03a 野菜「葉菜類−茎・葉柄」
 
◎ウド 独活
 和名:土当帰ツチダラ ウコギ科 原産地:日本
 プロフィール:ウドは各地に自生する多年草で,芽だけでなく,若葉や蕾,若実も食
用にされます。室町時代は専ら薬用とされたようですが,江戸時代には贅沢品として幕
府が販売を制限することもあったと云います。
 古くは自生するものを採って食べましたが,17世紀頃から幼茎に土を被せて長く育て
るようになり,その後根株を軟化床に伏せてから柔らかくする根採栽培法に発展しまし
た。現在においても通常,畑において着生した苗を地下室などに移植し,光を当てずに
育てる軟白栽培によって出荷されます。東京における生産が多く,特産品です。
 緑化ウドは根株に盛り土をし,下部がやや軟白化したところを収穫するもので,市場
においてはこれを山ウドと呼んでいますが,野生種のものとは別です。
 栽培品種は寒ウドと春ウドに大別されますが,品質が良く一般の市場に多く出回るの
は春ウドです。春ウドは休眠期が長く,低温に当たった後に発芽します。
 紫芽ムラサキメ・坊主ボウズ・伊勢白イセシロ・峠白トウゲシロなどの品種があり,現在最も多く栽培さ
れているのは芽が紫色をした紫芽で,最盛期は3〜4月頃です。低温でも発芽する寒ウ
ドには,白芽・赤芽などの品種があります。
 食用には若い茎を採取しますが,生長しますと2m以上になり,羽状葉を付けて夏に淡
緑色の花を咲かせます。茎が細長く,無風でも揺らぐことから,「独活」と云う和名が
付きました。
 
 △食べ方と効能
 ウドの旬は冬から春です。軟白ウドは白くて真っ直ぐなもの,山ウドは葉が萎れてお
らず,太さが均一で赤い線がはっきりしているものが良質です。両種共,柔らかな産毛
が密に付いているものが新鮮です。
 独特の香りとシャリシャリとした歯触りを楽しむ野菜で,どちらかと云えば山ウドの方が香
りが強く,歯触りもしっかりしています。アクが強いので,切った端から変色して行き
ます。これは,タンニンなどの含有成分が,空気に晒すことで酸化されて起こるのです。
これらのアクの原因となる成分は,皮の下,茎の外側に多いので,白く綺麗に仕上げた
いときは,皮を厚めに剥くのがポイントです。そして切ったら直ぐに酢水に放します。
酢には,酸化酵素の作用を抑える働きがあります。明礬ミョウバンの水溶液にも同様の効果
があります。
 厚めに剥いた皮は捨ててしまわずに,千切りにして水に晒し,さっと茹でてからキン
ピラにしますと無駄なく食べられます。普通は汁物の具や酢の物,煮物などにしますが,
生のままサラダにしても美味しい,乱切りにしたウドをパプリカや豆板醤などで少し辛
めに味付けしたドレッシングで和えます。何れの場合も特有の歯触りを残すために,茹
で過ぎないこと,繊維を残すように切ることが大切です。
 水分が多く糖質主体の野菜ですので,ビタミンやミネラルの供給源にはなりません。
 
◎セロリ セルリーとも
 和名:オランダ三つ葉 セリ科 原産地:ヨーロッパ,西南アジア,インド
 プロフィール:セロリは古代エジプトにおいては葬礼に用いられ,ギリシャやローマ
においては薬や香料として使われたと云います。16世紀頃からイタリアなどにおいて薬
用植物としての栽培が始まり,17世紀にはフランスにおいて食用とされるようになりま
した。淡色野菜としては意外な程多くのカロチンを含んでいます。食物繊維も豊富です。
 わが国には16世紀末,朝鮮出兵の際に加藤清正が中国種のものを持ち帰ったとされ,
清正人参と云う名で呼ばれました。西洋種は江戸時代,長崎へオランダ船によって入り,
当時はオランダ三つ葉と呼ばれました。その後明治時代初期,開拓使によってヨーロッ
パの改良種が導入され,明治中頃に,外国船向けとしての栽培が始まりました。広く普
及したのは第二次世界大戦後で,初期のものは主に黄色種でした。
 涼しい気候を好み,夏から秋は長野などの高冷地,冬から春は静岡などにおいてハウ
ス栽培されます。
 現在は葉が淡緑色で葉柄に厚みのある中間種コーネルセロリが一般的ですが,最近は
アメリカの主流である全体が緑色をしたユタ,ソートレークなどの緑色種も出回るよう
になりました。緑色種には,わが国において改良されたミニセロリなどの品種もありま
す。肥大した根を食べるセロリアック(根菜類参照)もセロリの仲間です。
 
