか北陸・京都の丸ナス,山形の小丸なども有名です。現在の全国
的な主流は,長卵から中長の品種です。
 ナスの野菜としての特徴は,その光沢にあります。また独特の紫色から「茄子紺」と
云う言葉があり,この紫色はアントシアニンの一種のナスニンと云う色素によるもので
す。鉄やアルミニウムなどの金属と反応しますと,鮮やかな黒紫色になります。そのた
め漬物にするとき,古釘や明礬ミョウバンを入れて,色を一層鮮やかにさせます。
 
 △ナスの主な品種
 @中長ナス:果実は長卵形で,わが国の現在の品種はこのタイプが主流です。代表的
  な品種に橘田や大阪中長などがありましたが,昨今はF1が主体です。関東地方にお
  いてはやや短めのものを,関西地方においてはやや長めのものを収穫します。
 A小丸ナス:皮が柔らかく,種子が少ない。山形の民田,出羽小ナスなどは在来品種
  で,辛子漬けなどで有名です。
 B卵形ナス:石川のヘタムラサキや濃紫色の真黒などが代表品種ですが,長卵形種に
  押されて,生産量は激減しました。
 C水ナス:中長ナスの一種で,果実は長卵形です。絞ると水が滴る程水分が多く,浅
  漬け用のナスとしては品質は最高,皮も実も柔らかく,甘味が多い。水ナスは泉州
  岸和田の特産で高値です。
 D丸ナス:新潟のキンチャクナス(八石ナスとも),京都の加茂ナス(京野菜の項参照
  )などが有名です。
 E長ナス:果実の長さは20〜25p,関西地方以西と東北地方において多く作られてい
  ます。皮は比較的堅いが,身は柔らかく,焼きナスにしますと美味しい。
 F大長ナス:長さ40〜45pにも達する九州特産の品種,耐暑性,対乾燥性は最も強い。
  柔らかく,ふっくらして焼きナスや煮物に適しています。
 G米ナス:アメリカ種を改良したもので,蔕ヘタの色の緑色が特徴です。肉質が締まり
  煮崩れしにくく,煮物,焼き物,炒め物として使われています。
 H白ナス:アントシアニンが形成されず,葉緑素のないものです。最近は生食に適し
  たものが開発されましたが,観賞用として鉢植えにされることが多い。
 I青ナス:アントシアニンが形成されず,葉緑素があるものです。果皮は淡緑色でや
  や堅く,果肉が締まっており,煮物に向いています。丸形,中長形など様々な形が
  あります。
 
 △食べ方と効能
 ナスの旬は初夏から秋です。「茄子紺」と云われる位色の鮮やかさが,鮮度を見分け
る大切な要素です。黒紫色が美しく,張りと艶のあるものが良質です。傷や皺シワがあっ
たり,茶色に変色しているもの,褪色タイショクしているものは避けて下さい。もう一つ大切
にチェックポイントは蔕ヘタで,蔕の大きさに比べて実の小さいようなら未熟な証拠です。
蔕が黒く,切り口が瑞々しく,刺トゲがあって,しかも堅くて痛いようでしたら新鮮で
す。乾燥しやすいので,ラップに包んで冷蔵保管しますと,一週間程は保ちます。
 煮る,焼く,炒める,和えるなど,どんな料理にも向きます。アクが強く切り口が変
色しやすいので,切ったら直ぐに水に晒して下さい。ナスは油と相性が良いので,揚げ
物や炒め物にしますと美味しい。一般的には味噌炒めや,揚げたナスに味噌を付けて焼
く田楽,焼きナスなどですが,グラタンやチーズ焼き,カレー炒め,トマト煮込みなど
洋風の料理にも良く合います。
 糖質が多く,ビタミンやミネラルは少ない。
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