04 野菜「葉菜類−花・蕾」
野菜「葉菜類−花・蕾」
参考:草土出版発行「花図鑑[野菜]」
〈葉菜類−花・蕾〉
◎食用菊
和名:料理菊・甘菊アマギク キク科 原産地:中国
プロフィール:数多くあるキクの品種の中でも,食用を目的としたものを食用菊と云
います。キクは紀元前から不老長寿を願う花として親しまれ,菊酒にしたり,お茶に添
えたりして味わう伝統がありました。わが国へは8世紀後半天平時代に,唐の使者によ
って伝えられたと云われます。最初は主に薬草として用いられ,貴族社会を中心に重陽
の節句(旧暦九月九日)の菊酒や,真綿に花の香りを移す「被綿キセワタ」などに用いられ
ていました。その後観賞用としての栽培が始まり,一般の人々の食用として普及するの
は,江戸時代前期以降になってからです。
現在食用に用いられるのは,黄色や紅紫色,白色の八重咲き種が多いが,食用菊はあ
まり改良されていないため,総品種数は多くありません。大輪種には阿房宮,名取川,
秋田白菊など,中輪種には延命楽,高砂(白菊),月山など,小輪種には料理のツマと
して使う「つま菊」などの品種があります。何れも花弁が大きく厚くて香りが高く,苦
味も少なく,加熱しても色が変わらないのが特徴です。
涼しい気候を好む品種が多いので,東北地方や新潟などが主産地となっています。
△食用菊の主な品種
@阿房宮アボウキュウ(阿房ギクとも):青森県八戸・三戸において作られる黄花八重大輪
種で,香気と甘味が強く,苦味がない。阿房宮とは,中国の秦の始皇帝が建てた宮
殿の名です。
A延命楽エンメイラク:紅紫色の八重咲き中輪種で,山形や新潟において栽培されます。新
潟においてはオモイノホカとか,カキノモト,山形においてはモツテノホカなどと呼びます。
B菊海苔キクノリ(干し菊・蒸し菊とも):品種名ではありませんが,八重の花弁を蒸し
て,板状に乾燥させた加工品のことです。青森県八戸市の特産品です。
△食べ方と効能
食用菊は年中出回っていますが,旬は矢張り秋で,この時期の食用菊は,栽培もので
も香りの良さが違います。枯れたり,萎れたりしていないもの,色が鮮やかで形が美し
いものを選んで下さい。保存は,乾燥しないように湿らせたキッチンペーパーに包んで
冷蔵保管して下さい。ただし時間の経過と共に香りや色が褪せて来ますので,出来るだ
け早く食べて下さい。
食用菊は美しい色と香り,シャキシャキとした葉触りを楽しむものです。単品では主菜にな
りにくいが,失われつつある季節感や潤いを与えてくれる,わが国の食卓の大切な脇役
です。
花をそのまま焼き魚や刺身のあしらいに用い,花弁だけを摘み取って酢湯でさっと茹
でて,水に晒したものを,酢漬けやお浸しにします。酢漬けは,炊きたてご飯と合わせ
て菊飯キクメシにしたり,茸や春菊のお浸しに合わせますと彩りも良く,香りも一層増しま
す。余ったときは,茹でたものを薄く板状にして冷凍して置き,使うときは室温で戻す
か,熱湯を掛けて戻し,さっと茹でてから使います。乾燥品の菊海苔は水に漬けて戻し,
熱湯を掛けてから用いて下さい。
生の菊の花はビタミンB1・B2が多く,乾燥品にはビタミン類のほか,蛋白質,カルシ
ウム,リン,鉄なども多く,特にビタミンは生の7〜15倍の量が含まれています。
◎カリフラワー
和名:花野菜,花キャベツ アブラナ科 原産地:地中海沿岸
プロフィール:カリフラワーはキャベツの仲間で,食用にするのは花のように見える
花蕾カライ部分です。これは蕾ツボミが発育せずに肥大して花球となったもので,主として乳
白色ですが,紫色やオレンジ色の品種もあります。
元々はブロッコリーが突然変異によって白化したもので,祖先は,地中海東部のシリ
ア方面に野生していたクレティカ種とされます。クレティカ種は現在見られるような形
のものではなく,柔らかな花茎に小さな花蕾が付いたものであったと考えられています。
わが国においてはブロッコリーよりも早く普及しましたが,ヨーロッパにおける普及
はブロッコリーより遅い。イタリアやフランスなどの南ヨーロッパの重要野菜となるの
は15〜16世紀で,北部ヨーロッパにまで広まったのは18世紀です。わが国へ渡来したの
は明治初年で,温暖な土地を好むことから太平洋沿岸地域において,秋から春先にかけ
て収穫される品種が栽培されました。1960年代に入って消費が急速に伸び始めますと,
早生や晩生など多くの品種が作られるようになり,周年市場に出回るようになりました。
ただし最近はブロッコリーに押され気味で,栽培量はやや減りつつあります。
△カリフラワーの主な品種
@ホワイト:白い花蕾カライを持つ種で,早生種のスノークラウン,野崎早生,スノーキ
ング,富士,明月,抱月などの品種があります。
Aオレンジ:花蕾がオレンジ色をしたもので,オレンジブーケなどの品種があります。
Bムラサキ:花蕾が紫色で,バイオレットクイーンなどの品種があり,花蕾は茹でる
と鮮やかな緑色に変化します。
Cサンゴショウ:花蕾が黄緑色で,一つ一つの塊が尖っているのが特徴です。
△食べ方と効能
カリフラワーの旬は秋から翌年の春先までで,秋から冬まで特に美味しくなります。
冷涼な気候を好む野菜ですので,夏場は傷みやすく,変色が目立ちます。隙間なく蜜に
小花が付いていて,全体的に丸く,色はあくまでも白いものが良質です。小花の茎が部
分的に伸びていたり,黄色や薄茶色に変色しているものは熟れ過ぎたものや古いもので
す。小さくてもずっしりと重いものが,水分が多くて美味しい。高温には弱いので,ラ
ップに包んで冷蔵保管して下さい。また上に重いものを載せますと,小花が傷付いたり,
崩れたりしますので注意して下さい。小房に分けてから茹でて,冷蔵保管しても良いで
しょう。
アクが強いので,茹でてから料理します。茹で湯はたっぷり用意します。白く茹で上
げるための酢,早く茹で上げるために小麦粉をそれぞれ少量加えます。茹で上がりまし
たら水に晒さないで,笊ザルに広げて冷やしますと,水っぽくならず,特有の風味と歯触
りが残ります。そのままマヨネーズを付けて食べても十分に美味しいですが,グラタン
やシチュー,カレーに加えたり,フライやピクルスにしても良いでしょう。またミキサ
ーに掛けてスープに仕上げても良い。
ビタミン類が豊富で,特にビタミンCはカリフラワー100gを食べますと,一日に必要
な量を摂ることができます。そのほかビタミンB1・B2も多く,食物繊維の含有量はキャ
ベツやハクサイよりも多い。
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