 △食べ方と効能
 セロリは初夏から秋までが美味しい。葉に艶があって,萎れや黄ばみがないこと,茎
は厚くて筋がくっきりと入っていること,凹凸がはっきりしていること,丸味があるこ
とが選ぶときのポイントです。株のままのものと,一枚ずつ剥がしてビニール袋に入れ
て売られているものがありますが,株の方が日持ちします。一枚ずつ剥がしてあるもの
は,切り口を良く見て下さい。褐変しているものは鮮度が悪く,スが入っているものは
堅くて筋ばっています。
 特有の香りと葉触りを活かしたい野菜です。筋の堅い部分は必ず取り除いてから料理
して下さい。生のままサラダにするのが一般的ですが,炒め物や煮物にしても美味しい。
セロリの個性的な風味は,酷コクのある素材と合いますので,肉や魚,ベーコンと合わせ
て中華風に炒めたり,ホワイトソースやエバミルクと合わせてクリーム煮などにします。
またさっと茹でて和え物やピクルスにしても良いでしょう。洋風の煮込み料理を作ると
きには,セロリの葉をパセリやローリエなどと束ね(ブーケガルニ),香り付けと臭い消し
に用います。葉は茎よりも栄養価が高いので捨てないで,炒め物や,炒めてからスープ
で煮るなど,また油と合わせますと美味しくなります。
 茎の部分にはビタミンA,カルシウムのほか,鉄,カロチン,ビタミンCも含まれて
いますが,葉の方が多く含まれています。整腸作用,利尿作用,強壮作用があると云わ
れています。
 
◎フキ 蕗
 キク科 原産地:日本
 プロフィール:フキは冬に黄色い花を咲かせるため,冬黄(ふゆき)が詰まってフキ
と云う名が付いたと云われます。
 野生のフキは北海道から琉球諸島までと,朝鮮半島や中国にも分布していますが,野
菜として栽培を始めたのはわが国です。咳止めや利尿,痰切りの効果があるとして古く
から薬用にも用いられて来ました。
 関西地方における消費が多く,全国生産量の2/3は愛知県が占めています。露地物
の旬は4〜5月,最近はハウス栽培も多く,真夏を除いたほぼ一年中出回るようになり
ました。
 現在栽培されている主な品種は尾張ブキとも呼ばれる,根元が赤紫色をした愛知早生
種で,芽立ちが早い。
 水フキは葉柄が鮮やかな淡緑色,根元は赤色で,柔らかく香りも強いが収量は少なく,
青フキ,河内フキ,京ブキなどの別名もあります。山野に自生しているものは山ブキと
呼ばれ,佃煮のきゃらぶきの原料となります。
 秋田フキは北海道から東北地方にかけて自生するもので,葉の直径が1m,高さ2mに
も達する大型種です。肉質が堅いために野菜として出回ることはあまりなく,佃煮や砂
糖漬けに利用されます。
 葉が開く前に根茎から生えてくる蕾が,春の山菜として食用にされるフキノトウ(山
菜の項参照),南九州などにおいて食用とされるツワブキなどもあります。
 
 △食べ方と効能
 フキの旬は春の終わりから夏にかけてです。新葉が伸びきっているものが良く,あま
り太いものは筋が堅くて風味に欠けます。直径1.5〜2p位の太さで,茎の中に空洞のな
いもの,茎に艶と張りのあるものを選んで下さい。
 特有の風味と歯応え,鮮やかな緑を楽しみたい野菜です。アクが強いので下茹でをし
ますが,茹で過ぎないよう注意して下さい。茹で方は,まずまな板上に並べて塩を振り,
両手で少し押しながら転がします(板擦りイタズリと云う)と,色鮮やかに茹で上がりま
す。茹で湯はたっぷり用意し,沸騰してからフキを入れます。フキが折れたり,曲がっ
たりしないように,鍋は大きなものを使って下さい。2〜3分茹でて水に晒し,アクを
抜きます。水の中において根元の方から皮を剥き,その後更に15〜30分流水に晒してア
クを完全に抜いて下さい。
 こうしたものを煮物や炊き合わせにします。既に火が通っていますので,煮過ぎない
よう注意して下さい。また醤油は薄口を用いるなど,緑色を残すような心配りをして下
さい。和え物やサラダにするときは,茹でたものをそのまま冷蔵し,食べる直前に和え
たり,ドレッシングを掛けますと,歯触りが一段と良くなります。
 ビタミンCやカルシウムが含まれていますが,その他の栄養素はあまり期待出来ませ
ん。
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